転デュラ! 転生したらデュラハンだったけど、あんまり問題なかったよ!

風雪弘太

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一章 第一部

一章 第一部 少じょ…… 段ボール

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「ふぅ……」

 やっとアヌビスから渡された大きい方のテントを組み上げ、僕は今日、何度目になるか分からない溜息をついた。
 まあ、これでアヌビスともう一人の寝床は確保できたはずだ。
 ん……? もう一人……?

「あっ!!」

今まですっかり忘れていた。そうだ。もう一人いたのだ。
僕たちがここに来る理由になった叫び声を上げた人が。

 「まずいな…… 風邪、ひいてなければいいけど……」

夜の室外に放置していたのだ。あまり寒くは感じなかったが、万が一ということもある。

「テント…… よし」

テントがしっかりと地面に固定されたのを確認してから、僕は先ほどもう一人の人が
倒れていたであろう場所に向かうことにした。

「一応…… 寝て…… ひっ!?」

この人の状態を確認しようとしてしゃがんだ先に見えた首無し死体に驚いて、僕は悲鳴を上げる。

そうだ。そういえばあいつに殺されて……

 「…………」

僕は黙って手をあわせる。
本当は埋めてあげたかったが、まずは生きている人のことを優先させなければならない。
そして僕は今度こそ倒れている人の顔をのぞき込み……

「お、女の子!?」

確かに、あの叫び声は女の人の声だった気がする。
その人は、見た目で言うと十代の半ば。かなりの美少女だった。

「この人を担ぐのか……」

 僕は振り返り、先ほどここに来るついでに転がしてきていた簡易式のベッドを見て、さらに溜息をつくのだった。


 ……緊張する。どうしても。

僕は少女を見下ろしながら、どうすればいいものかと悩んでいた。
 アヌビスに対してはなんと思っていなかったが、基本的に僕は女性が苦手なのだ。
 おそらく過去のあの出来事を引きずっているからだろうが……
 このトラウマは一生克服できそうにない。
 おそらく…… いや? どうするのが正解なのだ?
 腰に手を回して縦に抱えるのか? 
 それとも膝の下と首の下に手を回して横に抱え上げるのか?

……僕に答えは見つけられそうになかった。

 かといってアヌビスを起こすのも、それはそれで気が引けるし……

「よし!」

 僕は決心した。
 そうだ。女の子だと思うから躊躇してしまう、緊張してしまうのだ。
 これを『そういう形をした段ボール』だと思えば…… いけるのではないか?
 よし。少し暗示をかけてみよう。

 段ボール。これは段ボール。段ボールだと言ったら段ボール……

 段ボールに見えてくる気がしてきた。
 よし、なんとかいけそうだ。

僕は少じょ…… 段ボールに近づき、段ボールを抱え上げるように持ち上げ……



 ……重い。
 予想以上に重かった。
 ……まあ、それもそうか。いくら自分に暗示をかけたところで、少じょ…… 段ボールが段ボールになるわけでもなければ、段ボールが段ボールの重さになるわけでもない。
(何言ってんのかわかんねえょ! by雨夜)

 しかし、一度持ち上げてしまった以上、後戻りはできないはずだ。
僕は異様に重い段ボールを息を切らしながらベッドまで運んだ。

よし、後は引っ張るだけだ。

 僕はそのまま。少じょ…… 段ボールの乗ったベッドをテントまで運んでいった。

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