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青い娘たち 六
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そんなことを考えこんでいると、眠たくなってきた。ここ最近、体調が今ひとつ良くない。健康管理をおこたっている証拠だ。生理不順もしょっちゅうだし。
たまらなくだるくなってきた。ちょっとだらしないけれど、電機を消して床にクッションをひくと、それを枕代わりにして横になった。ベッドに入ろうかと思ったけれど、そうしたら本格的に眠りこんでしまいそうだ。また課題のつづきをしないといけない。ほんの少し仮眠を取るだけ……。
私はおそってきた睡魔に身をゆだねた。
黒い霞に包まれたような気分でまどろんでいると、カサコソと奇妙な音がひびいてきた。
いやだ、ゴキブリ?
私はなかば眠りながらも嫌悪感に首のあたりがかたくなるのを自覚した。
カササ……カサカサ……。
いや、ゴキブリではなく、もう少し大きな生き物のようだ。背筋が寒くなってきた。
ちゃんとベッドで寝ておけば良かった。
鼠か、もしかしたら蜥蜴だろうか? まさか、蛇とか? 落ち着いて。この季節に爬虫類が出てくるだろうか? いや、温暖化がすすんでいるから、ありえるかも。それに、寮の裏には林があり、自然環境がいいこともこの寮の魅力になっているのだ。蛇や蜥蜴が出てきてもおかしくないかも。
そう考えると、ますます背筋が冷えてきてあせったが、どうしても身体が動かない。
起きなければ、と思って身体を起こそうとするが、身体は意思にたてつき、まったく動いてくれない。何だか変だ。
そう思った次の瞬間、私は、全身がこわばったのを感じた。
来てる!
確かに、それが来てる!
カサコソ、と何かが這いまわっているのだ。
それが、床のうえを近づいてくる。
クッションからこぼれる私の髪先にふれたのを、たしかに感じた。
悲鳴をあげそうになった。
最初は小さく感じたそれが、どんどん大きくなっていく錯覚を感じた。私はもう起きあがろうなどと思わず、ひたすらじっとしていた。
じわじわと、何かの気配がせまってくる。
目を閉じているはずなのに、闇に赤いものが光った気がした。
私は恐怖のあまり、ぎゃくに力を得て跳ね起きそうになった。だが、そうなりそうになった、そのギリギリの瞬間、せまってきたものが止まった。……そんな気がした。
気のせいではなく、それが、後退していく。
泣きたいほどの安堵感につつまれた。
どれぐらいたったか。
完全に気配が消えたのをさとって、おそるおそる目をあけた。
よろよろと立ちあがって電機をつけると、当然のように何もなく、机と椅子、本棚とベッド、というありきたりの風景だった。
「怖かったぁ……」
そんな独り言をもらしてから、ひとつ息を吐いた。
そして、気づいた。下着がぐっしょりと濡れていることに。
文中の詩は『アメリカ名詩選』岩波書店より
亀井俊介訳
たまらなくだるくなってきた。ちょっとだらしないけれど、電機を消して床にクッションをひくと、それを枕代わりにして横になった。ベッドに入ろうかと思ったけれど、そうしたら本格的に眠りこんでしまいそうだ。また課題のつづきをしないといけない。ほんの少し仮眠を取るだけ……。
私はおそってきた睡魔に身をゆだねた。
黒い霞に包まれたような気分でまどろんでいると、カサコソと奇妙な音がひびいてきた。
いやだ、ゴキブリ?
私はなかば眠りながらも嫌悪感に首のあたりがかたくなるのを自覚した。
カササ……カサカサ……。
いや、ゴキブリではなく、もう少し大きな生き物のようだ。背筋が寒くなってきた。
ちゃんとベッドで寝ておけば良かった。
鼠か、もしかしたら蜥蜴だろうか? まさか、蛇とか? 落ち着いて。この季節に爬虫類が出てくるだろうか? いや、温暖化がすすんでいるから、ありえるかも。それに、寮の裏には林があり、自然環境がいいこともこの寮の魅力になっているのだ。蛇や蜥蜴が出てきてもおかしくないかも。
そう考えると、ますます背筋が冷えてきてあせったが、どうしても身体が動かない。
起きなければ、と思って身体を起こそうとするが、身体は意思にたてつき、まったく動いてくれない。何だか変だ。
そう思った次の瞬間、私は、全身がこわばったのを感じた。
来てる!
確かに、それが来てる!
カサコソ、と何かが這いまわっているのだ。
それが、床のうえを近づいてくる。
クッションからこぼれる私の髪先にふれたのを、たしかに感じた。
悲鳴をあげそうになった。
最初は小さく感じたそれが、どんどん大きくなっていく錯覚を感じた。私はもう起きあがろうなどと思わず、ひたすらじっとしていた。
じわじわと、何かの気配がせまってくる。
目を閉じているはずなのに、闇に赤いものが光った気がした。
私は恐怖のあまり、ぎゃくに力を得て跳ね起きそうになった。だが、そうなりそうになった、そのギリギリの瞬間、せまってきたものが止まった。……そんな気がした。
気のせいではなく、それが、後退していく。
泣きたいほどの安堵感につつまれた。
どれぐらいたったか。
完全に気配が消えたのをさとって、おそるおそる目をあけた。
よろよろと立ちあがって電機をつけると、当然のように何もなく、机と椅子、本棚とベッド、というありきたりの風景だった。
「怖かったぁ……」
そんな独り言をもらしてから、ひとつ息を吐いた。
そして、気づいた。下着がぐっしょりと濡れていることに。
文中の詩は『アメリカ名詩選』岩波書店より
亀井俊介訳
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