34 / 69
彼の真実 …2
しおりを挟む「ううん、優樹菜に会いたい…
あの頃の友達に会いたい…
幹太、私の記憶は、どのみち近い将来、必ず顔を出す。
それは、なんとなく分かるんだ。
もう、こんな状態はイヤ…
早く、自分の中で、真実を見つけたい。
皆の記憶と同じ記憶を共有して、昔みたいに笑い合いたい」
幹太は私に優しくキスをした。
そのキスの切なさに涙が出そうになる。
「寧々…
一つだけ、これだけは頭に入れといてほしい…
寧々の頭の中に戻ってきた記憶がどんな記憶だったとしても、俺は、寧々の手を絶対に離さないから。
二度と離さない…
何があっても絶対に離さない…
俺は、それだけのために、寧々に会えない時間を過ごして来た。
それだけは約束するよ。
だから、寧々もしっかり覚えといて…」
幹太の肌の温もりは、私に癒しの雨を降らせてくれる。私達は何度も体を重ね合ってお互いをお互いのものにして、この先に待ち受ける困難にも負けないくらいの絆を築いてきたつもりだった。
そして、私は、神様に何度も祈った。
どうか、私達にこれ以上の困難を与えないで下さいと…
*** *** ***
そして、次の日の土曜日、私と幹太は、夕方の新幹線に乗る事ができた。
今日の天気は曇り空で、私の中ではどんよりとした世界が広がっていたけど、明日と明後日は晴れマークが並んでいる。
私にとって天気はとても大切な事で、お日様に会えると思うだけで最高に気分がよかった。
幹太は新幹線に乗った途端、寝てしまった。今、幹太の会社は、東京都が取り仕切る大きなプロジェクト事業に携わっていて、幹太もそのメンバーに入っているらしい。まだ、下っ端の幹太は、雑務に追われる日々が続いていた。
私は幹太の寝顔をずっと見ている。
新幹線のガタガタという音が幹太にとっては揺りかごみたいで、子供の時のような無垢な表情がとても可愛いらしい。
私は帰りの新幹線に乗る二人を想像するのがちょっと怖かった。この幸せな時間がその時も続いていてほしい。
あまり深く考えないようにして、私も幹太の隣で目を閉じる。
幹太の右手に私の左手を巻き付けて、幹太の温もりを肌で感じながら。
私達が降り立った駅は、私には馴染みのない駅だった。
幹太の地元というか、私も以前住んでいた街は、この駅より四つ先に行かなければならない。でも、幹太はこの街にある高校に通っていたらしい。だから、この街の事はよく知っていた。
「思ってたより大きな駅でびっくりしちゃった」
私は幹太の地元の街はぼんやりと覚えている。どちらかと言えば田舎で、のんびりと時間が過ぎていた印象がある。
「俺達田舎者は、映画を観たり、洋服を買う時は、この街まで出てきてた。
ま、俺らの街ではあるあるの話だよ」
「デートとか?」
私は何げなくそう聞いてみた。
あ~、幹太の高校生の姿を見たかったな、なんて思いながら。
「デート?
そうかもな、ま、俺はそんなのでここに来た事はないけど」
私はもうそれ以上、話を膨らませるのはやめた。幹太のキラキラした高校生活を聞いたら悲しくなるだけだから。
「着いたよ。今日、俺らが泊まるホテル」
ビジネスホテルを思い描いていた私は、ホテルの豪華さにちょっと驚いた。駅近くにもっと安そうなホテルはたくさんあったのに。
「まだ、ゴールデンウィーク前だけど、それでも高かったでしょ?」
今回の旅の代金は幹太が全部払ってくれた。私も出すとは言ったんだけど、幹太は要らないの一点張りで、私は幹太に甘える形になった。
「全然高くないよ。寧々、俺が高給取りだって事、忘れたか?」
幹太はそう言うと、私の肩を抱き寄せてそのホテルへ入って行く。
チェックインを済ませボーイさんに案内された部屋は、見晴らしのいい角部屋だった。ツィンのベッドじゃなくて、ダブルのベッドというところが幹太らしくて笑っちゃったけど。
「寧々、今夜はこのホテルにあるレストランを予約してるんだ。
着くのが遅くなったし、今夜は俺達の記念日にしたいから」
「記念日? え? 何の?」
幹太はボーイさんが帰ったのを確かめると、私を自分の膝の上に座らせた。
「寧々がやっとこの街に帰って来てくれた日」
「まだ帰ってないよ。明日だよ」
幹太は笑いながら、私を強く抱きしめた。
「いいの。俺にとっては今日も明日も一緒だから」
幹太の性格が本当に好き。いい事も悪い事もみんな全てを丸く囲ってくれる。
「寧々がこの俺達の住んでいた場所に戻って来てくれた事が、俺にとっては最高にハッピーなんだ。
それに、寧々にとっては記憶の問題があって、普通の人なら怖くて近づけない場所なのに、寧々はこうやって来てくれた」
私は幹太の頬を撫でる。
「それは、幹太が側にいてくれるからだよ。
25歳の春に、幹太が私を見つけてくれた。
そこから全てが始まってるんだから…」
0
あなたにおすすめの小説
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
【完結】時計台の約束
とっくり
恋愛
あの日、彼は約束の場所に現れなかった。
それは裏切りではなく、永遠の別れの始まりだった――。
孤児院で出会い、時を経て再び交わった二人の絆は、すれ違いと痛みの中で静かに崩れていく。
偽りの事故が奪ったのは、未来への希望さえも。
それでも、彼を想い続ける少女の胸には、小さな命と共に新しい未来が灯る。
中世異世界を舞台に紡がれる、愛と喪失の切ない物語。
※短編から長編に変更いたしました。
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる