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第23話 不甲斐無き拳と進み無き心
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——なぜこんな、平然と犠牲を出すような人と組ませて、剰えそのライズの指示を聞けだなんて。
クリアだってわからないのだ。
故に、レッドの問いに答えられないのも仕方ないと言えるだろう。
「仕方ねえよなぁクリアぁ? ボスの指示は絶対だもんなぁ⁉︎」
ライズは敢えて全員に言い聞かせるように大声で叫ぶ様に言った。
その言葉に、クリアはビクッと体を震わせ。
その二人の様子は、レッド達三人にどう映っていたのだろうか。
——そう、ボスの指令は……絶対……それが、ボクの組織にいる意味……。
「……行きます。レッドさん、グリーンさん」
クリアの言葉に、レッドとグリーンは『アスラカチミオ』とはまた違う型を構えた。
それは修行で得た新しい戦い方なのだろうか。
今のクリアとは対照的に、二人からは凄まじい闘気が満ちている。
——不本意ながらも、結局戦う運命だったらしい。しかし、そう考えると諦めもつくかもしれない。止めは、ライズさんに任せればいい。自分ができなくても、ライズさんならできる。
ボスは最初からそう見据えていたのだろうか、とクリアは最後に思いながらレッドへとその拳を振るった——。
「はぁ、はぁ……っ」
何故だか、今日は全然レッドに全くと言っていいほど攻撃が当たらない。
まるで、体が自分のものでなくなってしまったかの様にクリアの動きは明らかに鈍っていた。
クリア本人はいつも通りに戦っているつもりでも、レッドへの攻撃はことごとく躱されるか簡単に防がれてしまう。
しかも、先程の【風雨の雲】による雨天はまだ続いている為、レッドの火の力が弱まっているはずにも関わらず、レッドは火の術式を絡めてクリアの攻めを捌き切っている。
クリアが彼らと会わなかった間に、雨天で弱体化されないほどまでにレッドはルーツの力を引き出せるようになっているというのだろうか。
……あの、光があろうと関係無しに攻撃を繰り出してきたザ・クロのように。
それどころか、多少の攻防でクリアの息が既に上がりはじめていた。
レッドからの攻撃自体は防げてはいるが、今のクリアとは対照的に『アスラカチミオ』で戦った時の比ではないぐらいに強くなっているのは他でもない、相手をしているクリアに伝わってくる。
それでも、いつものクリアならもう少し楽に捌いて少しずつレッドへダメージを与えられているはず……なのだが。
クリアの不調は、恐らく他の者の目から見ても明らかだったのだろう。
クリアがレッドの相手しかできず、グリーンを相手にしなければならなくなったライズが目に見えて苛ついていくのがわかる。
それは、思ったよりもグリーンがライズを手球に取る様に余裕を見せながら戦っているからだろうか。
ライズは、強者と戦うことは好きなはずだ。
しかし、レッド同様エレメンタルアームズに頼るだけじゃなく、いったいどんな修行をしてきたのか。
クリアの働いていない頭でもわかるぐらいにグリーン本人が以前より遥かに強くなっている。
ライズも数手交わして、グリーンと自分の実力差に気が付いたのだろう。
彼は、グリーン一人相手でも分が悪いと判断したらしい。
「おいクリアぁ!」
さっさとレッドを倒してこっちに参戦しろ、と言いたげにライズは苛立ちを隠さない声色でクリアの名を呼んだ。
どうやら、ライズはもはや自分だけでグリーンの相手をするのが面倒だからやりたくない……らしい。
そんな性格だからこそ、それなりに人と仲良くなれる自信があるクリアですらライズのことをはっきりと嫌っているわけだが。
苛立ちをもはや隠そうともしないライズは、グリーンと交戦しながらもクリアに向けて叫んだ。
「クリアぁ! いつまでふぬけてんだよ! とっとと自分の任務を遂行しやがれ!」
一体誰のせいでこうなったのか、全く自覚がないらしいライズにクリアは力無く一瞬だけ視線をむけた。
——いや、人のせいにしてはだめだ……。
あくまで『ディールーツ』の目的を遂行するだけなら——彼の趣向が入り込んでいるとはいえ——ライズが正しいのかもしれないともクリアには思える。
