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魔女 三
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そしてこの不思議な生物が私のために働いてくれるのだ。
私は西洋の物語の、魔法の杖や剣を手に入れた勇敢な騎士か賢い少年になった気分だった。そして彼らはその道具を使ってお姫様を助けにいくものだ。
私はこの道具で、ミヨの願いを叶えてやるのだ。騎士にはなれないが、不幸な少女のために南瓜を馬車に変えてやった魔法使いになれる。私はちょっとした優越感と特権意識を感じつつ、今度は落とさないように大事にトヨールの入った瓶をにぎりしめた。
サリナを使いにやらせて呼びよせたミヨは、目を好奇心いっぱいにして瓶を見つめた。
「これが近所のお婆さんが話していたトヨールなのね。初めて見たわ。本当にいたのね」
「これを使うには血がいるのよ」
ミヨの興奮にほてっていた頬が、一気に青ざめた。私はあわててサリナから聞いた話を伝えた。
「そう。少しでいいのね……少しでいいなら。ねぇ、ナイフを貸してくれる?」
私は化粧台から剃刀をとりだした。すこし緊張してきた。
ミヨは私が見守るなか、おそるおそる左の人差し指に刃先をあてる。
ぽとり、ぽとり、とルビーのように紅い粒が瓶の口に落ちる。そして、黒い物体の上に。
私は見た。また、かすかに黒い物がうごめく。
「こ、これ、生きているわ。本当に生きている」
やっぱり半信半疑だったのだろう。ミヨは興奮に目を見ひらいた。
黒い物体は、紅い血を吸いこむと、海綿が水を吸いこんだように少しふくらんだ。
むくむくと、小さな身体が眠りから覚めるようにもぞもぞと動く。
「もうちょっと、切ってみたら?」
私はついそう言っていた。ミヨは息を吸いこむような仕草をして、また指先を傷つけた。
ぽとり、ぽとり、血はしたたる。
むくむくと、またそれは大きくなる。
やがて立ちあがるような動作をした。
そうだ、それには足があるのだ。手も。ちいさな手を、瓶口から伸ばしている。まるでここから出たい、出せ、と言っているようだ。
「出てくるわ」
ミヨが呆然としたままつぶやいた。
もこもこと、それは本当に出てきた。
私たち二人とも背をこわばらせて成りゆきを見守った。
それの動きはけっこう敏捷で、形は蛙のようでもあり、蝙蝠のようにも見える。だが、よちよちと歩き出すと、中華の伝説の妖怪、河童にも見える。
おおきさは小型の犬か、猫ぐらいで、立ち歩きはじめた人間の赤ん坊とくらべると、半分ぐらいだろうか。それは、おたおたと歩きだし、きょろきょろ辺りを見まわし、やがて頭部を私たちにむけた。目は赤い。私は内心の恐怖を必死におさえた。
私は西洋の物語の、魔法の杖や剣を手に入れた勇敢な騎士か賢い少年になった気分だった。そして彼らはその道具を使ってお姫様を助けにいくものだ。
私はこの道具で、ミヨの願いを叶えてやるのだ。騎士にはなれないが、不幸な少女のために南瓜を馬車に変えてやった魔法使いになれる。私はちょっとした優越感と特権意識を感じつつ、今度は落とさないように大事にトヨールの入った瓶をにぎりしめた。
サリナを使いにやらせて呼びよせたミヨは、目を好奇心いっぱいにして瓶を見つめた。
「これが近所のお婆さんが話していたトヨールなのね。初めて見たわ。本当にいたのね」
「これを使うには血がいるのよ」
ミヨの興奮にほてっていた頬が、一気に青ざめた。私はあわててサリナから聞いた話を伝えた。
「そう。少しでいいのね……少しでいいなら。ねぇ、ナイフを貸してくれる?」
私は化粧台から剃刀をとりだした。すこし緊張してきた。
ミヨは私が見守るなか、おそるおそる左の人差し指に刃先をあてる。
ぽとり、ぽとり、とルビーのように紅い粒が瓶の口に落ちる。そして、黒い物体の上に。
私は見た。また、かすかに黒い物がうごめく。
「こ、これ、生きているわ。本当に生きている」
やっぱり半信半疑だったのだろう。ミヨは興奮に目を見ひらいた。
黒い物体は、紅い血を吸いこむと、海綿が水を吸いこんだように少しふくらんだ。
むくむくと、小さな身体が眠りから覚めるようにもぞもぞと動く。
「もうちょっと、切ってみたら?」
私はついそう言っていた。ミヨは息を吸いこむような仕草をして、また指先を傷つけた。
ぽとり、ぽとり、血はしたたる。
むくむくと、またそれは大きくなる。
やがて立ちあがるような動作をした。
そうだ、それには足があるのだ。手も。ちいさな手を、瓶口から伸ばしている。まるでここから出たい、出せ、と言っているようだ。
「出てくるわ」
ミヨが呆然としたままつぶやいた。
もこもこと、それは本当に出てきた。
私たち二人とも背をこわばらせて成りゆきを見守った。
それの動きはけっこう敏捷で、形は蛙のようでもあり、蝙蝠のようにも見える。だが、よちよちと歩き出すと、中華の伝説の妖怪、河童にも見える。
おおきさは小型の犬か、猫ぐらいで、立ち歩きはじめた人間の赤ん坊とくらべると、半分ぐらいだろうか。それは、おたおたと歩きだし、きょろきょろ辺りを見まわし、やがて頭部を私たちにむけた。目は赤い。私は内心の恐怖を必死におさえた。
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