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暮らす
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海人はそう心に決めたけれど、まだ家に入る事をためらっている。
ひまわりが抱いている海人への見解は、記憶をなくし名前以外は思い出せない記憶喪失者というところらしい。
普通の人間ならば、過去からやってきたなんて想像することさえ皆無だろう。
海人はひまわりの考えに合わせることにした。この先この時代で暮らしていくのなら、それが最善の策だと思ったから。
ひまわりの家は整然と片付いていた。
海人は汚れた靴を脱いで自分の足を見た途端、入るのをためらってしまった。想像した以上に汚れている。
海人はさっきの公園できれいに洗った手ぬぐいを取り出し、ひまわりが見ていない隙に足の裏を丁寧に拭き、そして、靴の中に靴下と手ぬぐいを詰め込んだ。その汚れた靴は、玄関の外に邪魔にならないように置いた。
海人がゆっくり廊下を歩きひまわりのいる居間に入ると、そこには大きなテレビが置いてあった。
海人はひまわりの目をはばかることもなく、テレビに電話に珍しい物全てを一心に手で触った。
「これは何ですか?
電話はなんて言えばいいんだろう。かっこいい…」
海人はあまりの衝撃に、次々と出てくる言葉を抑えられずにいた。
「それはテレビです。
もうかなり古い型なんですよ、祖父母が使っていたものなので」
「テレビ?」
海人は山ほどある質問を飲み込んだ。知らな過ぎるのも、ひまわりを不安にさせるだけだから。
ひまわりは興奮気味の海人を手招きして、ソファに座るよう促した。でも、海人はおどおどするだけで、中々座ろうとしない。ひまわりは、まずは自分がそこに腰かけて見せた。
海人はひまわりの心遣いだけで十分だった。
「あ、僕はすごく汚れていて、ここの廊下に座るので大丈夫ですから」
ひまわりは、遠慮している海人が不憫でならない。
「あの… じゃ、お風呂に入りませんか?
あ、全然遠慮しないでください。さっきお風呂の準備をしたとこなので、もう入れると思います。
着替えは、祖父のものでよければ男物は揃っているので心配ないし…」
そう言うと、ひまわりはお風呂場へ走り出す。
「どうぞ~~」
ひまわりは海人の返事も聞かずに、急かすように海人に声をかけた。
海人は言われるがままひまわりの後をついて行き、ひまわりからタオルはこれでとか石鹸はそこにとか、慌ただしく説明を聞いた。
「では、ごゆっくり」
ひまわりは海人にそう言うと、満足気に微笑んでそこからいなくなった。
その場に残された海人は、風呂場を覗いて見る。
彼女のためにも綺麗になりたい。自分の体と心にこびりついた過酷で無残な汚れを、ひまわりが洗い流す機会を与えてくれたのなら…
ちょっと強引だったかも…
ひまわりは、目をぱちくりさせながら、あれよあれよという間にお風呂に入った海人を思い出していた。
でも、汚れている事を気にする海人がとても可哀そうだった。
さっきコンビニで男物の下着を買った時から、もうこの計画は敢行していたのだ。
海人がお風呂に入っている間に、ひまわりは夕飯の支度をした。今朝作っておいたカレーを温め、サラダは手際よく準備して冷蔵庫に入れた。料理好きのひまわりにとって、お客様をもてなすということは何よりも嬉しく幸せなことだった。
しばらく静かに時間は流れた。
そして、別人になった海人がひまわりの前に現れた。
祖父のバミューダパンツをはき、コンビニで買った白いTシャツを着て。
そして私は…
胸の高鳴りが止まらない。こんなに素敵な男の人を今まで見た事がない。経験した事のないときめきや胸キュンが、一度に全部やってきた。
これって、もしかして一目ぼれ??
海人の色黒の肌は涼しげな目元によく似合っている。よく見ると片目だけが二重のようだ。鼻筋は通っていて、笑うと口元から八重歯が顔を出す。
「お風呂はとても気持ち良かったです。
おじいさんの衣類まで貸していただいて本当にありがとう」
「いえ、どういたしまして…」
こんなにドキドキしている私は、本当に馬鹿みたいだ。
「あ、あの、ご飯食べましょ、作っておいたカレーがあるんです。
どうぞここへ座ってくださいね」
そう言いながらひまわりは、慌てて台所へ行った。そして、冷たい水を一気飲みして心のときめきを押さえ込んだ。
昨日までの私はときめきとかいう心の感情に全く無縁だったのに、今は、ときめきという言葉の意味が痛い程よく分かる。
あ~、心臓が破裂しそう…
ひまわりは二人分のカレーとサラダをトレイにのせ海人の待つテーブルへ行くと、海人はソファに恐縮して座っていた。
もしかしたら、正座の方がいいのかな…?
