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道也の誕生日
…13
しおりを挟む怖いけど、今、私が一番知りたい事。
この流れだったら、自然の成り行きで聞いてもおかしくない…よね?
キスも捨てがたいけれど、でも、やっぱりミチャの真意が聞きたかった。
ミチャは私の質問を聞き終えると、右の口角だけを上げて笑った。
困ったななんて、小さく囁きながら。
ミチャは考えるふりをしながら、ケーキを食べる。
ケーキだけじゃなく、横に置いていたフルーツもどんどん食べ始める。
そして、大きめの苺をフォークで刺して、今度は私の口に放り込んだ。
そんなミチャが何だか可笑しくて、私は酸っぱい苺をモグモグしながら笑ってしまった。
ミチャは自分の分のワインまで飲み干した。
そして、ケーキの最後の一切れを半分に分け、まずは私の口に、そして残りを自分の口に入れる。
私は笑いの神様が下りてきたみたいに、もう笑いが止まらない。
ミチャは、そんな風にケラケラ笑う私を抱き寄せた。
そして、私の耳元でこう囁いた。
「僕はまひるにキスをしたい…
キスしてもいい…?」
いいに決まってる…
決まってるけど…
「ミチャ…
私の質問の答えは…?
それは答えてくれないの…?」
ミチャは優しく私にキスをする。
パンケーキのほんのりとした甘い味が、ミチャのキスの味として私の記憶の中で塗り替えられる。
「まひるの事は大好きだよ…
だから、キスしたいって思った」
私の思考はぐちゃぐちゃでミチャのキスの余韻に侵されている。
私の事を大好きって言った?
でも、それは、いつもよく耳にする常套句。
ミチャはズルい。
大切な事はこうやってキスの後ろ側に隠してしまう。
薄暗い部屋の中は、私達をキスだけで終わらせてくれない。
それならそれで私はウェルカムだけど…
ミチャの腕の中で、真夏のあのキスよりもミチャに溺れていく。
でも、私達の関係は、きっと今夜もキスどまり。
冷静で面倒くさがりのミチャは、キスより先へ進むことはない。
「私はミチャと離れたくない…
ミチャを好きな気持ちも抑えられない…
ミチャに、愛されたい…」
夫婦ごっこなんて、最初から私には無理だった。
でも、ミチャにとっては、今もこれまでもこの先も、きっと夫婦ごっこにしか過ぎない。
こうやって私のためにケーキを作って、私のためにキスをしてくれる。
ミチャの思わせぶりな態度も、私へのささやかな愛情も、それはミチャが夫婦としての一年間の契約を全うしているだけ。
空に浮かぶ風船のようなミチャの掴みどころのない性格は、じわじわと私の心を疲弊させる。
でも、私はやっぱりミチャの本気の愛がほしい。
ミチャを誰にも渡したくない。
桜子さんや、強敵の風磨にだって、絶対に負けたくない。
私はミチャに抱きついた。
抱きついて、ミチャの胸の中に自分の居場所を作る。
そのまま、私達はソファとテーブルの間に倒れ込んだ。
「ほら、まひるが集中すると、怖い事になるって言ったろ?」
「だって、ミチャ…
これが私なんだもん…
ミチャを… 食べちゃっていい?」
ミチャは床に寝転んだまま、真っ白い歯を見せて笑った。
その顔がイケメン吸血鬼に見えて、ますます私の欲情をそそる。
ミチャの体に馬乗りになっている私は、優しくミチャのくちびるを指でなぞった。
「時には、女の子だって、好きな男を襲いたくなる」
私はそんな呪文のような事を唱えながら、ミチャの美しいくちびるに濃厚なキスをした。
ミチャの表情なんて、そんなものどうでもいい。
ただ、私がミチャが欲しいだけだから。
私の貪るような激しいキスを受けながら、ミチャは簡単に体を起こした。
そして、今度はミチャが主導権を握る。
くちびるは重ねたまま、私はミチャに抱きかかえられて、ソファに寝かされた。
私のキスとは対照的にミチャのキスはしとやかで甘美で清らかで、私を病みつきにする。
あ~、きっと、このまま私達は結ばれるんだ…
なんて思ったけれど、残念ながら、私達のある意味ピュアな関係はやっぱりキスだけで終わってしまった。
でも、漠然とだけど、ミチャの心の扉を少しだけ開けた気がする。
ミチャの誕生日は私にとって散々な日だったけれど、二人にとっては確実な進展があったとそう思い込む事にした。
だって、思い込みって大事だから…
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