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第21話 複合術式
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クリアがそんな考えに浸っていると、レッドは火の大剣を片手に。
「正直、ゴールドがなんで俺達を狙ったのかはわからないけど……。とりあえず、俺達と出会ったんだ。『アスラカチミオ』の続き……やるのか?」
そう聞いてきたのだった。
……正直、クリアには二人と戦う理由が今はない。
主持ちのルーツを回収する手段は今のところ明確にわかっているのは譲渡、もしくは……主の死。
この二人からルーツを回収するには、命まで奪わなければならない。
何故、ボスのガウスがクリアにレッドとグリーンのルーツの回収を後回しにしていいと言ってくれていたと言えば、全てそこにあった。
ガウスは本当の父のようにクリアを育ててくれた。
故に、当然クリアのことをよく知っている。
人の命を奪うことをクリアには到底できない行為だということも。
クリアは、自分の使命の為ならなんだってできるはずだった。
……なんでもしようと、思っていた。
しかし、どうしても頭によぎってしまうのだ。
失われた者がもたらす悲しみや苦しみを。
あの日、クリアに刻み込まれた体験がどんな者であろうと命を奪うことを拒むのだ。
それが例え自らの使命を阻む敵であろうとも。
この二人と『アスラカチミオ』で戦った時にクリアは知ってしまった。
レッドもグリーンも、その命尽きるまで絶対にルーツを手放さないことを。
だからこそ今はこの二人とは戦いたくない。
……否、戦えない。
それがクリアとガウスが出した結論だった。
「……遠慮しておきますと言ったら見逃してくれますか? あなた方とはその内。今のボクの目的はこの『トーライ』でのルーツ回収ですか……ら……?」
レッドに答えながら、クリアはあることを思い出す。
そして、思い出したことはまるでするすると紐が解ける様にクリアを一つの答えに導いた。
先程のゴタゴタですっかり忘れていたが。
——いるじゃないか、ゴールドにルーツとエレメンタルアームズのことを入れ知恵できる人物が。そして、恐らくその人物がゴールドにルーツ回収の手伝いを強要したとしたら。
「あの人ならやりかねない……」
どうして気付かなかったんだと言わんばかりにクリアは頭を抱え、目頭を指で摘んだ。
そんな一人で忙しないクリアを見て、レッド達は流石に武器を下ろして説明を求めてきた。
「なあ、どういうことだよ? 何か思い当たる節があるのか?」
レッドの質問に、クリアは答えるか迷った。
これは『ディールーツ』の問題だ。
しかし、このままではゴールドはもちろん、もしかしたらゴールドの大切な人たちが危険な目に合わされているかもしれないのだ。
敵ではあるが、レッド達の力を借りるべきかクリアは迷って——。
「これは……」
あるものを目にしたクリアは、自然と言葉を溢していた。
クリアとグリーンは空を一定時間の間飛ぶことができる風の術式である【空を往くもの】を使用し、空中から森を見渡していた。
その中で、恐らくゴールドが生活していたであろう村だと思われる場所を発見したのだが……。
そのもはや村と呼べるか疑問に思えるその場所は、既に煙が上がり炎上していた。
その場に降り立った二人が辺りを見渡したのだが、それはもう酷い有様だった。
元々は木々に隠れる様にして存在していたらしい小さな村は、家も村の至る所に生えていたらしい木も焼け崩れ、まるで人がいる気配がしない。
——十中八九、ライズさんの仕業だ。
クリアがそう思うほどには、『ディールーツ』の幹部、ライズ・グリッドは非常に好戦的で、クリアも嫌悪するほどの性格をしていた。
ライズにとって、目的の為なら手段は選ばないし、弱者を甚振るのも楽しみの一つらしい。
もちろん強者と戦うのも大好きで、クリアは何度も彼のやり方が許せず衝突していたし、なんならクリアと戦いたいからと何度も挑発されたこともあった。
今回の調査は森が広い上、現地に人が住んでいるという情報もなかったので渋々ライズ班と組んで任務を行うことを承知したのだが、それが仇にになってしまったようだ。
——ゴールドさん、それに村人の方々ごめんなさい。少なくともライズさんを先に行かせなければこんな事にはならなかったかもしれなかったのに……。
