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最終回「愛をこめて届かぬ貴方に」
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――最終回「愛をこめて届かぬ貴方に」
(御堂、俺に力を貸せ)東の願いは即時執行された。彼の瞳は鈍く蒼く光る。
(ぼくの眼を貸しましょう)御堂は語り掛ける。(柊さんを守ってください。ぼくも彼女を失いたくはない)
「ひこね、タカナミを貸してくれ」東班長はまるで睨んでいるかのような表情をひこねに向ける。ひこねはタカナミを肩から下ろし、東に投げ渡した。東はひこねの方を見もせず受け取り、両手にタカナミを携えてカンニバルに対峙した。両手の指でタカナミの持ち手に搭載されたボタンを操作する。タカナミの銃身から長手方向に、水の束が屈折してチェンソーのようになる。タカナミの近接戦闘形態。未だかつて誰も使わなかった機能。(カンニバルは右手から攻めてくる)御堂は言う。東は距離を詰め、向かって右から左へと流れるようにカンニバルのトルソーを切りつける。カンニバルの拳は空を切る。(次は左足、身体を回転させて横に蹴る)東は上に飛び、チェンソーで頭部を切りつけながらカンニバルの背後へと回る。(カンニバルは前方へ向かう)東は、逃げるカンニバルの背に向けて水のレーザを放つ。(カンニバルは左に向きを変える。こちらを向く)東は間髪入れずに、水の弾丸を連射し、カンニバルの顔面を破壊する。(それでもカンニバルは再生する)それでもカンニバルは再生する。右の掌で胸に触れる。(カンニバルは右の拳を振り上げて背後にいる。風が吹く)東は踵を軸に回転しながら後ろに倒れこみ、レーザを照射したまま、タカナミを右に、左に動かす。水流は空間を切断し、カンニバルの身をも断ち切るが、カンニバルの肉体は切られた端から再生をはじめる。(やはり火力不足だ)(そんなことはわかっている)
「ひいらぎ、聞こえているか?」東は大声で叫ぶ。「聞こえているな」
ひこねは東の声を聴き、このみのもとへと駆け寄る。戌井はその道を確保し、西城は立ち上がり身体を振るわせて葉っぱを落とす。「東さんに合わせます」耳に手をかけ、つぶやく西城は、満身創痍でしかない。だが、右手で腰のベルトに触れ機能変更を宣言する。コウガは白色の光を放つ。
「東班」東は鼻から息を吸う。「俺に従え」彼の瞳は蒼を越して宙色に変わる。
(カンニバルは瞬間移動で、懐に飛び込んでくる)西城は右の拳で、カンニバルの側腹部を殴る。東は水の刃でカンニバルの右肩と左足を切りつける。(右手で胸に触れて、3メートルほど後方に移動する。カンニバルは近距離を保ちたい。大技が来る)東は御堂の指示の方向に、水の束を放ち、反力でカンニバルとの距離を取る。西城は足を踏み鳴らし、土の壁を形成する。カンニバルは踏み込み、水の流れをものともせず、東に突進していく。(左に来る。左でフェイントをかけて上に飛べ)カンニバルの身体は東の足元を通り過ぎていく。風が吹くが東の体勢は変わらない。背後に向けて水の弾を放ち、カンニバルをけん制する。西城はその左からカンニバルに近づいていき、振り返った鼻面にポインタを付与する。「それだけじゃない」右の拳を開き、宣言を行う。「ポインタチャフ散布。ポインタオン。オリエント指定。スート選択。スペード」西城のばら撒いた紙片から、カンニバルの身体へ向けて、各々が干渉しない刃が放たれた。石の刃らはカンニバルの身体にぶつかり崩壊するものもあれば、表層に傷をつけ、徐々に中の赤みを露呈させていくものもある。それは再生が追い付かないほどの斬撃であり、カンニバルの動きを止めるには充分であった。(右手が動いている)東は叫ぶ。「戌井! カートリッジ!」戌井はカートリッジを東に向けて投げるが、それは中途半端なところに向かって飛んでいく。東はそれをタカナミで撃つ。魔力の暴発が起きる。B地点のカンニバルが衝撃を受け、東―柊を結ぶ線上に倒れこむ。
「柊、頼んだぞ」東はタカナミの側面同士を合わせ合体させる。魔力出力機器が直列に繋がり、その出力は単純に2倍となる。ツインバスターライフル。その威力にカンニバルの身体はこのみのもとへ飛んでいくしかない。彼女との距離は10メートル。カンニバルは両手を胸に当てようとするが、水の束がそれを阻む。
