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遺産 九
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「え、やだ、まさかそれ開かないの? 鍵かかっているとか?」
「ううん。鍵はないけど……、開かないよ。長年閉めていたから、開かなくなっちゃったんじゃない?」
私はあわてて、のんきにそう言う美菜を押しのけて、三番目の一番下の引き出しを開けてみようとした。が、開かない。
「嘘ぉ」
まさかとは思うが、だから伯母はこれをゆずってくれたのだろうか。不良品というか、欠陥品だから、どうせたいして価値もないと思って。
私の胸のうちで騙されたような不快感がこみ上げてきた。
「やだぁ、冗談でしょう!」
いらだちながら、力をこめて引き出しを引く。
「金槌とかで壊してみる?」
「そんなことしたら、意味ないでしょう!」
いらいらしながらも渾身の力を込めて、両手で小さな金具の引き口を思いっきり引く。指が痛くなったが、あきらめなかった。
何よ、これ、欠陥品じゃない。伯母さん、わたしのこと騙したんだろうか。宝石や着物をやるのにくらべたら安上がりで得したって、喜んでいたのかも。
指先に全身の力が届いた気がした。目をつぶっていた私は視界が真っ赤になった錯覚がした。
怒りが、異常な力を私に与えてくれたのかもしれない。
「あっ! 開いたぁ!」
美菜のすっとんきょうな声がひびいた。
「ううん。鍵はないけど……、開かないよ。長年閉めていたから、開かなくなっちゃったんじゃない?」
私はあわてて、のんきにそう言う美菜を押しのけて、三番目の一番下の引き出しを開けてみようとした。が、開かない。
「嘘ぉ」
まさかとは思うが、だから伯母はこれをゆずってくれたのだろうか。不良品というか、欠陥品だから、どうせたいして価値もないと思って。
私の胸のうちで騙されたような不快感がこみ上げてきた。
「やだぁ、冗談でしょう!」
いらだちながら、力をこめて引き出しを引く。
「金槌とかで壊してみる?」
「そんなことしたら、意味ないでしょう!」
いらいらしながらも渾身の力を込めて、両手で小さな金具の引き口を思いっきり引く。指が痛くなったが、あきらめなかった。
何よ、これ、欠陥品じゃない。伯母さん、わたしのこと騙したんだろうか。宝石や着物をやるのにくらべたら安上がりで得したって、喜んでいたのかも。
指先に全身の力が届いた気がした。目をつぶっていた私は視界が真っ赤になった錯覚がした。
怒りが、異常な力を私に与えてくれたのかもしれない。
「あっ! 開いたぁ!」
美菜のすっとんきょうな声がひびいた。
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