転デュラ! 転生したらデュラハンだったけど、あんまり問題なかったよ!

風雪弘太

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一章 第一部

一章 第一部 犯人

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「……くっ」

 足がすくんで動けない。
 首を切り取られたということは、あの首の持ち主は死んでいるのだろう。
 そいつがうずくまるもう一人の人間に何をささやいているかは分からない。
 しかし、きっとろくなことではないだろう。

 僕はどうすればいい? 何をすればいい? このまま黙って見過ごすなんてできない。

 しかし、簡単に人を殺せるような相手だぞ……
 
その瞬間、あの死体の山が、僕の脳裏に浮かび上がった。

 最悪だ…… 全身が震える。僕はここから、動けそうにな……

「おい!」

 不意に、その人影は大声を出した。そしてまっすぐに、僕たちの隠れている岩場の方を指さして言う。

「誰かいるだろ? そこに」
「――――――――っ!?」

 心臓が止まるかと思った。
 ばれている。なんで? アヌビスだって馬鹿じゃない。むしろ、かなり賢いはずだ。
 そう易々と見つけられるわけがない。

 僕がそう疑問に思っていると、その人影が丁寧に教えてくれた。

「いやー 上手く隠れてたみたいだが、俺には通用しない。目も、耳も、鼻も、俺には必要ないんだよ。相手が出している微量の魔力。それだけで十分だ。さ、出てこい」

 そいつは決して強くはない。しかし有無を言わせない口調で言ってきた。

「…………」

 その言葉にアヌビスは岩の影から出ようとするが、僕はそれを制す。
 ふむ…… 流石にアヌビスに死なれちゃ、柊と乃綾が困るだろう。
 
「はいはい、おとなしく出て行くよ」

 僕は両手をあげながら岩陰から出た。
 そして手招きされるままに進んでいく。

アヌビスには隠れているように、そして隙を突いて逃げるように、と言って。

「ふーん、一人、か…… まあいいや、君、なんでこんなところにいるの?」
「……何でそんなこと聞くんだ?」

 ここからの台詞選びはとても重要だ。
 おそらく僕の一挙手一投足に、アヌビスが生きることができるかどうかがかかっているだろう。

「いやー この俺の興味が君から消えたら、君の人生もそこで終わるからサー 少しでも生きていられる時間を長くしてやってんの。感謝してくれよ?」
「……そういうことか。ま、どっちにしろ死ぬんだろ?」
「そういうことになるねー」

 逆光になっていて、相手の顔はよく見えない。
 しかし、なにやらフードのようなものをつけていることだけは分かった。
 後ろにうずくまっていた人は…… そいつの影に隠れて見えなかった。

「じゃあ、もう一回同じ質問。君、なんでこんなところにいるの?」

なんで、か……
 
「世界に終末の予言を伝えるためだ」
「終末の予言!? そ、そうか……」

 ふむ、いい感じに興味は引けたか。じゃあ、後はアヌビス、上手く逃げろよ。
 そう思いながら全力で背後の岩の影に神経を集中させる。が、動く気配はなかった。

 何やってんだよ…… もう……

「そ、そっか…… じゃあ、その終末の予言っていうのはどういう……」
「『(バースト・リミッテッド)』!」

 そいつがそう続けようとしたそのとき、アヌビスの叫び声が聞こえ、僕の視界が真っ白に染まった。


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