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諍い 一
しおりを挟む「ねえ、コンスタンス、パーティーには、何を着ていくの?」
廊下を歩きながらアガットが話しかけてきた。薄暗い廊下は中世の修道院を思わせるが、中庭からさしこむ光が雰囲気を陰気ではなく、荘厳なものに変えてくれる。
「……まだ、考えていないけれど」
コンスタンスはうんざりした気分で答えた。
今朝もエマと喧嘩をしたのだ。おかげで気分は最低だ。
「……最近なんだか元気ないわね? コンスタンス、なにか悩みごとでもあるの?」
アガットが優しい勿忘草色の瞳を心配そうにくもらせる。コンスタンスは溜息を吐いて、彼女を中庭へみちびいた。
「わたし……働かないといけなくなるかも」
気のいい友人に、コンスタスンは目下の悩みごとを説明した。父の仕事があまりうまくいってないこと、この先自分が仕事をしなければならなくなるかもしれないということ、継母のエマと諍いが絶えないこと。アガット相手ならすべてを打ち明けられる。
桐の木の下のベンチに腰掛けてならんだ二人の全身に、木漏れ日が黄金色の光の蜜となってしたたってくる。まるで小説のヒロインになったような奇妙な心持ちで、コンスタンスは言い終わったあとですこし照れくさくなった。
「それじゃ、コンスタンス、教師を目指しなさいよ」
アガットの目は奇妙に輝いている。思えばアガットは体育以外は成績優秀で、本人も師範学校にすすんで教師になりたいなどと言っていた。だが、彼女の両親は花嫁修業をさせて早めに結婚させたいようだ。
皮肉なことだが、働く必要のないアガットの方には、教師になって職業婦人になりたいという願望があるらしい。
「教師は……、無理かも。わたし、正直、あんまり勉強好きじゃないもの」
「今からでも頑張ればいいじゃない? 幼い子どもたちに勉強を教えて、その子たちを指導するなんて、素晴らしい仕事じゃない」
そうだろうか? 到底そういうふうに思えない。
コンスタンスはアガットの右手にかかえているフランシス・ジャムの詩集本を見、内心溜息を吐きそうになった。アガットは大事な親友だが、どうもこういうところで感性が合わないことに気づきはじめてもいる。
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