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入籍記念日
…5
しおりを挟む「お互いの自己紹介は済んだ?」
ミチャはそう言いながら、私の肩を引き寄せた。
そうか、結婚したばかりの二人なら、いつでもスキンシップは欠かせない。
私も当たり前のようにミチャに擦り寄る。
「済んだ…よね?」
私は風磨を見つめながらそう聞いた。
風磨を傷つけずに、ミチャの事をあきらめてもらう。
そんな失恋の極限みたいなお題、恋愛初心者の私に理解できるわけがない。
でも、その報酬が300万円なのだ。
そう考えると、私の新人女優魂に熱が入る。
「ミチャの幼馴染なんですよね?」
何も言わず目を細めて遠くを見ている風磨に私がそう質問すると、風磨は私の口から出たミチャという単語に反応した。
そして、咎めるようにミチャを見る。
「そう。
ミチャにとって、俺は、幼馴染で弟で友達で、そして唯一無二の存在。
っていうか、まひるがミチャって呼ぶ事に、すごく違和感があるんだけど」
ま、まひる??
いきなり呼び捨てかい?
でも、風磨は敵ではない。
ミチャの大切な友人で、私にとっては取扱要注意の人物。
でも、今の風磨は、確実に私にケンカを売っている。
私はあからさまにミチャを見た。
ミチャはお手上げみたいな顔をして、肩をすくめている。
「はい、ミチャから風磨の事はよく聞いています。
唯一無二の友人だと。
それと、私がミチャって呼ぶのは、ミチャがそう呼んでほしいっていうから…」
風磨の目がキッと釣りあがる。
でも、私自身はブレーキをかけたつもり。
本当は、いや、いや、唯一無二の存在は私ですけど?って、戦いのゴングを鳴らしそうになったから。
でも、風磨って本当に分かり易い。
ミチャの事が大好きで、取られたくないって全身で言ってるようなものだもの。
「風磨…
今日は、僕達の入籍パーティに来てくれて本当にありがとう。
それと、僕の奥さんになる人が、僕の事をニックネームで呼ぶ事は普通の事だろ?
僕がまひるにそう呼んでほしいって思ったんだ。
ミチャの愛称は子供の時のものだけど、僕の心の中は今でもミチャのままで、子供の頃に作った君代ちゃんロボットを大切にしていたミチャがそのままいる。
確かに大人になってからは、風磨しかそう呼ばなかったけどね」
君代ちゃんロボット??
何、それ?
私は新しい情報に少し動揺した。
でも、それは、今夜にでもミチャに説明してもらおう。
今は、とにかく、風磨とのやり取りに集中しなきゃ。
でも、ミチャの言葉を聞く風磨の顔が切なすぎた。
子供のように感情をストレートに出す風磨のキャラクターに、何だか心が折れそうになる。
「まひるの前だからって、俺は遠慮なんかしない。
ミチャの事だから、こんな大掛かりなカムフラージュで俺を騙そうとしてるんだろ?」
ミチャは動揺を隠し冷静なふりをして、また肩をすくめた。
何言ってるんだ?みたいな、余裕を醸し出しながら。
「好きなように思っていいよ。
でも、僕はまひると結婚した。
それは紛れもない事実だし、僕はまひるの全てを愛している。
自分でも驚くくらいにね。
こんな気持ち、初めてなんだ…
風磨…」
ミチャのやるせない顔がとても美し過ぎた。
それに、ミチャを見つめる風磨の繊細な感情は、たくましい肉体美さえ儚いものに見せてしまう。
でも、風磨のその表情もつかの間だった。
すぐに、意地悪な悪ガキの顔に戻る。
「まひる、セックスは?
セックスももちろん相性いいんだろ?」
私は持っていたグラスを落としそうになる。
ミチャからもらった虎の巻に、二人のセックスの事項はなかった。
キスだってした事がないのに、セックスの事を聞かれても…
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