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断罪
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関係者を集めた話し合いは、パーティに欠席していた侯爵夫妻、子爵夫妻の召喚状を送り、慌てて駆け付けた両夫妻が揃ってから行われた。蛇足であるが、エキナセナ伯爵夫妻は出席していたので別室に待機だった。
結論から言えば、会場で断罪を宣言したディーグ・ノースボルド侯爵令息は廃嫡、除籍、不貞相手であるミシュア・オレガノ子爵令嬢は除籍後に修道院送り、シャーリー・エキナセナ伯爵令嬢は冤罪だったためお咎めなし、2人の婚約は解消となった。
場は主にエラルドが仕切ったが、予想通りと言えば予想通りに、礼儀もなく勝手な発言を繰り返し、叱責されながら反省もせず。自分の行いは正当であると最後まで主張していた。
侯爵夫妻は元侯爵令息の弟である次男が病弱であるとのことで、欠席もそういった理由からだった。子爵夫妻は馬車の事故による遅刻だったとのこと。
しかし、両夫妻とも良識と道徳を兼ね備えた人物たちだったので、話しは当人たちを除けばスムーズにいったと言ってもいい。
私への不敬を知ると、それはもう顔色は真っ青を通り越して真っ白で、夫人は気絶するほど。財産と爵位の返上を申し出るくらいの潔さに、当人たちの罰も妥当とはいえ軽いものではないしということで、手打ちにすることにした。エラルドは最後まで渋っていたが。本来なら、軽く済ませていい事案ではないことは勿論理解している。
「…機嫌悪そうね?」
「そりゃあね。正直甘い処分だと思うし」
「分かってるけど。でも、これからこの国の一員として生きていくなら、特に良識ある貴族に必要以上の罰を与えたくはなかったの」
「だろうと思って、何も言わなかったさ」
肩を竦めるエラルドに、苦笑を返す。
それにしても、問題は元侯爵令息だ。
侯爵夫妻は子爵夫妻同様、むしろセレスリアに感謝していたくらいだが、元侯爵令息は何故自分がこんな不当な扱いを受けなければ、と強制的に部屋を出されるまで喚いていた。
せめて会場でセレスリアが声をかけたとき、最低限の礼を尽くし、場所を変えるなり、その場の余興で終わらせるなりしていれば、多少は手心が加えられていただろうに。その場合も、廃嫡は免れなかっただろうが。
ノースボルド侯爵家は、体の弱い次男にかかりきりで嫡男は放置気味だったらしい。元々向学心もなかったということだが、夫妻に対する反発と甘えもあったのかもしれない。今となっては詮無きこと。
「セレスが学院に通うのは、3日後からだっけ」
「ええ。編入試験や手続きはもう済んだわ」
「ああ、結果はもう聞いてる。さすがだよね。私も油断できないな」
「あら? エル様は入学以来、首席をどなたにも譲らないと聞いておりますのに」
「今のところはね。君が入ったら、どうなるか分からない」
「まあご謙遜」
ふふっと声を立てて笑う。
こちらの学院はどんな感じなのだろう。少なくとも、騒ぎを起こした元侯爵令息のような、愚かな人間はもういないと信じたい。
エキナセナ嬢も控えめでとても好印象だったし、不安がなくもないが、期待もしていた。
そうして迎えた編入日当日。
少し早く着きすぎたかと、セレスリアは護衛の手を借りながら馬車から降りる。視線の先には、同時刻に着いたらしいエラルドの姿が見えた。
彼が近寄る前に、セレスリアが歩き出す前に、”それ”はやってきた。
「セレス!!」
「っ!!」
切羽詰まったエラルドが叫び、駆け寄ってきたときにはもう遅く、護衛の手も間に合わずに。
セレスリアは大きな獣に咥えられ、連れ去られたのだ。
─────*─────*─────*─────*─────*─────