クリアは申し訳ない気持ちでいっぱいの中、心の中で謝罪した。
しかし、今は後悔してる場合ではない。
クリアは今なお燃え続けるこの村の被害を少しでも食い止めるため、水と氷の〈複合術式〉である【風雨の雲】を使用する為集中し始めた。
〈複合術式〉。
それは、二属性以上のエレメントの術式を掛け合わせることで人為的にエレメントの分子反応を起こし、より強力な術式として使用する高難易度の術式である。
同じ属性のエレメントの組み合わせでも、分子の量や術式による分子への指示次第で発生させられる分子反応は無数に存在するため、複合術式を使用するなら術式命名をしないと扱いにくいデメリットももれなく付属してくることになるが。
『アスラカチミオ』でレッド達が起こした〈水蒸気爆発〉もある意味では複合術式に近いものと言えるだろう。
通常、複合術式は二人以上がタイミング良くそれぞれの術式を使用して組み合わせなければならないが、あらゆる属性のエレメントを——吸収して保持さえしていれば——キャスティングできるクリアは一人で複合術式を使用できる。
ただし、【無属性】の制約なのか、クリアはオリジナルで作った術式に命名ができない。
故に、この複合術式含め思いつきで術式を使用する際は高い集中力が必要になるのだった。
「現れろ、【風雨の雲】!」
クリアが使用した複合術式は、名前の通り雨雲として村を中心に広がってその雨が残り火を少しずつ鎮火していく。
「お前、そんな事もできるのか」
「感心してないでグリーンさんも手伝ってくださいよ!」
「ふっ……【貪る嵐】!」
クリアの言葉に対して「わかっている」と言わんばかりにグリーンが使用した術式は、相変わらず風のキャスティング能力で右に出るものはそういないと思わせるほどの腕前だった。
その術式は名前からして、他のエレメントを取り込みながらその作用を広域に広げるのだろう。
実際にクリアが発生させた雨雲から降り注ぐ雨を取り込みながら広がっていき、鎮火速度を上げるのに大きく貢献してくれた。
——これでとりあえずこれ以上の被害は収まったとは思いたい。
……既に村の原型は無くなってしまってはいるが、森全域に広がる前に同じ組織の人間としてのせめてもの行為だ。
——後で全面的な復興支援をしなければ。
クリアがそう思った矢先だった——。
「正直、ゴールドがなんで俺達を狙ったのかはわからないけど……。とりあえず、俺達と出会ったんだ。『アスラカチミオ』の続き……やるのか?」
そう聞いてきたのだった。
……正直、クリアには二人と戦う理由が今はない。
主持ちのルーツを回収する手段は今のところ明確にわかっているのは譲渡、もしくは……主の死。
この二人からルーツを回収するには、命まで奪わなければならない。
何故、ボスのガウスがクリアにレッドとグリーンのルーツの回収を後回しにしていいと言ってくれていたと言えば、全てそこにあった。
ガウスは本当の父のようにクリアを育ててくれた。
故に、当然クリアのことをよく知っている。
人の命を奪うことをクリアには到底できない行為だということも。
クリアは、自分の使命の為ならなんだってできるはずだった。
……なんでもしようと、思っていた。
しかし、どうしても頭によぎってしまうのだ。
失われた者がもたらす悲しみや苦しみを。
あの日、クリアに刻み込まれた体験がどんな者であろうと命を奪うことを拒むのだ。
それが例え自らの使命を阻む敵であろうとも。
この二人と『アスラカチミオ』で戦った時にクリアは知ってしまった。
レッドもグリーンも、その命尽きるまで絶対にルーツを手放さないことを。
だからこそ今はこの二人とは戦いたくない。
……否、戦えない。
それがクリアとガウスが出した結論だった。
「……遠慮しておきますと言ったら見逃してくれますか? あなた方とはその内。今のボクの目的はこの『トーライ』でのルーツ回収ですか……ら……?」
レッドに答えながら、クリアはあることを思い出す。
そして、思い出したことはまるでするすると紐が解ける様にクリアを一つの答えに導いた。
先程のゴタゴタですっかり忘れていたが。
——いるじゃないか、ゴールドにルーツとエレメンタルアームズのことを入れ知恵できる人物が。そして、恐らくその人物がゴールドにルーツ回収の手伝いを強要したとしたら。
「あの人ならやりかねない……」
どうして気付かなかったんだと言わんばかりにクリアは頭を抱え、目頭を指で摘んだ。
