16 / 97
七夕の日
…2
しおりを挟む今年の七夕の日は日曜日だった。
私は朝からパーティの用意をし、ミチャはお得意の料理を皆に振舞うため、食材の買い出しに行き、今は仕込みの作業をしている。
そう、ミチャはお料理得意男子だった。
料理をする事が大好きで、誰かに食べてもらい美味しいと言ってもらう事に最高の幸せを感じるらしい。
だから、私との結婚生活はとても楽しそうだ。
だって、私は食べる事に関しては、好き嫌い無しの何でも満足する人間だから、ミチャの作ってくれるお料理にはいつも感動して、大きな声で美味しいと叫んだ。
その笑顔いっぱいの大きな声に、ミチャはいつも泣きそうになるらしい。
そんなミチャが大好きだった。
私のミチャへの想いは募るばかり…
気付かれないように頑張っているけれど…
午後三時に皆、この家に来る事になっていた。
皆といっても、招いているのは風磨と沙織先輩の二人だけで、私とミチャを合わせて四人のパーティだ。
先に来たのは風磨だった。
最近の私と風磨の関係は、ぎこちないけれど仲良くやっている。
風磨のミチャへのストレートな想いのぶつけ方にはいつも顔をしかめっぱなしだけど、でも、だからといってそれに応戦はしない。
だって、私はミチャのお嫁さんで、そういう太刀打ちできない完璧な余裕で風磨をやっつけたかったから。
「沙織はまだなの?」
そう、風磨はいつの間にか沙織先輩と友達になっていた。
きっと、変わり者同志気が合うのだろう。
ミチャと風磨が二人で楽しそうに話している時、沙織先輩からメッセージが入った。
「ミチャ、沙織先輩を下まで迎えに行ってくるね」
「え?
迎えにって、何度もこの家に来てるじゃん」
「何だか、荷物が多いんだって」
私はそれ以上の事は話さず、玄関から飛び出した。
実は、今日の七夕のイベントのために、このマンションのゲストルームを借りていた。
もちろん、そこで、変身するためだ。
私と先輩は、いつも通り、手際よく猫と豹に変身した。
私の急な結婚のためしばらくコスプレ活動を休んでいたせいで、私も先輩も異常なほどにテンションが上がっている。
二人で写真や動画を取り合って、すぐにインスタに載せた。
コスプレ仲間からいいね!がつき、どこにいるの~?とコメントが並び出す。
私と先輩は楽し過ぎて、雄叫びを上げる始末だ。
でも、まだ、このテンションは上の階にいる素人には刺激が強過ぎる。
「先輩、ミチャ達を驚かさない程度のテンションでお願いします」
「驚かさないでって、絶対に無理だよ。
ミチャは全く知らないんでしょ?」
私は多分と口ごもる。
「まひる、状況によっては、ミチャはまひるや私の事を大っ嫌いになる可能性だってあるからね。
この手の世界観を全く受け付けない人なんて、いっぱいいるんだから」
確かに、この恰好は刺激が強過ぎる。
私と先輩は劇団四季のキャッツを観て、見よう見まねでこの衣裳を作り上げた。
先輩はこの手の才能に満ち溢れていて、私と違い大学でも造形を専攻していただけあり手先がとても器用だ。
難易度の高い粘土細工も着ぐるみもメイド服も、いつも完璧に仕上げてくれた。
そして、この衣裳は体のラインピッタリのタイツ素材で作られている。
ところどころに猫や豹の毛皮もどきがあるせいで、第一印象はモコモコした可愛らしい猫スーツに見えるけれど、よく見ると体のライン丸出しの超セクシースーツだった。
「このスーツやめようかな…
やっぱり、最初は、可愛らしいメイド服にした方がいいかもしれない」
先輩は豹のように目を吊り上げて、無理!と叫んだ。
「メイクも全てキャット風に仕上げたんだから、今からメイドになるなんて2時間はかかるよ。
大丈夫!
まひるのナイスバディにミチャは釘付けになるって」
そう、それが嫌だった。
私は着やせするタイプで、脱いだら胸がすごく大きい。
自分ですごく大きいっていうのもどうかと思うけれど、でも、そのアンバランスさが子供の時からのコンプレックスだった。
「ミチャの心を掴みたいなら、たまには刺激も必要なの。
まひるって絵描きバカだと思ってたけど、脱いだら凄いんだ~みたいな?」
先輩は胸が小さい。
だから、自分の衣裳には必ず大きめのパットを入れ、フェイクの胸を作り出す。
それもどうかと思うけど…
「ほら、行くよ。
玄関の扉を開けたら、あのポーズ、忘れないでね」
私は鏡の前で、そのポーズをしてみる。
先輩も喜んで、私の隣で決めポーズを作る。
「あ~、残念だけど、やっぱり楽しい。
先輩、もし私がミチャに嫌われちゃったら、慰めてくださいね」
先輩は笑いながらキャット風にOKのポーズをした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
『 ゆりかご 』
設楽理沙
ライト文芸
- - - - - 非公開予定でしたがもうしばらく公開します。- - - -
◉2025.7.2~……本文を少し見直ししています。
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
――――
「静かな夜のあとに」― 大人の再生を描く愛の物語
『静寂の夜を越えて、彼女はもう一度、愛を信じた――』
過去の痛み(不倫・別離)を“夜”として象徴し、
そのあとに芽吹く新しい愛を暗示。
[大人の再生と静かな愛]
“嵐のような過去を静かに受け入れて、その先にある光を見つめる”
読後に“しっとりとした再生”を感じていただければ――――。
――――
・・・・・・・・・・
芹 あさみ 36歳 専業主婦 娘: ゆみ 中学2年生 13才
芹 裕輔 39歳 会社経営 息子: 拓哉 小学2年生 8才
早乙女京平 28歳 会社員
(家庭の事情があり、ホストクラブでアルバイト)
浅野エリカ 35歳 看護師
浅野マイケル 40歳 会社員
❧イラストはAI生成画像自作
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる