転デュラ! 転生したらデュラハンだったけど、あんまり問題なかったよ!

風雪弘太

文字の大きさ
17 / 26
一章 第一部

一章 第一部 勝利

しおりを挟む
 見える。今なら、この暗闇が真昼のように。
 ……少し見えすぎるような気もするが。

 あいつは、僕のことをまだ探し出せていない。

「おーい、聞こえてるのかい? まあ、君がなにか言ったって、よほどの大声じゃないと俺には聞こえないんだけどねー」

 ようやく、あいつの声が僕の耳に届いてきた。
……この口ぶりだと、あいつはまだアヌビスに危害は加えていないだろう。
 そして、僕がまだあいつを見つけられていない高を括っているのだろう。

 まあ、見当違いにも程があるが。

 僕はあいつの声が聞こえたほうに目をやる。
 よし。はっきりと見えた。

 あいつに捕まれてぐったりとしているが、アヌビスは無事そうだ。

……よし、ここから慎重に近づいて……

「はーあぁ、もう飽きちゃったなー  ねえ、君のお友達は、もう逃げちゃったみたいだねー」

 あいつは突然そう言うと、自分が捕まれているアヌビスに向かってにやにやと笑った。

「じゃ、君、殺しちゃうけど、文句ないよね? って、聞いても答えられないかー」
「やめろ!!」

 気がつくと、僕は反射的にそう叫んでいた。

 さっき頭の中で立てていた作戦は、全て吹き飛んでしまっている。

 流石に、この叫びはあいつに伝わったようだ。

 「おっとー  これはびっくり。まだ逃げてなかったのかー」

 あいつはわざとらしくそう言うと、僕の方を向く。
 しかし、なぜかあいつの顔は僕に見えなかった。

「逃げるわけないだろ……!」
「確かにそうだよねー」

 僕が静かにそう言うと、タイミングよくあいつも返した。

 そしてあいつは何やら考え込む様子を見せると、すぐ後、何かを思いついたかのように手を打った。

「……そうだ! ゲームをしよう!」
「ゲーム……?」
「俺と君とで、この子と、そこの人の命をかけたゲームだよ。あ、もちろんあまり時間はかけないよ?」
「ふざけっ!!」
「あ、俺が感じれるのは言葉の発している振動だけだから、感情とかはわからないなー  ゴメンね?」

 ……落ち着け。落ち着くんだ……
あいつのにやにやとした声を聞いて、僕はカッとなった感情を抑え込んだ。

「……それじゃ、ゲーム内容の説明だよー 一回しか言わないからよく聞いてね?」

 あいつはそんな僕など気にもとめず、ゲーム内容の説明とやらをし始める。

「ルールは簡単。俺がこの子を殺すのが先か、君が俺を殺すのが先か。……そんなゲーム内容の中のどこにあそこで倒れている人の命が含まれるのかって?」

 あ、それには気づかなかった。

「俺はちょっとした特殊体質でさー 命を殺せば殺すほど強くなっていけるんだよ。さっきの即死レベルの攻撃を防げたのもそれが理由」

 ……なるほど、だからアヌビスはあんなに油断してたのか……

 ここに向かってくる途中に見たあの死体の山を思い出す。
 その間にもあいつはたくさんのことを勝手に喋った。

 先程のアヌビスの攻撃により、いまはかつてないほど弱体化していること、

 しかしアヌビスを殺せばその力が一気に元に戻ること。
 そうなってしまえば僕を殺して、あそこで倒れている人を殺すのが容易だということ。

「あ、俺が十数えるうちに俺を殺さないとこの子は死んじゃうからー 俺が殺すからねー」

 あいつはのうのうとそんなことを言った。
どこからその自信が出てくるのか。

 僕は適当な岩に自分の頭を置いた。
 あいつの姿がしっかりと視界に入るように。

「じゃあ、行くよー 十、九……」
 
僕はあいつが『十』と言った瞬間に走り始めた。
身体が軽い。これはあまり焦らずにじっくりと……

「な!?」

 僕はしっかりとあいつの方向を見て、そして驚きのあまり声をあげた。
 縮まっていないのだ。距離が。
 さっきから全くもってあいつに近づけていない。
 しかし、その間にも着々と時間は進んでいく。

「七、六…… 大丈夫かーい!? 早く俺を捕まえないとー 誰も逃げないなんていってないからー」

 僕の疑問はすぐにあいつが晴らしてくれた。

 なるほど、逃げる…… ね……
 僕はその言葉を聞いた瞬間。
 
 アヌビスに貰った剣を投げた。
 その剣は寸分違わずあいつの横っ腹を貫き……
 真横にあった岩の塔へと縫い付けた。

「ぐひゃ!?」

 あいつは腹部を貫かれた衝撃と、岩に叩きつけられたことにより、変な声を出すと、その場で沈黙し、ピクリとも動かなくなった。

「…………」

あっけない、最後だ。
僕は少し戻り、自分の頭をきっちりと持ってからアヌビスの状態を確認しに向かう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

元救急医クラリスの異世界診療録 ―今度こそ、自分本位に生き抜きます―

やまだ
ファンタジー
朝、昼、夜を超えてまた朝と昼を働いたあの日、救急医高梨は死んでしまった。比喩ではなく、死んだのだ。 次に目覚めたのは、魔法が存在する異世界・パストリア王国。 クラリスという少女として、救急医は“二度目の人生”を始めることになった。 この世界では、一人ひとりに魔法がひとつだけ授けられる。 クラリスが与えられたのは、《消去》の力――なんだそれ。 「今度こそ、過労死しない!」 そう決意したのに、見過ごせない。困っている人がいると、放っておけない。 街の診療所から始まった小さな行動は、やがて王城へ届き、王族までも巻き込む騒動に。 そして、ちょっと推してる王子にまで、なぜか気に入られてしまい……? 命を救う覚悟と、前世からの後悔を胸に―― クラリス、二度目の人生は“自分のために”生き抜きます。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...