再会した御曹司は 最愛の秘書を独占溺愛する

猫とろ

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秘書はピンチも乗り越えます!

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私は仕事帰りに買ってきたばかりの上下揃いの下着を、ベッドの上に広げていた。

今は仕事着から、ブルーのルームウェアワンピースに着替えていてオフモード。

じっとタグ付きの下着を見つめる。

カラーは迷いに迷って、肌に馴染み感があると言われたライムイエロー。
デザインはキュートさを抑えてレースは少なめ。代わりに、上下ともにフラワーの刺繍が緻密で華やかな大人可愛いデザイン。

「上品で可愛い。これだったら、勝負下着の名に相応しい」

チェックを終えて、丁寧にランジェリーポーチに戻した。
これで一仕事終えたとベッド横のローテーブルに向かい。
腰を下ろして、先ほど淹れておいたピスタチオ・フレーバーのルイボスティーをゆっくりと飲む……って。

「ゆっくり出来ないっ。だめ、色んな妄想をしてしまうっ」

わぁと、ローテーブルのマグカップに手を伸ばさずに、テーブル横のクッションに抱きつく。

「下着がイエローだなんて、黄瀬さんの名前に掛かっているとか、あざと過ぎる? いや、でも。黄瀬さんの家に初めてのお泊まりだし。これぐらい可愛いって思って貰えるよね……?」

一週間ほど前。
私は仕事でミスをした。当然の如く猛省した。しかしその帰路にて、私は山葡萄ジュースをアルコールだと気付かずに飲んでしまい。酔ってしまった。

しかも黄瀬さんに介抱されたと思えば、いつの間にか心のうちをひけらかすだけではなく。
非常に恥ずかしいこともしてしまった。

エッチなことをしたと言う、くっきりとした記憶は残っていても、その他はぼんやり。

いっそ全部覚えていたら良かったかもしれない。

本当に多分だけども。相手が黄瀬さんだから記憶はさておき、あんなふうに素直に色んなことを喋ったのだと思う。

そうだとしても、その真偽を試したいとは思わないし、アルコールは私の鬼門だとはっきりと分かった。

「お酒なんて、もう二度と飲まないっ」

うぅと強くクッションを抱きしめる。

羞恥心でふかふかのクッションはぐにゃっと曲がる。
それでも羞恥心は紛れず。
むしろそれが呼び水となって、ベッドを見ればあの日の記憶が鮮明に蘇る。

──背後から胸とお尻をいやらしく揉みしだかれ、恥ずかしい場所を可愛がれてしまった。
そしてそれらは凄く気持ちが良くて、抵抗する気にもならなかった。
喘ぐたびにお腹の奥が甘く疼いて切なかった。

そこを埋めて欲しいと心も体も思っていたのに、酔いが残っていたせいか、与えられる快感に夢中になった。

そうして果てながら、もっとその先を。
続きをと思った私がいて……。

「~~っ」

足をバタバタさせる余裕もなく、クッションに顔を埋める。

「わ、私、黄瀬さんと出会ってからエッチになってしまったかもしれない……じゃなくて、黄瀬さんのことが好きだから──」

好きな人を求めてしまうのは普通のことだろう。それが学生時代の初恋の人なら尚更だと。
誰にも迷惑を掛けてないしとか、色んな理由を並べて自分を納得させる。

ちょっと気持ちが落ち着いたところでクッションから体を離して、やっと机の上のマグカップへと手を伸ばした。

一口、口に含めばピスタチオの甘くも香ばしい香りが広がりほっとする。

その一連の出来事があり。仕事のミスもひっくるめて、私のことは全て曝け出している。
ここまで来たら──と思い。
黄瀬さんが帰る直前に、自分から家に行きたいと言ったのだった。

そのお泊まりが一週間後。
黄瀬さんは二つ返事で大変歓迎してくれた。
さっきの下着はその日の為の勝負下着だった。

「べ、別にアレなコトだけが目的じゃないし。家に行って私の手料理が食べたいって言う、黄瀬さんのリクエストもあるし。私が黄瀬さんの家に収蔵している、キセイ堂の限定コスメのラインナップを見たいと言うこともあるしね?」

ルイボスティーをごくごく飲みながら、誰かに言い訳をするように独り言が止まらなかった。また気持ちがふわふわしてくる。

浮かれているとは思う。
でも浮かれ過ぎないように、当たり前だけど仕事に支障をきたさないようにと思っていると、スマホが震えた。

マグカップを置いて、スマホを手に取ると画面には黄瀬さんの名前。今日の黄瀬さんは午後から外出して、直帰というスケジュールだったはず。
時間は二十二時を過ぎたころ、何かあったのかなと通話ボタンを押す。

「もしもし。紗凪です。黄瀬さん、どうしました?」

『あぁ、紗凪。夜分に済まない。実は今まで仕事をしていたんだが、先方からお菓子を沢山貰ってしまってお裾分けしたいと思って、今からそちらへ寄ってみても良いだろうか?』

「お仕事お疲れ様です。もちろん寄って下さい! 嬉しいです。でも、せっかくのお菓子、本当に貰ってもいいんですか?」

スピーカー越しに黄瀬さんのくすっと笑った声に『もちろんだ』と言われれると私も微笑んでしまう。

『それにちょっと顔みたいし』

朝、会社で会ってるのに。
そう思いつつ口元はさらに緩んでしまい。私も今すぐに会いたくなってしまった。

黄瀬さんはあと十分ほどで家の近く、前に車を留めたコインパーキングに来ることになった。お菓子は結構な量があるから何かエコバッグを持参して欲しいと、そんな会話をしてから通話を切った。