そんな一人で忙しないクリアを見て、レッド達は流石に武器を下ろして説明を求めてきた。
「なあ、どういうことだよ? 何か思い当たる節があるのか?」
レッドの質問に、クリアは答えるか迷った。
これは『ディールーツ』の問題だ。
しかし、このままではゴールドはもちろん、もしかしたらゴールドの大切な人たちが危険な目に合わされているかもしれないのだ。
敵ではあるが、レッド達の力を借りるべきかクリアは迷って——。
「これは……」
あるものを目にしたクリアは、自然と言葉を溢していた。
クリアとグリーンは空を一定時間の間飛ぶことができる風の術式である【空を往くもの】を使用し、空中から森を見渡していた。
その中で、恐らくゴールドが生活していたであろう村だと思われる場所を発見したのだが……。
そのもはや村と呼べるか疑問に思えるその場所は、既に煙が上がり炎上していた。
その場に降り立った二人が辺りを見渡したのだが、それはもう酷い有様だった。
元々は木々に隠れる様にして存在していたらしい小さな村は、家も村の至る所に生えていたらしい木も焼け崩れ、まるで人がいる気配がしない。
——十中八九、ライズさんの仕業だ。
クリアがそう思うほどには、『ディールーツ』の幹部、ライズ・グリッドは非常に好戦的で、クリアも嫌悪するほどの性格をしていた。
ライズにとって、目的の為なら手段は選ばないし、弱者を甚振るのも楽しみの一つらしい。
もちろん強者と戦うのも大好きで、クリアは何度も彼のやり方が許せず衝突していたし、なんならクリアと戦いたいからと何度も挑発されたこともあった。
今回の調査は森が広い上、現地に人が住んでいるという情報もなかったので渋々ライズ班と組んで任務を行うことを承知したのだが、それが仇にになってしまったようだ。
——ゴールドさん、それに村人の方々ごめんなさい。少なくともライズさんを先に行かせなければこんな事にはならなかったかもしれなかったのに……。
クリアは申し訳ない気持ちでいっぱいの中、心の中で謝罪した。
しかし、今は後悔してる場合ではない。
クリアは今なお燃え続けるこの村の被害を少しでも食い止めるため、水と氷の〈複合術式〉である【風雨の雲】を使用する為集中し始めた。
〈複合術式〉。
それは、二属性以上のエレメントの術式を掛け合わせることで人為的にエレメントの分子反応を起こし、より強力な術式として使用する高難易度の術式である。
同じ属性のエレメントの組み合わせでも、分子の量や術式による分子への指示次第で発生させられる分子反応は無数に存在するため、複合術式を使用するなら術式命名をしないと扱いにくいデメリットももれなく付属してくることになるが。
『アスラカチミオ』でレッド達が起こした〈水蒸気爆発〉もある意味では複合術式に近いものと言えるだろう。
通常、複合術式は二人以上がタイミング良くそれぞれの術式を使用して組み合わせなければならないが、あらゆる属性のエレメントを——吸収して保持さえしていれば——キャスティングできるクリアは一人で複合術式を使用できる。
ただし、【無属性】の制約なのか、クリアはオリジナルで作った術式に命名ができない。
故に、この複合術式含め思いつきで術式を使用する際は高い集中力が必要になるのだった。
「現れろ、【風雨の雲】!」
クリアが使用した複合術式は、名前の通り雨雲として村を中心に広がってその雨が残り火を少しずつ鎮火していく。
「お前、そんな事もできるのか」
「感心してないでグリーンさんも手伝ってくださいよ!」
「ふっ……【貪る嵐】!」
クリアの言葉に対して「わかっている」と言わんばかりにグリーンが使用した術式は、相変わらず風のキャスティング能力で右に出るものはそういないと思わせるほどの腕前だった。
その術式は名前からして、他のエレメントを取り込みながらその作用を広域に広げるのだろう。
実際にクリアが発生させた雨雲から降り注ぐ雨を取り込みながら広がっていき、鎮火速度を上げるのに大きく貢献してくれた。
——これでとりあえずこれ以上の被害は収まったとは思いたい。
……既に村の原型は無くなってしまってはいるが、森全域に広がる前に同じ組織の人間としてのせめてもの行為だ。
——後で全面的な復興支援をしなければ。
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