バーサーカー戦記 ~転生した文系男子が学問の力で切り開く道~

むじょう

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女性の娯楽

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ブラジュ領は、現代日本と比べたらもちろんの事、その世界の他の社会と比べても、娯楽が少ない。

彼ら自身はそれが普通だと思っているため、そこまで気には留めないが、とはいっても人間である以上、気晴らしは必要だ。
その一つが、腕相撲だったり、鍛錬だったりするのだが、
ブラジュ人も一応は人間の範疇にとどまっている生物である以上、ちゃんとした娯楽もある。

それが、子供に服を着させることであることを、サラ=シャッド=プラジュが証明している。
彼女はケーヴァリンの母親だ。

「ああ、可愛いわね~。
あなたのお兄さんと同じくらい可愛いくてかっこいいわ!
籠手も鉢巻きも似合ってるわ!
途中で取れないようにしっかりと結わえ付けなくちゃね」

全体的に緑掛かった茶色で統一され、幾何学的な模様で覆われている。
ここブラジュ領では、山岳戦が主に想定されており、敵に狙いをつけられないよう、迷彩が施されているのだ。

それでも、少しでもおしゃれに、そして派手にしたいのだろう。
胴紐などの、必要不可欠な装飾品にさえ、邪魔にならない程度に石や鉱石が連なっており、それが各個人の特色となっている。

戦というのは、生死のやり取りであり、ひょんなことで簡単に死んでしまう。
そのため、戦装束は同時に「死装束」でもあるのだ。
人の「死に際」に際して、みすぼらしい恰好であるよりも、立派な姿でいさせたいと思うのは親心でもあり、人情なのだろう。

この日のために、ケイブの身長に合わせて仕立て直された、亡き兄の戦装束を着させられている。

「お母さま、こっちの籠手紐は私のを使うわね!」
「あら、ラナ。それは初めてあなたがゴブリンを狩った獲物の骨で装飾された品じゃない。
記念に大事にしていたものでしょ?」
「だからこそよ!これを持っていると、不思議と獲物が寄ってくる気がするの!
大事な一戦なんだから、きっちりと手柄首を取ってもらわなくちゃね!」
「まあ!なんて弟思いの良い子なの!えらいわ!」

嬉しそうに抱きしめるサラと、ウザがりつつも嬉しさに顔が緩むラナ。
ケイブの二つ上のこの姉も、今回初陣をするのだが、女の子は手柄首を取ることは必ずしも求められない。
ゴブリンの首でも十分とされている。
とはいっても、事実上はほぼ全員が首を取ってくるが…。

目の前のラナは、弟が可愛くてしょうがないのだろう。
ここブラジュ領では、顔に傷がある男がモテる基準だ。
ケイブは端正な顔立ちをしているものの、子供なのに、なぜか怪我を負うほどの無茶をしようとしないケイブは、その点、ブサイクではある。
とはいっても、それはいわば「化粧が下手」である程度だ。

スッピンであっても、母親譲りの整った顔立ちと、精悍さが奇妙なまでに同居しており、
手足がすらっと長く、どのパーツを切り取っても精巧な人形のように均衡がとれている。
何より、無邪気な好奇心と大人びた知性が同居している点も含めて、一種の美術品であるかのように、十分に見るに値する魅力を放っている。

ちなみに、そんな弟を可愛がっているラナも、両親の子供である以上、同様に可愛い顔立ちをしている。
少女から大人へと成長する、なんともいえない妖しい魅力を兼ね備えたラナは、だれもが将来、美女に成長することを確信するだろう。

多くの不幸は、人間関係のいざこざが原因とするのは、たとえ世界が違えども一緒だ。
その点、この家族仲の良さは、感謝こそすれ、疎ましく思うことはないだろう。
ただし、それが度を過ぎればそうもいかない。

「あとは、こっちの紐の結び目にアルト湖を模した真円をかたどったものに変更して…」
「獲った首は、この布で清めるのよ!
それと、ここに引っ掛けを作っておいたから、首を結わえ付けると落とさずに済むわ!」
「…あの、そろそろいいんじゃないでしょうか?」
「いいえ、ケイブ。初陣もまた、「首送りの儀」の一環なんだから、特に準備を念入りにするものよ。」
「そうよ!しっかりやらないと、ブラジュ家の沽券に関わるわ!」
「まだ出陣までは、時間があるし、お父さんには了承を得ているから安心して!」
(愛が重い…!)

勢いに押され、されるがままになるケイブ。
おしゃれは女性の戦いであり、自分が出る幕ではないことを悟ったケイブは、
そのまま、マネキン人形のように、されるがままになったのであった。
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