合間合間に違う話を書いてたりしましたが、あと2話くらいで終わる予定です。
正直、薄暗い話を読んで下る方がいらっしゃるとは思わなかった(笑)。
皆様、よいお年をお迎えください。
結論から言えば、会場で断罪を宣言したディーグ・ノースボルド侯爵令息は廃嫡、除籍、不貞相手であるミシュア・オレガノ子爵令嬢は除籍後に修道院送り、シャーリー・エキナセナ伯爵令嬢は冤罪だったためお咎めなし、2人の婚約は解消となった。
場は主にエラルドが仕切ったが、予想通りと言えば予想通りに、礼儀もなく勝手な発言を繰り返し、叱責されながら反省もせず。自分の行いは正当であると最後まで主張していた。
侯爵夫妻は元侯爵令息の弟である次男が病弱であるとのことで、欠席もそういった理由からだった。子爵夫妻は馬車の事故による遅刻だったとのこと。
しかし、両夫妻とも良識と道徳を兼ね備えた人物たちだったので、話しは当人たちを除けばスムーズにいったと言ってもいい。
私への不敬を知ると、それはもう顔色は真っ青を通り越して真っ白で、夫人は気絶するほど。財産と爵位の返上を申し出るくらいの潔さに、当人たちの罰も妥当とはいえ軽いものではないしということで、手打ちにすることにした。エラルドは最後まで渋っていたが。本来なら、軽く済ませていい事案ではないことは勿論理解している。
「…機嫌悪そうね?」
「そりゃあね。正直甘い処分だと思うし」
「分かってるけど。でも、これからこの国の一員として生きていくなら、特に良識ある貴族に必要以上の罰を与えたくはなかったの」
「だろうと思って、何も言わなかったさ」
肩を竦めるエラルドに、苦笑を返す。
それにしても、問題は元侯爵令息だ。
侯爵夫妻は子爵夫妻同様、むしろセレスリアに感謝していたくらいだが、元侯爵令息は何故自分がこんな不当な扱いを受けなければ、と強制的に部屋を出されるまで喚いていた。
せめて会場でセレスリアが声をかけたとき、最低限の礼を尽くし、場所を変えるなり、その場の余興で終わらせるなりしていれば、多少は手心が加えられていただろうに。その場合も、廃嫡は免れなかっただろうが。
ノースボルド侯爵家は、体の弱い次男にかかりきりで嫡男は放置気味だったらしい。元々向学心もなかったということだが、夫妻に対する反発と甘えもあったのかもしれない。今となっては詮無きこと。
「セレスが学院に通うのは、3日後からだっけ」
「ええ。編入試験や手続きはもう済んだわ」
「ああ、結果はもう聞いてる。さすがだよね。私も油断できないな」
「あら? エル様は入学以来、首席をどなたにも譲らないと聞いておりますのに」
「今のところはね。君が入ったら、どうなるか分からない」
「まあご謙遜」
ふふっと声を立てて笑う。
こちらの学院はどんな感じなのだろう。少なくとも、騒ぎを起こした元侯爵令息のような、愚かな人間はもういないと信じたい。
エキナセナ嬢も控えめでとても好印象だったし、不安がなくもないが、期待もしていた。
そうして迎えた編入日当日。
少し早く着きすぎたかと、セレスリアは護衛の手を借りながら馬車から降りる。視線の先には、同時刻に着いたらしいエラルドの姿が見えた。
彼が近寄る前に、セレスリアが歩き出す前に、”それ”はやってきた。
「セレス!!」
「っ!!」
切羽詰まったエラルドが叫び、駆け寄ってきたときにはもう遅く、護衛の手も間に合わずに。
セレスリアは大きな獣に咥えられ、連れ去られたのだ。
─────*─────*─────*─────*─────*─────
合間合間に違う話を書いてたりしましたが、あと2話くらいで終わる予定です。
正直、薄暗い話を読んで下る方がいらっしゃるとは思わなかった(笑)。
皆様、よいお年をお迎えください。
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