はじまりと終わりの間婚

便葉

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七夕の日

…2

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今年の七夕の日は日曜日だった。
私は朝からパーティの用意をし、ミチャはお得意の料理を皆に振舞うため、食材の買い出しに行き、今は仕込みの作業をしている。
そう、ミチャはお料理得意男子だった。
料理をする事が大好きで、誰かに食べてもらい美味しいと言ってもらう事に最高の幸せを感じるらしい。
だから、私との結婚生活はとても楽しそうだ。
だって、私は食べる事に関しては、好き嫌い無しの何でも満足する人間だから、ミチャの作ってくれるお料理にはいつも感動して、大きな声で美味しいと叫んだ。

その笑顔いっぱいの大きな声に、ミチャはいつも泣きそうになるらしい。
そんなミチャが大好きだった。
私のミチャへの想いは募るばかり…
気付かれないように頑張っているけれど…


午後三時に皆、この家に来る事になっていた。
皆といっても、招いているのは風磨と沙織先輩の二人だけで、私とミチャを合わせて四人のパーティだ。

先に来たのは風磨だった。
最近の私と風磨の関係は、ぎこちないけれど仲良くやっている。
風磨のミチャへのストレートな想いのぶつけ方にはいつも顔をしかめっぱなしだけど、でも、だからといってそれに応戦はしない。
だって、私はミチャのお嫁さんで、そういう太刀打ちできない完璧な余裕で風磨をやっつけたかったから。

「沙織はまだなの?」

そう、風磨はいつの間にか沙織先輩と友達になっていた。
きっと、変わり者同志気が合うのだろう。
ミチャと風磨が二人で楽しそうに話している時、沙織先輩からメッセージが入った。

「ミチャ、沙織先輩を下まで迎えに行ってくるね」

「え?
迎えにって、何度もこの家に来てるじゃん」

「何だか、荷物が多いんだって」

私はそれ以上の事は話さず、玄関から飛び出した。
実は、今日の七夕のイベントのために、このマンションのゲストルームを借りていた。
もちろん、そこで、変身するためだ。
私と先輩は、いつも通り、手際よく猫と豹に変身した。
私の急な結婚のためしばらくコスプレ活動を休んでいたせいで、私も先輩も異常なほどにテンションが上がっている。
二人で写真や動画を取り合って、すぐにインスタに載せた。
コスプレ仲間からいいね!がつき、どこにいるの~?とコメントが並び出す。
私と先輩は楽し過ぎて、雄叫びを上げる始末だ。
でも、まだ、このテンションは上の階にいる素人には刺激が強過ぎる。

「先輩、ミチャ達を驚かさない程度のテンションでお願いします」

「驚かさないでって、絶対に無理だよ。
ミチャは全く知らないんでしょ?」

私は多分と口ごもる。

「まひる、状況によっては、ミチャはまひるや私の事を大っ嫌いになる可能性だってあるからね。
この手の世界観を全く受け付けない人なんて、いっぱいいるんだから」

確かに、この恰好は刺激が強過ぎる。
私と先輩は劇団四季のキャッツを観て、見よう見まねでこの衣裳を作り上げた。
先輩はこの手の才能に満ち溢れていて、私と違い大学でも造形を専攻していただけあり手先がとても器用だ。
難易度の高い粘土細工も着ぐるみもメイド服も、いつも完璧に仕上げてくれた。

そして、この衣裳は体のラインピッタリのタイツ素材で作られている。
ところどころに猫や豹の毛皮もどきがあるせいで、第一印象はモコモコした可愛らしい猫スーツに見えるけれど、よく見ると体のライン丸出しの超セクシースーツだった。

「このスーツやめようかな…
やっぱり、最初は、可愛らしいメイド服にした方がいいかもしれない」

先輩は豹のように目を吊り上げて、無理!と叫んだ。

「メイクも全てキャット風に仕上げたんだから、今からメイドになるなんて2時間はかかるよ。
大丈夫!
まひるのナイスバディにミチャは釘付けになるって」

そう、それが嫌だった。
私は着やせするタイプで、脱いだら胸がすごく大きい。
自分ですごく大きいっていうのもどうかと思うけれど、でも、そのアンバランスさが子供の時からのコンプレックスだった。

「ミチャの心を掴みたいなら、たまには刺激も必要なの。
まひるって絵描きバカだと思ってたけど、脱いだら凄いんだ~みたいな?」

先輩は胸が小さい。
だから、自分の衣裳には必ず大きめのパットを入れ、フェイクの胸を作り出す。
それもどうかと思うけど…

「ほら、行くよ。
玄関の扉を開けたら、あのポーズ、忘れないでね」

私は鏡の前で、そのポーズをしてみる。
先輩も喜んで、私の隣で決めポーズを作る。

「あ~、残念だけど、やっぱり楽しい。
先輩、もし私がミチャに嫌われちゃったら、慰めてくださいね」

先輩は笑いながらキャット風にOKのポーズをした。

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