白薔薇黒薔薇

平坂 静音

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変わる世界 二

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「ふん、もともとスペイン人だし、たいして皇帝にもフランスに愛着なんてないんじゃない? まぁ、皇后としての地位には愛着があるでしょうけれど。そもそも外国人と結婚したのが皇帝のあやまちだったのよ」
 マルゴは目をぱちくりさせる。それを言うなら、ナポレオン一世をはじめ、その一族も外国人なのだが、そのことは誰もあまり言わない。それにしても時代の変わり目というのか、戦争に負けたせいか、ナポレオン三世への批判もきびしいが、それ以上にきびしいのは皇后への批判と不満の声だ。
 政治的なことにはほとんど興味のないマルゴだが、村でも時折り大人たちが皇后を悪く言っているのを耳にしたことがある。あのスペイン女、でしゃばり女、国政をめちゃくちゃにした、と言う人は多い。昨夜のフランソワとの会話でもそんなことを言っていなかったか?
「で、でも、皇帝が逃げてしまったら、これからこの国はどうなるの?」
「王制の復活はもうないでしょうね」
 ヴァイオレットは寂しげにつぶやいた。彼女は王制復古を望んでいたようだ。
「……おそらくは、共和制になって、王も皇帝もいない国なるわ」
 王も皇帝もいない国。マルゴはまた目をぱちくりさせる。
「いったんはそうなったこともあったのよ。でもすぐ終わってしまったけれど……。でも、こんな話、人前でしては駄目よ。女はあまり政治的な話をしない方がいいわ」
 ヴァイオレットのように教育を受けた女性でも、そういうことを言うものなのだ。いや、教育を受けた女性だからこそ言うのかもしれない。マルゴは口を引き締めた。
「フランソワの前では言わないようにするわ」
 ヴィアオレットは目を細める。
「賢明ね。そうよ、昨夜のようになるべくおしとやかに黙っている方が可愛いわ。男なんて、勝手なものよ。女を無知だ無学だと馬鹿にしておきならが、いざ女が知識を得て自分の意見を言い出すと、腹を立てるものよ」
「そ、そうなの?」
「そうよ。いい? フランソワの前では大人しく、静かにしておくのよ。そうすれば、フランソワは、あなたを放っておけなくなって、自分がついていてやらないと、と思うようになるわ。そして、クララとの結婚を決心するわ」
 針の束を胸に突き刺された気分になったが、マルゴはどうにか顔に出さないようにした。
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