呪い子と呼ばれた娘の呪いをさっさと解いて、自由気ままな生活をさせてあげたいです

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第1章 I

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「カイトさん、私に剣術を教えてください!」

この家に来てから1週間たったこの日、俺はカイトさんに相談をした。

「どうしたベルグ殿、藪から棒に?」

「私達もいつまでもカイトさん達に頼ってばかりではいけません、いつかは私とセラは自立しなければなりません、私が強くなればきっと外の世界でも生きていける、そう思ったからです。」


実際そうだ。今まで貴族だった私は剣よりもペンを握っていた回数の方が多い。戦闘は守護騎士に守ってもらったいたからだ。
そして、カイトさんは素人の私から見ても強いとわかる。
食料調達では、自分より何倍も大きい魔物を無傷で狩ってくる。恐らく、ここに来る前はさぞ強い冒険者だったのだろう。

「....その、なんだ....俺は今まで自分の剣術など教えたことなどなかったからな...お粗末な感じになるかもしれないがいいかな?」

「はい!、教えてもらえるのであればなんでも構いません!、よろしくお願い致します」







「あの、マリアお姉様......私に魔術を教えてください...」

「あら、どうしたの?、魔術に興味を持ってくれるのは嬉しいけどセラちゃんはまだ5歳だし....」

「私、弱いから.......だからお父様にも迷惑をかけて、私が魔術を覚えれば.....私が強くなればお父様が怪我をすることもないって思ったから....」

「んーー、でも魔術って私でも12歳の時に初めて使ったしねぇ、5歳なんてまだ魔力が目覚めてるかどうか分からないから、どうとも....」

「それでも、お姉様!、私にお父様を守れる力を教えてください!」

「....分かったわ、本当にセラちゃんは強いわね。じゃあ明日から私の魔術を教えてあげる」






「どうしたベルグ殿!、その程度で倒れていたは到底セラ殿を守れんぞ!」

「はいっ!、すみません師匠!」

カイトさん、もとい師匠はまずは体力作りと言い、森をひたすら走っています。1日5km、その後は筋トレ。そして剣の素振り。これが一日のメニュー。とりあえずの目標らしいです。
 
「よし、今日は終わりだ、初日にしてはよくやった方だが、どうかね、続けていけそうか?」

「はい!、続けるに決まっています」


「....よく言ったぞ!、さぁ、マリアとセラ殿のご飯を食べに行こうじゃないか」







「まずは魔術について学びましょう。セラちゃん、魔術とは何か説明できますか?」

「え、えっと.....火とか氷とかを出して........」

「分からなくて大丈夫よ、じゃあ順番に説明するね」

「魔術とはこの世界のあらゆる場所に漂う魔素という物資が人が成長していく過程で体内で吸収され魔素が蓄積すると魔力という物質に変りその魔力を使う現象のことを言います。
魔素に関してはあまり詳しいことはわかっていないんだけど魔素が人の体内に入ると7つの属性に変わると言われていて、セラちゃんが言った火と氷、あと風、雷、地、聖、闇の属性が存在するの。火は正確に炎、炎と氷と風と雷と地はそのままその属性を操ることが出来るの。」

「聖は回復の属性。私は使えるけど聖を持っている人は結構珍しいくてね、教会の司教クラス以上の人なら普通に持ってるけど一般人にはとても重宝されている属性なの。」

「そして闇、これはあってないような属性。これは人が使用することが決して出来ない属性。これを持っているのは魔族と呼ばれる者達のみ。魔族は外見は人ほとんど一緒だけど角が生えてたり尻尾が生えてたり少し肌が黒かったりって感じね。でも魔族は聖属性が使えない。聖の回復魔術は奴らにとっては毒みたいな感じ、私達も闇魔術は毒。だから7属性と言ってもほとんど6属性みたいなものよね」

