メゾン・クローズ 光と闇のはざまで

平坂 静音

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「パパ、どうして家に帰ってこないの?」

「……仕事が忙しくてね」

「エマだって……、心配しているわ」

 嘘だということはすぐわかったらしい。デュホールは苦く笑った。

「あの家はもう私の家じゃないんだ」

「なに言っているのよ?」

 彼の瞳はひどくうつろで、なにも映していないように見える。

「……コンスタンス、どうしたんだい? ここへ来た事情は何なんだい?」

 冷めた言い方をされ、コンスタンスは胸が痛んだが、それでもこんなことを訴えられるのは父しかいない。先ほどの事態を説明した。

「……ひどいのよ、エマは」

 父もこれで目を覚ますかもしれないとコンスタンスは期待した。エマと別れて、母とやりなおす気になるかもしれない。そうすれば、すべて良くなるかもしれない。

 だが、父の言葉はコンスタンスのあわい期待を踏みにじるものだった。

「それが……いいかもしれないな」

 コンスタンスは絶句していた。

「エマがそうするのは、おまえのこれからのことを考えてだろう」

「な、なに言ってるのよ、パパ?」

 コンスタンスは驚きのあまり息が苦しくなった。何を言っているのか、父はわかっているのだろうか。

「どのみち……」

 そこでデュホールは溜息を吐いた。酒の臭いがコンスタンスの眉をまたしかめさせる。

「もう私にはおまえを学院にやってやることは出来ないし……。第一、おまえ、停学処分になったんだろう? 事務所へ校長からの手紙が来たよ」

「そ、それは……」

 どうやら自宅ではなく、父親の職場へ校長は手紙を送っていたらしい。父は酒の匂いとともに溜息を放った。それには諦めがこもっている。

「なぁ、コンスタンス、もう学院を辞めて、働いてくれないか? そのニール氏の世話になれば、今以上に贅沢な生活ができるかもしれないよ」

 コンスタンスは言われた言葉が理解できなくなった。

「パパ、頭がどうかしちゃったんじゃないの?」

 デュホールはまた溜息を吐く。
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