メゾン・クローズ 光と闇のはざまで

平坂 静音

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 どこをどう走ったか、コンスタンスは気がつけばどこかの通りにぽつんと立っていた。

 酔った男が二人楽しそうに路地を歩いている。女性の甲高い笑い声がちかくの店から聞こえてくる。

「マドモアゼル、こんなところでなにしているんだい?」

 酔っぱらいに声をかけられてコンスタンスは怯えた。あわてて離れようとした腕をつかまれ、悲鳴をあげそうになる。

「良かったら、いっしょに楽しもうじゃないか? すぐそこに良い店があるんだよ」

 酒ぐさい息を吐く口は髭につつまれている。ニールを思い出してコンスタンスはまた悲鳴をあげそうになった。

「はなしてよ!」

「おやおや、つれないねぇ。いいじゃないか、行こうよ」

「やめてよ」

 コンスタンスが泣きそうになったとき、べつの人影が割りこんできた。

「失礼、こちらのマドモワゼルは、私の連れなんで」

 背の高い男がそう言って、コンスタンスを酔っ払いから引きはなす。

「あ、あの」

「待たせてごめんよ。さ、行こう」

 街灯に照らされた男はとまどっているコンスタンスにウィンクした。色白のその顔は整っており、かすかな安堵感をあたえてくれる。
 
 歳は二十四、五ぐらいだろうか。こざっぱりとした身なりで、胸には夜目にも白い花をかざっていることが知れる。洒落た雰囲気だ。どことなく品が良さそうで、コンスタンスは当惑しながらも拒絶できかった。すくなくとも、この柄の悪い酔っぱらいよりかはましだ。

「え、ええ……」

 彼はぐいぐいと腕をひっぱり、コンスタンスを路地へ連れて行く。



「あ、あの」

「いやー危なかったねぇ。君、こんな時間にあんなところを一人で歩いていたら、街娼だと思われるよ」

「が、街娼?」

「そう。立ちんぼのことだよ。私娼ともいうね。駄目だよ、君、身なりからしてちゃんとしたお家のお嬢さんだろ
う?」

 ちゃんとした家と言えるのかどうか……、コンスタンスは顔をうつむけてしまった。

「……道に迷っているのかい? 良かったら、僕が案内してあげようか? 僕はカルロス。あやしい者じゃないよ」
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