「次に魔術にはレベルがあってね、一番下が初級位、次に中級位、上級位、特級位、超級位、そして1番上が神級位。この6つがあるの。勿論上の位が上ほど威力も上がる、けどそれだけ必要魔力量が増える。だから人によっては使える限界がある。魔力量は成長とともに増えるって言ったけどずっとじゃないの、これも個人によって違うけど平均は20代まで。私は魔素が身体に合ったからここまで強くなれたの。多分セラちゃんも適応してると思うから神級位はさすがに無理だと思うけど超級位までなら覚える事ができるかもしれないわね。
....えっと、少し長い説明になっちゃったけどここまでは分かったかしら?」

「んんー??........難しいです....」

「まぁ、普通魔術って12歳から学ぶものだしね、ゆっくり学んでいきましょう」

「はい!」














「だから言っているだろセラ、危ないのは全部お父さんがしてあげるから....」


「嫌です!、私だって強くなりたいんです!」


「まぁまぁベルグ殿、セラ殿だって真剣なのだ。」


「ですが......セラはまだ5歳ですし、マリアさんでも魔術は12歳からと....」

まさかセラも強くなりたいと思っていてとは....
娘がやりたいと言ったことは是非やりさせてやりたいのは山々なのだが....やっぱり心配出しなぁ....


「ベルグさん、確かに5歳の子には厳しいと思いますし、身体に危険が伴う事があるかもしれません。
ですが、私自身も8歳から魔術を学んでいたこともあったので、魔術が危険な事は誰よりも知っていると自負しています。
そして、先程セラちゃんの言った通り、貴方の為に強くなりたいと思っているんです。......私からもどうかお願いします、危険なことは絶対にさせません。」

マリアさんがそう言って私に頭を下げた。

「俺からも頼む!、マリアは優秀な魔術師な事は俺がよく知っている。決して危ないことはしない。.....確かに俺はあまり魔術ってのがよく分からないが、それでもセラ殿がどれだけ真剣なのは分かる。そんなセラ殿の思いをどうか信じてくれないだろうか」

マリアさんに習い、カイトさんも頭を下げた。
.....セラが真剣なのは分かっている。

「....分かりました。その代わりセラ、ちゃんとマリアさんの言うことを聞いて、言ったからには最後まで頑張るんだぞ」

「ありがとう、お父様!」


今でも私の娘はよっぽど強いようだ。こんな私なんかより....いや、弱気になってどうする。セラも同じことを思っていたんだ。私だってセラを守れるようにかならず強くなってみせる。


「師匠(お姉様)!、明日もよろしくお願いします!」













あれから5年の月日が流れた。私は35、セラは10歳になった。


「さぁ、卒業試練だベルグ殿!、見事やつを倒してみろ!」


「はい!、師匠!」

私は師匠の最後の試練を受けていた。目の前にはワイバーンと呼ばれる飛龍の一種。師匠なら一瞬で倒せるような敵だ。ワイバーンは龍の中でも平均ぐらいの強さらしい。

「氷よ、纏え!」

この5年間で私もまともに戦えるまでには育ててもらった。そして、私は氷の属性が適性にあったらしい。
魔術に関して疎くても人はひとつ以上の属性を持っているらしい。師匠は地の属性を持っており、私達は剣士なので属性はひとつ程度が限界だが魔術師ともなると複数持てるらしい。
実際にマリアさんは炎、風、、雷、聖の4つの属性を持っている。四重フィーアの魔術師と呼ばれるいるらしい。そして、セラだが....闇以外の全ての属性が適性らしく六重ゼクスの魔術師と呼ばる者らしく、流石の私でもどれほど規格外かがわかった。だが、それ以上に嬉しかった。マリアさんも師匠も驚いていたが直ぐに喜んでくれた。セラも嬉しそうだった。まさか娘とこんなに差ができてしまったが、私は剣術を極めた。セラとは違う形で俺も最強を目指す。

氷纏斬アイシィール

剣に氷を宿しその斬撃をワイバーンに飛ばした。
ワイバーンは真っ二つに切れ、切られた部位は完全に凍っていた。この攻撃は食料の保存にも役立つ。切ると同時に冷凍保存まで出来る便利な技だ。斬撃を飛ばすのは師匠に教えてもらったが、この技は私のオリジナルだ。他にもいろいろな技を教えてもらった。師匠のおかげでここまでこれた。