彼女のかすむ瞳に、カンニバルの身体が映る。(私は彼を止めなければならない。持つべき者の責任を果たさなければならない)その意志が彼女の右手を真っ赤に燃やした。熱が実体を持つほど高密度に圧縮されている。このみは右手を後ろに振りかぶる。頭の片隅で声が聞こえる。爆熱。焔の勢いが増す。姿勢を低くして、タイミングを待つ。カンニバルとの距離は5メートル。彼女は大地を蹴り、右手を前に掲げる。カンニバルの後頭部を掴む。衝撃で大地にひびが入る。カンニバルの仮面にもひびが入る。あの少年の顔が垣間見える。だが、このみは力を弱めない。「これが責任だ」そうつぶやいて、カンニバルの頭部を上に掲げる。東はそれに合わせる。このみは奥歯を噛む。心の痛みが彼女の魔法を強くする。ヒートエンド。彼女の右腕は赤く爆ぜ、カンニバルの頭部はそれに巻き込まれた。
(御堂、俺に力を貸せ)東の願いは即時執行された。彼の瞳は鈍く蒼く光る。
(ぼくの眼を貸しましょう)御堂は語り掛ける。(柊さんを守ってください。ぼくも彼女を失いたくはない)
「ひこね、タカナミを貸してくれ」東班長はまるで睨んでいるかのような表情をひこねに向ける。ひこねはタカナミを肩から下ろし、東に投げ渡した。東はひこねの方を見もせず受け取り、両手にタカナミを携えてカンニバルに対峙した。両手の指でタカナミの持ち手に搭載されたボタンを操作する。タカナミの銃身から長手方向に、水の束が屈折してチェンソーのようになる。タカナミの近接戦闘形態。未だかつて誰も使わなかった機能。(カンニバルは右手から攻めてくる)御堂は言う。東は距離を詰め、向かって右から左へと流れるようにカンニバルのトルソーを切りつける。カンニバルの拳は空を切る。(次は左足、身体を回転させて横に蹴る)東は上に飛び、チェンソーで頭部を切りつけながらカンニバルの背後へと回る。(カンニバルは前方へ向かう)東は、逃げるカンニバルの背に向けて水のレーザを放つ。(カンニバルは左に向きを変える。こちらを向く)東は間髪入れずに、水の弾丸を連射し、カンニバルの顔面を破壊する。(それでもカンニバルは再生する)それでもカンニバルは再生する。右の掌で胸に触れる。(カンニバルは右の拳を振り上げて背後にいる。風が吹く)東は踵を軸に回転しながら後ろに倒れこみ、レーザを照射したまま、タカナミを右に、左に動かす。水流は空間を切断し、カンニバルの身をも断ち切るが、カンニバルの肉体は切られた端から再生をはじめる。(やはり火力不足だ)(そんなことはわかっている)
「ひいらぎ、聞こえているか?」東は大声で叫ぶ。「聞こえているな」
ひこねは東の声を聴き、このみのもとへと駆け寄る。戌井はその道を確保し、西城は立ち上がり身体を振るわせて葉っぱを落とす。「東さんに合わせます」耳に手をかけ、つぶやく西城は、満身創痍でしかない。だが、右手で腰のベルトに触れ機能変更を宣言する。コウガは白色の光を放つ。
「東班」東は鼻から息を吸う。「俺に従え」彼の瞳は蒼を越して宙色に変わる。
(カンニバルは瞬間移動で、懐に飛び込んでくる)西城は右の拳で、カンニバルの側腹部を殴る。東は水の刃でカンニバルの右肩と左足を切りつける。(右手で胸に触れて、3メートルほど後方に移動する。カンニバルは近距離を保ちたい。大技が来る)東は御堂の指示の方向に、水の束を放ち、反力でカンニバルとの距離を取る。西城は足を踏み鳴らし、土の壁を形成する。カンニバルは踏み込み、水の流れをものともせず、東に突進していく。(左に来る。左でフェイントをかけて上に飛べ)カンニバルの身体は東の足元を通り過ぎていく。風が吹くが東の体勢は変わらない。背後に向けて水の弾を放ち、カンニバルをけん制する。西城はその左からカンニバルに近づいていき、振り返った鼻面にポインタを付与する。「それだけじゃない」右の拳を開き、宣言を行う。「ポインタチャフ散布。ポインタオン。オリエント指定。スート選択。スペード」西城のばら撒いた紙片から、カンニバルの身体へ向けて、各々が干渉しない刃が放たれた。石の刃らはカンニバルの身体にぶつかり崩壊するものもあれば、表層に傷をつけ、徐々に中の赤みを露呈させていくものもある。それは再生が追い付かないほどの斬撃であり、カンニバルの動きを止めるには充分であった。(右手が動いている)東は叫ぶ。「戌井! カートリッジ!」戌井はカートリッジを東に向けて投げるが、それは中途半端なところに向かって飛んでいく。東はそれをタカナミで撃つ。魔力の暴発が起きる。B地点のカンニバルが衝撃を受け、東―柊を結ぶ線上に倒れこむ。
「柊、頼んだぞ」東はタカナミの側面同士を合わせ合体させる。魔力出力機器が直列に繋がり、その出力は単純に2倍となる。ツインバスターライフル。その威力にカンニバルの身体はこのみのもとへ飛んでいくしかない。彼女との距離は10メートル。カンニバルは両手を胸に当てようとするが、水の束がそれを阻む。
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