「下に座ります?」
ひまわりは優しく聞いてみた。
「はい」
海人は笑顔になって、テーブルの前まで下りてきた。
「美味しそう…」
そうつぶやいた海人は、ひまわりに向かって姿勢を正した。
「今日はこんなにもたくさんの親切を、本当にありがとうございます。
ひまわりさん…
ひまわりってとても素敵な名前ですね。
これからひまわりさんって呼んでもいいですか?」
海人はひまわりを見つめて照れくさそうに尋ねた。
「はい、海人さん」
ひまわりが抱いている海人への見解は、記憶をなくし名前以外は思い出せない記憶喪失者というところらしい。
普通の人間ならば、過去からやってきたなんて想像することさえ皆無だろう。
海人はひまわりの考えに合わせることにした。この先この時代で暮らしていくのなら、それが最善の策だと思ったから。
ひまわりの家は整然と片付いていた。
海人は汚れた靴を脱いで自分の足を見た途端、入るのをためらってしまった。想像した以上に汚れている。
海人はさっきの公園できれいに洗った手ぬぐいを取り出し、ひまわりが見ていない隙に足の裏を丁寧に拭き、そして、靴の中に靴下と手ぬぐいを詰め込んだ。その汚れた靴は、玄関の外に邪魔にならないように置いた。
海人がゆっくり廊下を歩きひまわりのいる居間に入ると、そこには大きなテレビが置いてあった。
海人はひまわりの目をはばかることもなく、テレビに電話に珍しい物全てを一心に手で触った。
「これは何ですか?
電話はなんて言えばいいんだろう。かっこいい…」
海人はあまりの衝撃に、次々と出てくる言葉を抑えられずにいた。
「それはテレビです。
もうかなり古い型なんですよ、祖父母が使っていたものなので」
「テレビ?」
海人は山ほどある質問を飲み込んだ。知らな過ぎるのも、ひまわりを不安にさせるだけだから。
ひまわりは興奮気味の海人を手招きして、ソファに座るよう促した。でも、海人はおどおどするだけで、中々座ろうとしない。ひまわりは、まずは自分がそこに腰かけて見せた。
海人はひまわりの心遣いだけで十分だった。
「あ、僕はすごく汚れていて、ここの廊下に座るので大丈夫ですから」
ひまわりは、遠慮している海人が不憫でならない。
「あの… じゃ、お風呂に入りませんか?
あ、全然遠慮しないでください。さっきお風呂の準備をしたとこなので、もう入れると思います。
着替えは、祖父のものでよければ男物は揃っているので心配ないし…」
そう言うと、ひまわりはお風呂場へ走り出す。
「どうぞ~~」
ひまわりは海人の返事も聞かずに、急かすように海人に声をかけた。
海人は言われるがままひまわりの後をついて行き、ひまわりからタオルはこれでとか石鹸はそこにとか、慌ただしく説明を聞いた。
「では、ごゆっくり」
ひまわりは海人にそう言うと、満足気に微笑んでそこからいなくなった。
その場に残された海人は、風呂場を覗いて見る。
彼女のためにも綺麗になりたい。自分の体と心にこびりついた過酷で無残な汚れを、ひまわりが洗い流す機会を与えてくれたのなら…
ちょっと強引だったかも…
ひまわりは、目をぱちくりさせながら、あれよあれよという間にお風呂に入った海人を思い出していた。
でも、汚れている事を気にする海人がとても可哀そうだった。
さっきコンビニで男物の下着を買った時から、もうこの計画は敢行していたのだ。
海人がお風呂に入っている間に、ひまわりは夕飯の支度をした。今朝作っておいたカレーを温め、サラダは手際よく準備して冷蔵庫に入れた。料理好きのひまわりにとって、お客様をもてなすということは何よりも嬉しく幸せなことだった。
しばらく静かに時間は流れた。
そして、別人になった海人がひまわりの前に現れた。
祖父のバミューダパンツをはき、コンビニで買った白いTシャツを着て。
そして私は…
胸の高鳴りが止まらない。こんなに素敵な男の人を今まで見た事がない。経験した事のないときめきや胸キュンが、一度に全部やってきた。
これって、もしかして一目ぼれ??
海人の色黒の肌は涼しげな目元によく似合っている。よく見ると片目だけが二重のようだ。鼻筋は通っていて、笑うと口元から八重歯が顔を出す。
「お風呂はとても気持ち良かったです。
おじいさんの衣類まで貸していただいて本当にありがとう」
「いえ、どういたしまして…」
こんなにドキドキしている私は、本当に馬鹿みたいだ。
「あ、あの、ご飯食べましょ、作っておいたカレーがあるんです。
どうぞここへ座ってくださいね」
そう言いながらひまわりは、慌てて台所へ行った。そして、冷たい水を一気飲みして心のときめきを押さえ込んだ。
昨日までの私はときめきとかいう心の感情に全く無縁だったのに、今は、ときめきという言葉の意味が痛い程よく分かる。
あ~、心臓が破裂しそう…
ひまわりは二人分のカレーとサラダをトレイにのせ海人の待つテーブルへ行くと、海人はソファに恐縮して座っていた。
もしかしたら、正座の方がいいのかな…?
「下に座ります?」
ひまわりは優しく聞いてみた。
「はい」
海人は笑顔になって、テーブルの前まで下りてきた。
「美味しそう…」
そうつぶやいた海人は、ひまわりに向かって姿勢を正した。
「今日はこんなにもたくさんの親切を、本当にありがとうございます。
ひまわりさん…
ひまわりってとても素敵な名前ですね。
これからひまわりさんって呼んでもいいですか?」
海人はひまわりを見つめて照れくさそうに尋ねた。
「はい、海人さん」
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