「よくやったベルグ殿!、これでこの森では敵無しだろう!」

「師匠!、という事は!」

「あぁ....約束通り、案内しよう」


ここに来て5年がたった今でも、セラは治らない。
マリアさんも何とか頑張ってくれていたのだが、セラは魔術耐性が強いのか聖の魔術がまったくと言っていいほど効かなかった。
しかし、原因はそれだけではなかった。

「いいベルグさん、セラちゃんのあの呪い、間違いなく闇魔術のものよ。しかかなり高レベルの魔術師による呪いよ。普通の方法ではまず解けないわ。」

セラを助ける方法はただ一つ。とあるモンスターの涙。
師匠がこの森で敵無しと言っていた。
ある1種を除いて........




圧倒的存在感でそこに君臨するは、全身真っ白なドラゴン。先程私が倒したワイバーンと比べる気すら無くなる。
この森の最深部。師匠達の家があるさらに奥。そこに飛びえ達1つの山。高さは1000m程。....ここに来るまで魔物の1匹も見当たらなかった。

《........何者だ?、わが領域に立ち入る愚か者は?》

「........突然来たのは謝罪しよう。だが、私にも理由がある。どうか聞き入ってもらえないだろう
か?」

《ふん、貴様がどんな理由で来たか知らんが私が応じる理由がない。早々に立ち去れ....でなければ》

その瞬間、ここ一帯の空気が変わった。
ドラゴン族には龍気と呼ばれている技がある。
それはドラゴン族が戦闘を行う合図ともされており、この龍気に格下の者が浴びれば戦闘にすらならないほどだ。
だが、私は師匠の特訓によって耐えられるようになっていた。

(けど、あれ.....思った程ではないのか?)

確かに龍気によるドラゴンの圧は感じるのだが、聞いていた程辛いものではなかった。
しかし、慢心してはいけない。これでようやくマウンドに立てたのだろうと思う。

《ほう、我が龍気を耐えるか。少しは出来るようだな、だが、その余裕がいつまで持つかな?》

更に龍気が強くなった。
これ程ドラゴンというのは規格外なのか。同じ竜であるワイバーンとはレベルが違いすぎる。
いや、これが本物の龍なのだ。.....私はこれに挑もうとしているのかと思うと、一瞬慄いてしまった。

《ハハハ!、恐怖で声もでぬか!》

そして、ドラゴンはそんな一瞬の隙を見逃さなかった。次の刹那、私の両腕が無くなっていた。
恐らく今のは風魔術の超級位、風神之刃ラファーガエッジだろう。
不可視の風の刃を飛ばすことができ、まず初見では避けることは出来ないだろう。
......私はそれをくらってしまったのだが、私はこの技は初見ではない。この魔術ならマリアさんも普通に使っていたし、セラだって魔術を習い、2年程で使っていた。

《........貴様、何故両腕を切断されて生きている?》

......これはドラゴンにとっての挨拶がわりなのだろう。そうだ、私はそんな遊びの技をくらってしまったのだ。初見なら仕方ない。だが私はどうだ、この5年で一通りの魔術を見たではないか!
相手が最強種のドラゴンという相手に怯んだ結果がこれだ。.......やはり私はまだまだ弱い。
超級位の魔術を避けるどころかダメージをおってしまった。

《まさか!、我の最強の魔術で死なぬというのか!》

ドラゴンの本気がこの程度なわけが無い。
最強種だ。神級位の魔術を使ってもおかしくはない。流石に私も神級位は見たことがない。何故ならマリアさんですら覚えていなかったのだから。

《だが!、既に貴様は瀕死、たとえいくら貴様がしぶとくても、そう長くは!》

......あぁ私はそんな相手に挑もうとしていたのか。
マリアさんよりも、そして師匠よりも格上の存在に。
いや、負けるなんて思ってはダメだ。こいつを倒さなければセラが死んでしまう。

