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出発日前日
…5
しおりを挟むミチャは何に胸を痛めているのだろう。
きっと、先輩の言葉に、自分の未来を重ねてしまったのかもしれない。
でも、私はミチャを捨てたりしない。
先輩のあの言葉は、鉄の心を持った人間でも傷つくよ…
ましてや、初めて恋を知った生まれたての雛のようなミチャの心は、なおさら…
私はミチャを優しく抱きしめた。
最後の夜になるなんて、これっぽっちも思っていない。
「ミチャ、愛してる…」
ミチャは顔を上げて、私の顔をジッと見つめる。
ミチャの瞳にうっすらと涙が見えるのは私の気のせい…?
「僕は、その百倍、まひるを愛してる…」
明日の準備や、部屋の片付けや、そんなの今はどうでもよかった。
ミチャはこの世の終わりのような切羽詰まったキスをする。
私はそんなミチャが可哀そうで愛おしくて、私の方からゆっくり癒しのキスを返した。
疲れて果てて眠りに落ちるまで何度も抱き合う当たり前の日々が当たり前じゃなくなる現実は、ミチャの心を壊してしまうかもしれない。
私はそんな不安を覚えながら、でも、前へ進むしかなかった。
ミチャが決めた事。
私が決めた事。
それは、きっと大人の選択。
でも、こうやってミチャの胸の中に納まっていると、もしかしたら、本当の選択は離れちゃいけない事だったのかもなんて思えてくる。
ミチャの温もりを、心地よく刻む心臓の音を、そしてミチャの全てを私は体に焼き付ける。
ミチャを忘れない…
そして、ミチャの魂にも、私の全てを焼き付けたい。
ミチャが明日からの喪失感に負けないように、私は何度も愛してると耳元で囁いた。
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