あと十分で黄瀬さんに会える。

「嬉しいな」

呟いてからスマホを机の上に置き。
エコバッグと防犯ベルが付いた家の鍵を用意して、髪を整えてから家を後にした。

ちょっとぐらい外に出るなら今のルームウェアでも十分だろうと、サンダルを引っ掛けて例のコインパーキングを目指す。
そこはマンションの裏手側にあり、近くにはコンビニがあるが大小のアパートが乱立しており。細い路地もあるけど、今の時間でも街灯が明るい場所だ。

その道を早歩きで歩くと、コインパーキングは目の前すぐにあった。
そこに見知った目立つホワイトの車を見つけて、近寄るとフロントガラス向こう側の黄瀬さんと目が合い、にこっと微笑んでくれた。

すぐに黄瀬さんが車から出て来てくれて、私に近寄る。

なんでもない駐車場での逢瀬。黒いアスファルトに、周りは灰色のビルやコンビニ。大通りからは微かに夜風に乗って、車の走行音が聞こえる。

それでも好きな人に夜に僅かでも会えると思えば、私にはロマンティックで都会のナイトビューよりも素敵に思えた。

「お待たせしちゃいましたか?」

「いや、今着いたところ。来て貰って悪かった」

言いながら私の髪を撫でる、その指にときめく。ふふっと笑うと「本当は俺が紗凪の家に、持って行けば良かったんだけども」とすっと私を後部座席の扉の前へと案内して、その扉を開けた。

そこには桐箱に書かれた『献上・和菓子』や熨斗が付いた大きな箱。
デパートでよく見かける有名パティスリーのギフトボックスが多数。フルーツのカゴ盛りまでもあった。

「こ、これは。壮観ですね」

今日の社長のスケジュールは菓子メーカーとの打ち合わせは無かったのにと、目を見張る。

「先方が俺の社長就任に気を使ってくれてね。お祝いを頂いてしまって。しかもそれが連続で続いてしまった」

その歓迎振りは秘書として誇らしいものがある。しかし、個人として頂くのは食べ切れる量かなと苦笑してしまう。

「お仕事お疲れ様です。皆様良い方で嬉しくなりますね」

「あぁ。明日にこの一部は会社に持って行こうと思うが、その前に紗凪が好きなものがあったら持って行ったらいい。秘書様にもよろしくと言われたしな」

タダで貰うことの罪悪感をフォローしてくれて、お言葉に甘えようと思った。

お礼を言ってからジムにでも持って行けそうな、パウチ入りのフルーツジュレ。
個人的に食べてみたいと思ったレトロ缶に入ったクッキー。あとは黄瀬さんから生ものを頼むと、ツヤツヤのグレープフルーツに小玉のメロンを頂いてしまった。

全てエコバッグに入れてしまえば、ずしりとした重さになった。

「どれも美味しそう。食べるの楽しみです。ありがとうございます」

黄瀬さんはパタンと後部座席の扉を閉めて、良かったと微笑んだ。

「いや。こちらこそ貰ってくれて助かる。運ぶのも大変だしな。それに……」

「それに?」

「紗凪の笑顔が見れたから満足だ。そのルームウェア姿も可愛くて、週末の楽しみが増えた」

「!」

「期待してる」

黄瀬さんは迷うことなく私の頬にちゅっと軽いキスをして、直ぐに離れた。
頬に柔らかな唇の感触と形の良い瞳が私を愛おしげに見る様に、胸がキュンとした。

ドキっとして両手に持つエコバッグを落としそうになる。ぎこちない動きでその場にモソモソしてしまう。

「っ、だ、誰かに見られたらどうするんですか。ここ、外なんですよ」

「俺は別に恥じることはしてない」

明るく笑う黄瀬さん。
それは会社ではあまり見せない屈託なく笑う表情。それを見ると黄瀬さんが同級生だったということ。
私だけが知っている顔だと、お付き合いしている実感が強まって行く。
見惚れていると黄瀬さんが「重いだろ。せめて送っていくよ」と私のエコバッグに手を伸ばしたからはっとした。

「あ、大丈夫です。駐車料金掛かっちゃうし。それに家まで来てもらうと……もっと一緒にいたく、なるから……」

私の言葉に黄瀬さんは真顔になって「いますぐ、週末にならないかな」と言ってくれた。

お互い、そんなことを言うなんて本当に学生時代に出来なかった時間を埋めあっているみたい。
私は大人の恋愛なんてよくわからないけど、これが私達らしい恋愛だと思った。

最後まで送ると黄瀬さんは言ってくれたけど、家はすぐそこだし。防犯ベルもあるから大丈夫だと伝えると、分かったと言ってくれた。

一緒にいたいと言う思いもあったけど、仕事帰りだったから早く休んで欲しかったのだ。

黄瀬さんはコンビニに寄ってから帰ると言って、コインパーキングの入り口で別れた。

重みを感じるエコバッグも苦にもならず。明日の朝はグレープフルーツのサラダとかいいかもと夜の道を歩いていると。

──紗凪。

と、呼ばれた気がして足を止めた。
それは黄瀬さんの声じゃなかった。でも呼ばれたと思ってさっと辺りを見る。

周囲はアパートのビルに飲食店。
電柱の横には何台もの自転車。自動販売機。横に女の人が通ったが、スマホ片手にイヤホンをして私のことなんか見てはなかった。

特に変わったことはない。

「……気のせいか」

気を取り直してまた足を進めると「紗凪っ」と横から名前を鋭く呼ばれてびっくりした瞬間に、何者かに腕を掴まれ。

ビルの間に引き込まれてしまったのだった。
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