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新生 四
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咲子が目をぱちくりさせたとき、背後から明るい声が響いてきた。
「あ、咲子ちゃん、おまたせ! ここにいたの?」
理恵がピンク色の手袋をはめた右手を振りながら近づいてくる。
「さがしちゃったわ。あら、何、それ?」
「あ、ううん。何でもないの」
咲子はとっさに理恵の目から紙袋をかくし、おおあわてで持っていた自分のバッグに入れた。理恵にわたすはずの物なのだが、唐突に、わたす気にはならなくなった。
(絶対にわたさない! 私のものよ)
「じゃ、行こうか。友哉君、もう駅に着いているかも」
「そ、そうね」
ふふふふ……。いい獲物を見つけた。この娘なら大丈夫。
バッグのなかの闇のなかで、その小さな生き物はほくそ笑んだ。
パパとママの言っていたとおりだわ。
欲の深い人間を見つけるようにって。欲の深い人間は、私たちが頼めば、かならず血をくれるって。そのときの台詞も教え込まれていた。「一滴血をくれたら、何でもしてあげる」
欲望の強い人間ほどこの言葉は効くという。
この娘、相当欲が深そう。
それは、進化したトヨールだった。
ボモーのほどこした毒、放射能、人間の我欲のこもった血、憎悪、執着、焦燥、様々な負の波動を受けて進化したミミとイザーの間に生まれた、また新たに進化したトヨールだったのだ。
異形の双生児として生まれ、妖魔と変じた二人が、その幻の身体で交わり、生み落とした、新たなちいさな悪魔は、闇のなかで笑った。
了
「あ、咲子ちゃん、おまたせ! ここにいたの?」
理恵がピンク色の手袋をはめた右手を振りながら近づいてくる。
「さがしちゃったわ。あら、何、それ?」
「あ、ううん。何でもないの」
咲子はとっさに理恵の目から紙袋をかくし、おおあわてで持っていた自分のバッグに入れた。理恵にわたすはずの物なのだが、唐突に、わたす気にはならなくなった。
(絶対にわたさない! 私のものよ)
「じゃ、行こうか。友哉君、もう駅に着いているかも」
「そ、そうね」
ふふふふ……。いい獲物を見つけた。この娘なら大丈夫。
バッグのなかの闇のなかで、その小さな生き物はほくそ笑んだ。
パパとママの言っていたとおりだわ。
欲の深い人間を見つけるようにって。欲の深い人間は、私たちが頼めば、かならず血をくれるって。そのときの台詞も教え込まれていた。「一滴血をくれたら、何でもしてあげる」
欲望の強い人間ほどこの言葉は効くという。
この娘、相当欲が深そう。
それは、進化したトヨールだった。
ボモーのほどこした毒、放射能、人間の我欲のこもった血、憎悪、執着、焦燥、様々な負の波動を受けて進化したミミとイザーの間に生まれた、また新たに進化したトヨールだったのだ。
異形の双生児として生まれ、妖魔と変じた二人が、その幻の身体で交わり、生み落とした、新たなちいさな悪魔は、闇のなかで笑った。
了
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