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秋分の日(風磨の引退試合)
…4
しおりを挟む私は車の窓から空を眺め、あの日の雨が降りしきる夜の事を考えていた。
そして、あの日以来、風磨から何も音沙汰はなかった。
「ヤバいな…
この先で事故でもあったかな」
少しずつ渋滞の様子を見せ始めた現状に、ミチャは小さくため息をついた。
あの日、私のバカみたいな無茶ぶりに、風磨は笑顔を見せてくれた。
今の私の中で、あの時の風磨の笑顔が唯一の癒しとなっている。
肩を震わせて泣く風磨の姿は、エモーショナルな中に情緒的な美しさが入り混じり、男性的でフェミニンで、何度思い出しても胸がチクチクとざわついた。
ミチャは、一体、どう感じているのだろう。
男も女もない風磨の純粋な想いを、真正面から受け止めているのだろうか。
ミチャと風磨の恋愛事情に、私は胸が苦しくて仕方がないというのに。
「ミチャ…
風磨は、今日、ミチャが来る事を知ってるの?
そもそも、私も付いて行っていいのかな」
私がこんなにあの日の出来事に胸を痛めているのだから、いくら鈍感なミチャだって、何かしら考えているに違いない。
あの日以降、仕事で遅くなる日は風磨と会っているのかなって、私はそう思っていた。
正直、そうであってほしかった。
「どうなんだろう。
風磨は知らないと思うよ。
今日のこの試合だって、風磨のお母さんから連絡が来て知ったくらいだから。
風磨の母さんが僕の母さんに話して、ミチャが来てくれたら風磨は喜ぶからって頼まれたんだ。
風磨の母さんが、僕達が行く事を風磨に話してたら、風磨は知ってるのかもしれないけど」
ほら、こんな調子だ。
ミチャに悪気はないとしても、でも、ちょっと冷たい気がする。
「風磨は、ミチャが試合に来る事を喜んでくれるのかな…」
ミチャはしばらく黙っていた。
渋滞で続くテールランプを目を細めて見ている。
「僕に対して風磨がどんな気持ちでいようとも、僕は何も変わらない。
幼馴染で兄弟のような関係を続けていくだけ。
風磨の恋する気持ちには何も答えてあげれないけど、その他の事になら何でも答えてあげたいと思う。
それって、ダメな事かな?」
こんな時、ユーミンの切ない曲達は余計な感情を煽り立てる。
ミチャの鈍感さと純粋な優しさは、ミチャを求める人間にとってはただただ辛いものでしかない。
それは、風磨だけじゃなく、私自身にも言える事。
「ダメな事じゃないと思うけど、風磨は辛いと思う。
ミチャの中途半端な優しさが、風磨の決心を鈍らせてるとしたら?
ミチャのそんな優しさから、自分への愛情を感じ取っているとしたら?
風磨は素直で正直だから、そういう愛情をきっと疑う事を知らない。
だから、私達のこの結婚だって、嘘だってもう見抜いている…」
ダメだ… 泣きそうだ。
半年先の自分が、やっぱり風磨と重なってしまう。
「嘘だって見抜いててもいいんだ…
どんな状況でも、僕は何も変わらない。
風磨の愛に答える事はできないし、僕の風磨への愛は家族的なものだっていう事を分かってもらうしかないんだ。
どれだけ時間がかかろうとね…」
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