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薔薇二輪 五
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あてがわれたこの屋根裏部屋で、ヴァイオレットは赤ん坊を産んだのだ。
(まったく、憎たらしい女だったよ)
十六年まえ、庶子を産んで平然としていたあの女を見た瞬間から、彼女にたいして激しい憎悪がベルトの胸に渦巻いた。正妻であるアデル夫人を見てもまったく悪びれた顔を見せなかった実に太々しい女。数年後に田舎に来てからも、学があることを鼻にかけ、いつもベルトたち他の使用人を見下すような態度をとっていた。
(あんな女に誑かされて、旦那様も旦那様だよ)
十六年まえ、夫人の供をしてこの屋敷に来たベルトはマリアとともにクララの出産に立ち会った。心中複雑ではあるが、その後、生後三ヶ月のクララを抱いて夫人と田舎に戻ったのだ。田舎では当時、やはりブルーム氏の子を産んだ女中のアンナと、マルゴと名付けられた彼女の赤ん坊がいた。
アンナは休暇中に田舎に戻っていたブルーム氏と関係を持っていたのだが、そんなものはブルーム氏にとってはほんの気晴らしのようなものだ。ブルーム氏は根は悪い人ではないが、女性に関してはかなりだらしない所があった。もっとも、齢を取ってからはそういった過去を反省してか、女遊びは減ったが。
当時村にいた流れ者の男に夫人は金をやって、おもてむきは彼とアンナの子としてマルゴの出生届けを出した。その後男は村を去った。
二人が二歳になったとき、ブルーム氏に送る写真を撮りに行く準備をしていたとき、ベルトはふとふざけ半分で二人の衣服を取り替えてみたことがあった。
女中の娘のマルゴに高価なレースのついた晴れ着を着せ、令嬢として育てられていたクララに粗末な服を着せてみた。二歳の幼児である。もともとよく似ていた二人は見分けがつかず、そのまま乳母車に乗せて二人を写真屋に連れていき、写真を撮った。
どうしてそんなことをしてしまったのか、ベルト自身でもよくわからないが、最初は本当にほんの気まぐれの悪戯気分だったのだ。
だが、そのあと二人の衣服を元にもどすことをしなかった。そのまま連れて帰り、そのままマルゴと呼ばれていた子どもを、二階の部屋の贅沢な子ども用ベッドに寝かせ、クララと呼ばれていた子を屋根裏部屋の粗末なベッドに置いた。
(まったく、憎たらしい女だったよ)
十六年まえ、庶子を産んで平然としていたあの女を見た瞬間から、彼女にたいして激しい憎悪がベルトの胸に渦巻いた。正妻であるアデル夫人を見てもまったく悪びれた顔を見せなかった実に太々しい女。数年後に田舎に来てからも、学があることを鼻にかけ、いつもベルトたち他の使用人を見下すような態度をとっていた。
(あんな女に誑かされて、旦那様も旦那様だよ)
十六年まえ、夫人の供をしてこの屋敷に来たベルトはマリアとともにクララの出産に立ち会った。心中複雑ではあるが、その後、生後三ヶ月のクララを抱いて夫人と田舎に戻ったのだ。田舎では当時、やはりブルーム氏の子を産んだ女中のアンナと、マルゴと名付けられた彼女の赤ん坊がいた。
アンナは休暇中に田舎に戻っていたブルーム氏と関係を持っていたのだが、そんなものはブルーム氏にとってはほんの気晴らしのようなものだ。ブルーム氏は根は悪い人ではないが、女性に関してはかなりだらしない所があった。もっとも、齢を取ってからはそういった過去を反省してか、女遊びは減ったが。
当時村にいた流れ者の男に夫人は金をやって、おもてむきは彼とアンナの子としてマルゴの出生届けを出した。その後男は村を去った。
二人が二歳になったとき、ブルーム氏に送る写真を撮りに行く準備をしていたとき、ベルトはふとふざけ半分で二人の衣服を取り替えてみたことがあった。
女中の娘のマルゴに高価なレースのついた晴れ着を着せ、令嬢として育てられていたクララに粗末な服を着せてみた。二歳の幼児である。もともとよく似ていた二人は見分けがつかず、そのまま乳母車に乗せて二人を写真屋に連れていき、写真を撮った。
どうしてそんなことをしてしまったのか、ベルト自身でもよくわからないが、最初は本当にほんの気まぐれの悪戯気分だったのだ。
だが、そのあと二人の衣服を元にもどすことをしなかった。そのまま連れて帰り、そのままマルゴと呼ばれていた子どもを、二階の部屋の贅沢な子ども用ベッドに寝かせ、クララと呼ばれていた子を屋根裏部屋の粗末なベッドに置いた。
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