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入籍記念日
…2
しおりを挟む「僕とまひるは同志だな…
まひるは絵を描く事、僕はロボットを作る事。
お互い、感じる想いはきっと一緒だよ」
「でも、ミチャはロボットで成功した。
私は詳しい事は全く分からないけど、沙織先輩の話では、何か凄い技術を発明して特許を取ったって言ってた」
ミチャは絵の具を一生懸命仕分けしている。
「でも、その凄い技術って、たぶん、今、僕が絵の具を揃えているみたいな、単純な事なんだ。
事業が成功したのかは分からないけど、その特許のおかげで会社が成り立っているのは確かかな」
ミチャの眼差しは優しい。
ミチャの人柄は、私が思い描いていた理系男子のイメージを一気に覆した。
私はミチャからもらったミチャの経歴に目を通してみた。
名門の中高一貫校を出て、大学は東京工業大なんて凄すぎる。
ミチャは私の隣に来てその紙を一緒に見ると、何故だかクスッと微笑んだ。
「中学から男子高だろ。
大学だってほとんど女子はいないし、今の会社も七割は男。
女嫌いではないけど、女の子がいなくても何も支障はない。
そんな僕が結婚をするなんて、本当に不思議な気分だよ。
そして、何より、相手がまひるで本当に良かった」
ミチャは一体何を考えているのだろう。
この結婚は偽物だということを忘れてる?
「ミチャは、今まで好きになった人はいなかったの?」
偽物の結婚には何かきっと理由があるはず。
忘れならない女性がいるとか。
そんな聞きたくない事柄を、私はあえて聞きたい。
自分の心に鍵をかけるため。
「いないな~
僕はあまり人を好きにならないらしい。
だから、愛するとか初恋とか、そんな感情を抱いた事は一度もない。
きっと、冷たい人間なんだと思う」
私は何も言えずにただ下を向く。
そうだとしたら、なおさらミチャに惚れるわけにはいかない。
私一人だけピエロになんかなりたくないから。
ミチャの実家は想像通りの立派な邸宅だった。
ミチャの愛車フォルクスワーゲンでその家の門をくぐった時、私は異次元の世界へ入り込んだ気がした。
ミチャのヴィンテージ物のフォルクスワーゲンも、門から家まで続く緑の森のアーチも、市営住宅で育った私にとっては、何もかもが未知で光り輝く夢の世界。
こういう所で生まれ育ったミチャの価値観を知りたい。
きっと、お金になんて執着がなくて、全てを寛容に包み込む根っからの穏やかさが備わっている。
ミチャが本気で好きになる女性って、どんな人なのだろう…
私はその未来のミチャの彼女、頭が良くて可愛くて綺麗に違いない女性に、ちょっとだけやきもちを焼いた。
「まひるさん、いらっしゃい~~
そして、結婚おめでとう!」
そうだった、私達はミチャの実家に来る前に、近くの区役所に婚姻届けを出してきた。
お互い結婚に対してはあまり思い入れがないせいで、淡々と事務的に事は終わり、そして忘れていた。
「あ、ありがとうございます…」
ミチャのご両親は絵に描いたような優雅な夫婦だった。
特に、お母様は、ロマンスグレーの髪が綺麗にセットされていて、息子のお嫁さんを迎えるだけだというのに、正装をして慎ましやかに微笑んでいる。
もちろん、お父様だって、紳士的で気品がある。
ミチャはお父様に似ている気がする。
姿勢のいい立ち姿や、美形男子の目鼻立ち、それなのに何だかホッとする温かみと人懐っこさがミチャにもお父様にも見てとれるから。
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