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先のない未来 …3
しおりを挟む「分かった… 俺は書く。
雅也も隆志も何でもいいからちょっとくらいは書けるだろ?」
何だかんだ言っても、雅也も隆志も優しい心の持ち主で、優樹菜の涙を見たら書かないなんて言えない。
「うん、分かったよ」
それから俺達は、黙りこくって一生懸命手紙を書いた。それぞれが抱えているたくさんの思いをどれだけ手紙に託せるか分からないけど、でも、寧々が読んでくれるかもと思ったら、俺は便せんが何枚あっても足りないくらいだ。
綺麗な字で、分かりやすく、ごめんねを何回も書いた。そして、寧々に会いたいも、恥ずかしいくらいに何回も何回もしつこいくらいに書いた。
それぞれが書き終えた手紙を、優樹菜が持って来た一つの大きな封筒に入れて封を閉じた。だから、皆がどんな事を書いたのか全く分からない。
寧々はお母さんから切手代をもらっているらしく、帰りに郵便局のポストに入れるからと張り切っている。
「あと、もう一つ提案があります」
優樹菜は大きな声でそう言うと、真っ先に俺の顔を見た。
「毎年、春休みになったら、こうやって皆で集まりたい。
その間に、寧々と連絡が取れて、やり取りができるようになったら必要ないけど。
でも、何も連絡がつかなくて、こんな感じが続いてたら、春休みにこうやって集まろう。
“寧々を忘れない会”
ね、いいでしょ?」
俺は、正直、面倒くさいって思った。隣に座る雅也達の顔を見たら、幹太が決めてみたいな顔をしている。俺がチラッと優樹菜を見ると、優樹菜はまた泣きそうな顔になっていた。
「周りの大人は、寧々ちゃんの事はもう忘れなさいって言うけど、忘れちゃダメだって私は思ってる。
あの時、私が、寧々を置いて一人ですいすい崖を渡ったから、寧々に大丈夫だよなんて言ったから、だから…」
すると、ずっと黙っていた雅也が急に話し出した。
「違う、俺があんな崖を見つけなければよかったんだ…」
「俺だって、あの時、投げやりにならないで、もっと強く女子を止めとけばよかったんだ。絶対、行っちゃダメだって」
皆の胸の中には大きなしこりが残っていて、あの時あの現場を知っているメンバーの前では、不思議とポロポロと本音が顔を出した。
「皆のせいじゃないから…
絶対に、皆のせいじゃない」
俺は下を俯いて涙を堪えている皆に向かってそう言った。
「あの時、寧々は…
俺だけを信じて、俺だけを頼りにして、楽しそうに俺についてきた。
寧々が俺に向かって手を伸ばした時、俺はしっかり握ったのに、でも、寧々の手は離れていった。俺が離したんだ、力がなくて俺が寧々の手を離した…
だから、皆のせいじゃない…
俺のせいなんだ…」
俺はこんな告白をしている自分が嘘みたいで、何だか涙も出て来なかった。
でも、優樹菜も雅也も隆志もワンワン声を上げて泣いている。
なんか、泣けない俺のために、泣いてくれてるみたいに…
それからしばらくして、優樹菜の元に俺達が書いた寧々への手紙が戻って来た。
住所不明で、寧々の元へ届く事はないままに…
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