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一章 第一部
一章 第一部 デュラハン
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「ん…… うう……」
ずきり、少しの頭の痛みとともに、僕は目覚めた。
何があったんだ? 確か、アヌビスが叫んで、目の前が光って……?
あいつは、どうなったんだ? アヌビスは無事なのか? あのうずくまっていた人は?
様々な疑問が僕の脳内を駆け巡るが、松明も消えていて、月明かり以外の明かりがない今、どうすることもできなかった。
「アヌビスー!」
一応呼んでみる。まあ、そんな簡単に来てくれたら苦労しな……
「時雨さん!」
……思いの外簡単だった。
しかし、声が聞こえただけで、まだ合流はできていない。
「アヌビスー!」
「時雨さむぐっ⁉」
突然、アヌビスの声が何者かから口を押さえられたようにくぐもった。
そしてそれ以降、アヌビスの声は聞こえなくなる。
その直後。
「いやー 危なかったー 俺もあと少しで死ぬところだったよー」
先ほど僕に向かってしゃべっていた、あいつの声が聞こえた。
「ねえー さっきの爆発のせいでついに俺は触覚以外の全てのかんかくをうしなっちゃったわけなんだけど、駄目だねー あんなに叫んじゃ。すぐに捕まえちゃったよー」
捕まえた。つまりアヌビスはあいつに捕まったのだろう。
フードをかぶった殺人鬼に。
そしてそいつは、明らかに僕に向かってしゃべっている。
「この子がどうなってもいいなら、一人ですたこら逃げればいいけどさー ま、十中八九、この子は死んじゃうねー」
そいつは一方的にしゃべり続ける。
しかし、僕の耳には、そいつの言葉は入ってこなかった。
どうするどうするどうするどうするどうするどうする――――!?
僕の頭の中はそれだけで一杯だった。
今からアヌビスを無傷で助けるにはどうずればいい?
幸い、あいつに感覚はほとんど無いらしい。それをどうにか利用……
駄目だ。僕もこの中ではほとんど見えない。
物の影ならおぼろげに分かるのだが、それが人なのか、石の塔なのか、全く区別がつかなかった。
どうするどうするどうする―― あっ!?
そこで僕がアヌビスのあの言葉を思い出したのは、きっと奇跡だったのだ。
僕が新しい魔法は作れるか、と聞いたとき、アヌビスはこう言っていた。
『え…… ああ…… できることには…… できます。ただちょっと難しいというか、なんというか……』
つまり、できないわけじゃない。
暗視魔法や透視魔法だって、できないわけじゃない。そういうことだ。
どうすればいいかなんて分からない。
しかし僕は、気付けば包帯に手を伸ばしていた。
アヌビスが巻いてくれたそれを少しずつ外していく。
僕には分からない。でもデュラハンの身体でなら……?
きっとできる。
楽観的かもしれないが、僕はそう信じた。
感覚。当てずっぽう。そんな不正確なものに頼り、僕は魔法を創り出す。
一つ一つ、詠唱、イメージ、鮮明に……
そして体感的には数分。だが、実際には数十秒でそれは完成した。
僕はたった一言。
「『レイン』」
そう呟いた。
ずきり、少しの頭の痛みとともに、僕は目覚めた。
何があったんだ? 確か、アヌビスが叫んで、目の前が光って……?
あいつは、どうなったんだ? アヌビスは無事なのか? あのうずくまっていた人は?
様々な疑問が僕の脳内を駆け巡るが、松明も消えていて、月明かり以外の明かりがない今、どうすることもできなかった。
「アヌビスー!」
一応呼んでみる。まあ、そんな簡単に来てくれたら苦労しな……
「時雨さん!」
……思いの外簡単だった。
しかし、声が聞こえただけで、まだ合流はできていない。
「アヌビスー!」
「時雨さむぐっ⁉」
突然、アヌビスの声が何者かから口を押さえられたようにくぐもった。
そしてそれ以降、アヌビスの声は聞こえなくなる。
その直後。
「いやー 危なかったー 俺もあと少しで死ぬところだったよー」
先ほど僕に向かってしゃべっていた、あいつの声が聞こえた。
「ねえー さっきの爆発のせいでついに俺は触覚以外の全てのかんかくをうしなっちゃったわけなんだけど、駄目だねー あんなに叫んじゃ。すぐに捕まえちゃったよー」
捕まえた。つまりアヌビスはあいつに捕まったのだろう。
フードをかぶった殺人鬼に。
そしてそいつは、明らかに僕に向かってしゃべっている。
「この子がどうなってもいいなら、一人ですたこら逃げればいいけどさー ま、十中八九、この子は死んじゃうねー」
そいつは一方的にしゃべり続ける。
しかし、僕の耳には、そいつの言葉は入ってこなかった。
どうするどうするどうするどうするどうするどうする――――!?
僕の頭の中はそれだけで一杯だった。
今からアヌビスを無傷で助けるにはどうずればいい?
幸い、あいつに感覚はほとんど無いらしい。それをどうにか利用……
駄目だ。僕もこの中ではほとんど見えない。
物の影ならおぼろげに分かるのだが、それが人なのか、石の塔なのか、全く区別がつかなかった。
どうするどうするどうする―― あっ!?
そこで僕がアヌビスのあの言葉を思い出したのは、きっと奇跡だったのだ。
僕が新しい魔法は作れるか、と聞いたとき、アヌビスはこう言っていた。
『え…… ああ…… できることには…… できます。ただちょっと難しいというか、なんというか……』
つまり、できないわけじゃない。
暗視魔法や透視魔法だって、できないわけじゃない。そういうことだ。
どうすればいいかなんて分からない。
しかし僕は、気付けば包帯に手を伸ばしていた。
アヌビスが巻いてくれたそれを少しずつ外していく。
僕には分からない。でもデュラハンの身体でなら……?
きっとできる。
楽観的かもしれないが、僕はそう信じた。
感覚。当てずっぽう。そんな不正確なものに頼り、僕は魔法を創り出す。
一つ一つ、詠唱、イメージ、鮮明に……
そして体感的には数分。だが、実際には数十秒でそれは完成した。
僕はたった一言。
「『レイン』」
そう呟いた。
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