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ホワイトデー
…2
しおりを挟む「それより、ミチャ…
いろは坂の運転、大丈夫?
かなりのグネグネ道っぽいけど」
私もミチャも絶対的にインドアの人間だ。
こんな事でもなければ、日光とか特に奥日光へ車で行く事はまずはあり得ない。
でも、風景画を描く私としては、実はすごく楽しみでもあった。
奥日光の景色を好んで描く画家は多い。
そして、今日も明日も天気がいい。
私はそんな美しい奥日光の風景の事だけを考えて、ミチャの車に乗り込んだ。
「らしいね。
でも、大丈夫だよ。
車の運転は嫌いじゃないから」
ミチャはカーナビをセットして、笑顔でそう言った。
そして、私達は出発する。
早乙女まひるとしての最後の旅行になりませんようにと、心の中で祈りながら。
が、しかし、いろは坂は尋常じゃなかった。
しつこいようだけど、インドア人間の私達にとって、その坂は経験しないタイプの坂だった。
まずは、坂を上り始める前に、カーナビの地図に現れたいろは坂のぐにゃぐにゃ度に目を疑った。
「ミチャ、このカーナビ壊れてないよね?」
ミチャもその地図を見て、目を点にする。
「壊れてる事を願うしかないな…」
いろは坂は凄かったけれど、その坂を上り切った後は、空気感がまるで違った。
念のために飲んでおいた酔い止めが効いているみたい。
ミチャは、運転する人間は酔わないんだって豪語していたのに、今、ドライブインの駐車場に車を停めて死んだように横たわっている。
そして、私達は、まず華厳の滝へ向かう事にした。
観光名所のその場所は、人が多くてゆっくり滝を見る事はできなかったけれど、とりあえず自分専用のデジカメに写真を収めた。
今の時代、高性能のスマホで写真を撮る事が主流だけど、あまり裕福じゃない私は、スマホは格安品と決めている。
だから、写真はデジカメに撮るのが私の主流だった。
「まひるのそのデジカメって、いつの時代のものなんだ?」
確かに、このデジカメは年季ものだ。
子供の頃、絵が大好きで風景が大好きだった私のために、母が奮発して買ってくれたもの。
データを取り込む容量も少なくて、すぐにパソコンかUSBメモリに落とさないといけない。
USBメモリを使う自体、たぶん、相当、古い代物なんだと思うけど。
「これは、これでいいの…
壊れたら買い換えようと思ってるけど、全然、壊れないんだもん」
ミチャは私からそのデジカメを取り上げると、データに入っている画像を解析し始める。
「これは、まひるが小学生くらいの頃に買ったやつだろ?
そっか…
お母さんに買ってもらったから大事にしてるんだ…」
私はミチャの腕に絡みつく。
「そう…
でも、シンプル過ぎて、色々と面倒くさいけどね」
「でも、機能がシンプルじゃないと、子供のまひるは使えなかった」
私は小さく頷いた。
あの頃の母の優しさを思い出しながら。
「まひる…
このデジカメは身の回りの物を撮る時に使えばいい。
寿命もそんなに長くないと思うから」
ミチャはそのデジカメを私のバッグにそっとしまった。
そして、自分のリュックから、紫色のピカピカ光るデジカメを取り出した。
その真新しいカメラには真っ赤なリボンが結ばれている。
「はい、これは僕からのプレゼント。
まひる特製の美味しかったチョコのお返し。
このデジカメは風景写真を撮るためように作られたものらしい。
お母さんが買ってくれたデジカメはもう大切な思い出の品として、これから先に出会う美しい風景はこの性能のいいカメラに収めればいいよ」
ミチャはズルい…
ミチャを大好きになるなっていう方が難しいよ…
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