《.....な?!、貴様!、何故腕が生えてくるのだ?!》

.....もう何も出来なかった私ではない。

《ッ!、仕方ない!、もう一度、風神之刃ラファーガエッジ!》

.....負けるなんて思わない。

《ば、馬鹿な!完全に無効化しただと?!》

.....もう、怯えたりはしない。

《ふ、ふざけるな!、我が最強の魔術、超級位の、しかも我が風神龍の最高の魔術なのだぞ!貴様は一体何者なのだ!》

......今の私は、強い。

《ひっ、ひぃぃぃぃ!!!!》

「......悪いが本気でいかせてもらう。最強種であるドラゴンに俺の本気がどれだけ通用するか、試させて....」

《ごめんなさい!、許してください!、降参します!だから攻撃しないでください!》

「もら......う?........は?、どういう事なんだ?」

《ほんと調子のっちゃってすみませんでした!だから攻撃しないでください!殺さないでください!》

???、何故だ?、戦おうと意気込んだ途端龍気が収まり、そして、目の前のドラゴンがみっともなく五体を地につけていた。

《我.....いや、わたくしの宝が目当てですか!、なら全て差し上げます!、だからどうか命だけわぁぁ!》

.....なんだか、馬鹿らしくなってきたぞ。
ドラゴンってプライドの塊でできた生物じゃなかったのか?
これじゃあ見る影もない。

「........いや、宝はいらない。その代わり....」

《やっぱりわたくしの体目当てですよね!やっぱりそうですよね!、うわぁぁぁぁぁあん!!!、やっぱりころされるんだぁぁぁ!!》

「違う!、変な言い方をするな!....私が欲しいのは君の涙だ」

《涙ですか!、今まさに出しているので死ぬまでだし続けろってことですか!その後殺すんですか!うわぁぁぁぁぁぁん!、!」

「........」

いや、確かにこの魔物は厄介だな。全く手も足もでない。こんな魔物は初めてだ。
喋る魔物すら初めてだったが、ここまでどうすればいいのか分からないは初めて見た。

「ベルグ殿!、急に龍気が止んだが大丈夫か..........は?」

私がこのドラゴンをどうしようかと考えていると、師匠が来てくれた。恐らく私を心配して来てくれたようだが、先にこのドラゴンが目に入ったようだ。
師匠の顔が表現し難い顔になっていた。

「ベ、ベルグ殿?、この状況は一体?」

「私が知りたいですよ師匠......戦おうとしたら急にこうなりまして.....」

私はここに来てこの状況になるまでの1分ぐらいの出来事を師匠に話した。

「........ベルグ殿、少し....その戦おうとした瞬間のベルグ殿を見せてくれないか?」

師匠がまさかという顔をして、私にそう言った?
何か師匠は分かったのだろうか?
とりあえず、私は師匠の言った通り、私がドラゴンへ挑もうとした時の自分を再現した。

《ひぃぃぃぃぃぃ!!!、殺さないでくだざい!!!》

「.......これは....予想以上に凄まじいな....」

すると、再度ドラゴンが怯え、師匠は驚愕していた。
いや.....全然私は意味がわからないですけど....

「ベルグ殿......まだ分からないという顔をしているようだが.....」

「はい、未だに検討がつかないのですが...」

「......ベルグ殿、正直に言うと、ベルグ殿は強くなりすぎてしまったようだ」

「.......へ?」

「最早この世界でベルグ殿に勝てるものはいないだろう、たとえ七大魔龍ですらよゆうで勝てる程に。.....まぁ、その一角は今まさにこうなっているわけだしな」

んんん???、ちょっと師匠の言っている事が理解できないぞ??、というか七大魔竜って言う言葉を初めて聞いたのだが......その一角を私が倒した??
まさか、このドラゴンがその七大魔龍の一角ってことなのか?

