闇より来たりし者

平坂 静音

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戦い 二

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 子々孫々、末代まであんな連中と縁がつづくなんて、考えただけでもゾッとする。
「そ、そんなの困ります!」
 アレックスは眉をしかめて唇で笑みをつくった。
「そ、そりゃ、お祖母ちゃん、正確に言うと曾祖母は、確かにあいつらに役に立つ事をいっぱいしてもらったみたいだけれど、私は何にも良い事なんかしてもらっていないんだから……」
 良い事どころか、あの二人にはいやな目や、恐ろしい目に合わされた。美菜だって麻衣だって……、きっと今の不幸にはあのトヨールたちがからんでいるにちがいない。
「しかも、あいつらは私の身体を狙っているんですよ!」
 脚を組みなおすと、アレクッスは考えこむように眉をしかめた。
「……そのトヨール、イザーとミミですか? そのトヨールたちは本当に進化してきたのでしょう。もしくは新種のトヨールというべきか、突然変異というべきか。命令されるのを待っているのではなく、みずから意思を持って自由に動こうとしている。悪い方向へパワーアップしてきていますね。人間の身体を欲しがるトヨールなんて、私も初めて聞きました。……少し、ややこしい話をしていいでしょうか?」
「え? あ、はい」
「トヨールというのは、あらためて言いますが、呪術師によって作り出される呪術の道具です。〝使い魔〟などとヨーロッパでは言われるものですね。黒魔術を使う魔女や魔術師たちが犬や猫、蝙蝠こうもりを仕込んで、自分たちの手足、道具として使うように、呪術師はトヨールを使います」
 それはすでに聞き知っていることだけれど、私はうなずいた。
「ただ、ヨーロッパの魔術師や東洋のほとんどの術師たちが、動物や、蛇、蛙などを呪術の道具に使うのとちがい、トヨールは死産、もしくは流産した胎児の遺体を使うところが特殊です」
 はあ……と私はまたうなずいてみせる。
「マレーシアでは古くから術師によって作り出されたトヨール、もしくは呪術師の助言や助力をもとに一般人が作ったトヨールを使って、小銭を盗ませたり、憎い人間に災難をもたらしたりすると言われています。いえ、マレーシアだけではなく、タイ、カンボジア、フィリピンでも、呼び名はちがえど、トヨールと似た人口の魔物の存在が信じられてきました」
「え? そうなんですか?」
 他の国にもあったとは初耳だった。
「もっとも、あたりまえながら、そういった存在はほとんど迷信のたぐいとして語られ、本気で信じている人は少ないと思います」
 アレックスは苦笑する。確かにそうだろう。ちょっと違うかもしれないけれど、わら人形に釘を打って呪った相手が死ぬと信じるか、どうかみたいなものかも。知られてはいて、そこそこ信じてはいても、実際にやる人は殆どいないけれど、それでもやっている人もいるかかも……、みたいな。
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