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聖処女 四
しおりを挟む「へぇー、そうだったんだぁ。そんなことがあったんだね。全然、知らなかった」
友哉君は目を見張った。
「その、恵理ちゃんの本当のお祖父ちゃんていう人は、今頃どうしてるんだろう? 生きているのかな?」
「正直、私、その人には興味ないの」
「会いたいとは思わないの?」
「全然」
むしろ、今さら会いに来られたらどう対応していいのかわからなくて、困ってしまう。
「でもね、やっぱりそれ聞いたとき、びっくりしちゃった。自分の家系にそんな秘密っていうのか、隠しごとがあったなんて。ずっとうちは平凡な普通の家だと思っていたから」
それを言うと、友哉君は笑った。
「舟木さんの家の方は普通じゃないだろう? 地元じゃ、有名な家なんだろう? うちの、小倉家の方は本当に庶民だけれどさ」
「小倉のお祖父ちゃんて何やってた人?」
「昔は商売かなんかやってたみたいだけれど、うまくいかなったみたいだね。父さんたちが子どもの頃は本当に貧乏だったみたいでさ。しかも知久祖父ちゃんが事故で早死にしてからは、お祖母ちゃんが女手ひとつで僕らの父さんたちを育ててくれたらしいから。
「小倉のお祖母ちゃん、けっこう苦労したんだね」
「うん。でもお祖母ちゃんはなかなか教養のある人で、着物の着付けやお茶やお花なんかできる人だったから、それでどうにかやっていけたみたい」
それでも、長男を大学にやるのは相当、大変だったろうということは私にも推測できる。それを言うと、
「最初は伯父さんも進学をあきらめるつもりだったんだけれど、遠縁の人がお金出してくれたそうでさ。そのおかげで進学出来たらしいんだ」
「へぇ……そうだったんだ」
意外と、こうして聞くと、平凡そうに思えた小倉の家にもいろいろあったみたいだ。
「あ、今日言ったこと、家に帰っても本当に誰にも言わないでよ」
私はもう一度念を押しておいた。
「うん。わかった」
友哉君は屈託なく笑う。その笑顔は子どもの頃のままに無邪気で、私は胸がちょっとほんわかしてきた。
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