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魔女の戦い 一
しおりを挟む生まれて初めて見る裁判というものを、コンスタンスは緊張して壁際の椅子に腰かけ眺めていた。
近くにはブリジットやビュルもいる。ペリーヌはうまく逃げたようでつかまらなかった。万が一のときのことを考え、店でも働く女の子たちの住所や本名は敢えて訊かず帳簿などにも記入していなかったのだ。このままペリーヌがつかまらないことをコンスタンスは祈っていた。
裁判がはじまるのをコンスタンスは背に汗を感じながら、まるで芝居の登場人物になったような気分で待っていた。席に座っている人間はほとんどが黒い背広姿の男性だ。おそらくは記者か、もしくは好奇心で傍聴に来た人間だろう。
ちらほら女性の姿も見える。彼女たちも記者か出版関係の人間のようだ。三十代ぐらいの女性ばかりだが、そのなかにクレオの顔も見えた。一瞬、クレオの若葉色の瞳とコンスタンスの鳶色の目がかち合うと、クレオは励ますように頷いた。
「静粛に!」
たいして騒いでいたわけではないのに漆黒の法衣をまとった裁判長が、木槌を叩いて独特の音をたてる。
ますます芝居じみてきて、コンスタンスはいつの間にか背の力が抜け、証人というよりも観客の気分になってきていた。
いや、たんなる観客ではすまない。これから自分も無理やり下手な芝居を求められるのだろうか。スカートの膝上に置いている手が汗ばむ。なるべく目立たない服装で来たせいか、コンスタンスは生真面目な女学生に見えているようで、時折傍聴人が向けてくる視線は訝しげだ。この地味な娘も売春宿で働いていたのだろうか、というように。
「被告、セシール・オベールはシャルボニエール通りの、亡夫が残した家において売春の斡旋業をおこない、そこに十代から三十代の女性たちを集め、客の男たちに売りつけ……」
検事のきびしい声が淡々と続き、やがてそれが終わると、今度は弁護士の声がひびいた。
「被告は病によって船長だった夫をうしない、被告と二人の子どものためにも、生活のためにこうした行為をせざるを得ず……」
ここでコンスタンスはマダムに子どもがいたということを初めて知った。
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