「......そう言えば!ベルグ殿!、急いで帰るんだ、セラ殿の病が急に進行したのだ!」

「!?、それは本当ですか師匠!?」

セラの病が急に何故?!、しかし今まではマリアさんのおかげで進行を遅くしていたはずだ。
だが、まだタイミングが良かったと言えばいいのか。既に目標は達成している。だが.....
.....これは流石にのんびりはしていられないか。
今は早くセラにこのドラゴンの涙を持っていかなければならなかった。

「という事で、もう面倒くさいので、君もついてきてもらいます」

私はドラゴンにそう告げた。また涙よこせと言ってもさっきのようになると面倒なので、それじゃあこのままドラゴン本人を持っていこうということに。
更に、乗せてくれればかえりも楽になるだろうという考えなのだ。

《....えっと、ついて行ったら殺すとか.....》

「はいはい分かった、殺さない、殺さない。だから大人しくついてこい、それと、私達をその背に乗せろ」

《はいぃぃぃぃ!よろこんでぇぇ!!》

「.....ベルグ殿、少し性格が変わっていないか?そんな言葉遣いをベルグ殿から聞いたことがないのだが」

「....私だって怒る時には言葉遣いだって変わります。ここで師匠達と暮らしてからは心も随分穏やかにはなりましたけど、今はあの時程ではないですが、無性にイライラします」

「そ、そうなのか...」

これ程の気持ちは久しぶりだ。今は早くセラに会ってあげたい。
思えばセラの為に怒るのはこれで二度目だな。
次にまたこのドラゴンがよけいな事をしたらその時は流石に殺ってやろう。

《ひぃぃぃぃぃぃ!!!!!》

「べ、ベルグ殿??、なんだか殺気のようなものが...」


「ほら、このまま真っ直ぐ北に飛べ」

《はいぃぃぃぃぃ!!よろこんでぇぇぇ!!」

「ベルグ殿......」












「セラ!、大丈夫か!」

帰りは流石ドラゴンという事だな。私が走るよりは少し早く帰ることができた。
直ぐに家に入り、セラを見ると所々体がゾンビのように腐敗しており、隣にいたマリアさんがなんとか魔術で和らげているようだが、セラの顔が苦しそうだった。
くそっ.....これが呪いか.....
だが、お父さんが今救ってやるぞ。

「ごめんなさいベルグさん.....私の魔術では、今はこのぐらいしか.....」

「いえ、セラを呪いから守っていただいてありがとうございました.....龍の涙は調達できました。どのように使えばいいのでしょうか?」

「!?......やはり持ってきたのですねベルグさん.....では、後は私に任せてください」

「お願いします.....セラを救ってやってください」

マリアさんは頷き、何かの魔術の準備をしていた。
マリアさんの両手からは魔法陣が浮かんでおり、その両手をセラに向けていた。

「龍の涙は最高の万能薬とされていますが、完全にそうとは言えないのです。確かに、飲めば外傷は部位欠損、そして呪い等などを完璧に治療ができます。しかし、そんな便利なものが簡単に...というわけがありません」

「龍の涙による超回復の後.....9割以上の確率で、死が待っています」

「.......待ってください、それでは飲めば死ぬと言ってるようなものじゃないですか!」

9割以上で死?、生きれる可能性があるとはいえ、まともな人間が信じて行う確率ではない。

「それに!、セラはまだ10歳の子供です!、体力的にも限界があるかも知れないのに!」

「その為に私がいるんです」

マリアさんはそんな狼狽した私を一喝した。

「今から行う魔術で少しでも生存率を上げます。それでも、およそ4割ほど......後はセラちゃん自身の戦いです」

「.......何故、この薬の詳細を教えれくれなかったのですか?」

マリアさんの魔術ですら生存率が半分にも満たない....こんな事なら、もっと他の薬を....

「ベルグ殿、はっきり言おう。この世界に龍の涙以上の治療薬は存在しない」

師匠が私にそう告げた。

「ベルグ殿が考えている物などこの世には存在しない。....分かったなら今はセラ殿を信じるのだ」

「......そんな事、納得するわけないじゃないですか!、師匠達を信じてこの5年頑張ってきました!、辛い修業も、全てはセラのために.....やっと念願の物が手に入り、セラが助かると思ったら!」

そうだ、私はこの5年を全てセラのため。憎き呪いからセラを助けてやるために生きていた。
ここで師匠達と会う前はいつ来るかわからない死に恐怖していた。
......私の心が先か、セラの体が先か。

「師匠達が知らないだけじゃないんですか!、きっと他にも治療薬が....」

「ベルグ殿!!!」

私が放ったこの険悪な雰囲気の空間で、突如、師匠の声が響き渡った。

「では最初に俺達がベルグ殿に龍の涙は万能薬だか死ぬ可能性があると言っていたらベルグ殿は素直にそれを取りに行ったのか?」

「.....言っていれば、私は...」

「今のベルグ殿の姿を見ると、言わなくて正解だったと思うがな。」

.....確かに、5年前にこの情報を知っていれば、有無を言わずに、旅に出ていただろう。
だが、そうしていたら、今のような強さは得られなかった。

「.....ベルグ殿、現実を見よ。たとえ龍の涙以上の万能薬があるとしても、今からではとても間に合わないだろう。....いつまでも子供のようにうじうじするでない」

しかし、この5年は私にとっても苦痛であった。
いつ進行するかわからないセラの呪いに脅え、修行を開始し1年で私は強くなったと奢り、1度、無断でドラゴンの元へ行こうとしていた。
.....その時はその道中の敵ですらまともに相手ができず、師匠達が来なければ、私はまた死んでいただろう。
だからそれからの4年は師匠達を信じ、修行に明け暮れた。
........そんな私を、セラを、普通に接してくれ、信じてくれて、笑顔で助けてくれた師匠達を私が信じなくてどうするのだ。

「.....セラを頼みます」

「はい、任せてください」

マリアさんは引き続き、魔術の準備をしている。
セラの様子は満身創痍だ。まともに声も発せないようで、既に身体の7割近くが腐敗していた。

「ベルグ殿、マリアを、そしてセラ殿を信じようではないか!」

マリアさんも師匠もそして私も、出来ることはやったつもりだ。後は.....

「セラ.....頼む、生きてくれ.....」

「私の魔術が完成しました、ベルグさん、龍の涙をセラさんに飲ませてください」

私は言う通りに、持ってきた龍の涙をセラに飲ませた。その瞬間、マリアさんの魔術の魔法陣も起動したのだ。これで、龍の涙の副作用を緩和させ、生存率を少し高めることが出来た。
本来なら、飲んだ瞬間、副作用で激痛に襲われるらしいが、セラは先程よりも苦しんでいる様子はなかった。
しかし.....4割。私の頭にその数字が何度も浮かんでくる。確かに本来の確率からすれば十分高くはないっている。
これもマリアさんの、そして、この薬を得るため手助けをしてくれた師匠のおかげだ。
そんな2人を持ってしてもたった4割。
本当に助かるのだろうか........

「......いや、セラは絶対に助けるんだ!」

ここで私が弱気になってどうするのだ!
今にも呪いに飲み込まれそうなセラは決死の覚悟で頑張っているのだ。
私が弱気になってどうするのだ!

「早く、帰ってきてセラちゃん!」

「セラ殿!、いつも元気であったセラ殿はどこにいったのだ!」

マリアさんも師匠も私のように応援をしてくれている。セラ!、私の他にもセラを大事に思ってくれている人達がいるんだ!頼む.....神様.....








セラに龍の涙を飲ませてから30分、急にマリアさんの魔術の魔法陣が先程よりも強い光で輝き出した。
私達3人はあまりの光に目を瞑ってしまった。
そして、再び目を開けると光は消えていた。
しかし、セラの様子に変わりはない。一瞬悪い予感がしたが、それは杞憂に終わった。
既に顔以外のほとんどの部分が腐敗していたが、その顔から下にかけて、腐化が解けていった。
それは30秒程でセラの身体は元に戻った。
そして、帰ってきてからは見ていなかったセラの瞳が見えた。

「!?、セラ!、意識はあるか!」

私は勢いよく、セラを抱きしめた。
普通病気から目覚めてすぐの人にするような事ではないのだが、それほど私は心配だったのだ。
だが、セラはこの呪いに勝ったのだ。セラは本当に頑張ってくれたのだ。

「......お父様ぁぁぁ!!!」

「セラ!.....本当に良かった」

我が子は治療不可能な呪いに、そして、龍の涙に勝ったのだ。







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