結局、人の命を奪わない・奪えないという決まり事を持っているのはクリア自身の問題なのだから。
そんなライズとは対照的に、レッドはクリアと交戦しつつも困惑の表情を浮かべながら話しかけてきた。
「クリア、もうやめにしようぜ。そんな辛そうな顔をして戦うお前を、俺は例え敵だとしても見てられない」
レッドは相変わらず引き込まれるような綺麗な真っ直ぐな赤い瞳でクリアの目を見てくる。
しかし、クリアはその言葉に乗ることはできなかった。
——乗れたら、どれだけ楽なことか。
しかし、乗ることをするということは、ボスを裏切り、使命から逃げる事を意味するわけで。
「……無理です。ボクは、ボクの使命はボスの指令の通り任務をこなす事。ルーツを回収するまで、ライズさんの元でサポートをしないと」
レッドの言葉に多少心が揺さぶられるが、クリアはそう否定する。
……否定しなければならないのだ。
自分は、『ディールーツ』のクリアなのだから。
そう自分に言い聞かせる様にクリアは再びレッドに拳を振るう。
しかし、変わらず掠りすらしなかった。
そんなクリアの振るった拳に合わせてレッドがカウンターで剣を振るおうとした時——。
「な⁉︎ うあああ!」
突然、ゴールドの叫びが響き渡った。
いつまでもレッドを倒せないどころか苦戦して見えるクリアに痺れを切らしたのか、ライズが戦いに参加していないゴールドに向けて急にその大鎌を向けたのだ。
突然ゴールドに向けて振るわれた大鎌を、咄嗟に庇う様に前に出たグリーンが風の長刀で受けた。
しかし、あまりの卑怯な一撃を、グリーンは体制も悪く受け切れず焼け崩れた家の中まで大きく飛ばされてしまった。
「グリーン!」
レッドの咄嗟の呼びかけに、グリーンの返事はない。
「な、ライズさん⁉︎ なんてことをするんですか!」
続いてクリアもあまりにも目に余るライズの行為に思わず批判的な叫びをあげる。
しかし、ライズはクリアに悪びれもなく、むしろ当然のことをしたと言わんばかりの態度で返してきたのだった。
クリアだってわからないのだ。
故に、レッドの問いに答えられないのも仕方ないと言えるだろう。
「仕方ねえよなぁクリアぁ? ボスの指示は絶対だもんなぁ⁉︎」
ライズは敢えて全員に言い聞かせるように大声で叫ぶ様に言った。
その言葉に、クリアはビクッと体を震わせ。
その二人の様子は、レッド達三人にどう映っていたのだろうか。
——そう、ボスの指令は……絶対……それが、ボクの組織にいる意味……。
「……行きます。レッドさん、グリーンさん」
クリアの言葉に、レッドとグリーンは『アスラカチミオ』とはまた違う型を構えた。
それは修行で得た新しい戦い方なのだろうか。
今のクリアとは対照的に、二人からは凄まじい闘気が満ちている。
——不本意ながらも、結局戦う運命だったらしい。しかし、そう考えると諦めもつくかもしれない。止めは、ライズさんに任せればいい。自分ができなくても、ライズさんならできる。
ボスは最初からそう見据えていたのだろうか、とクリアは最後に思いながらレッドへとその拳を振るった——。
「はぁ、はぁ……っ」
何故だか、今日は全然レッドに全くと言っていいほど攻撃が当たらない。
まるで、体が自分のものでなくなってしまったかの様にクリアの動きは明らかに鈍っていた。
クリア本人はいつも通りに戦っているつもりでも、レッドへの攻撃はことごとく躱されるか簡単に防がれてしまう。
しかも、先程の【風雨の雲】による雨天はまだ続いている為、レッドの火の力が弱まっているはずにも関わらず、レッドは火の術式を絡めてクリアの攻めを捌き切っている。
クリアが彼らと会わなかった間に、雨天で弱体化されないほどまでにレッドはルーツの力を引き出せるようになっているというのだろうか。
……あの、光があろうと関係無しに攻撃を繰り出してきたザ・クロのように。
それどころか、多少の攻防でクリアの息が既に上がりはじめていた。
レッドからの攻撃自体は防げてはいるが、今のクリアとは対照的に『アスラカチミオ』で戦った時の比ではないぐらいに強くなっているのは他でもない、相手をしているクリアに伝わってくる。
それでも、いつものクリアならもう少し楽に捌いて少しずつレッドへダメージを与えられているはず……なのだが。
クリアの不調は、恐らく他の者の目から見ても明らかだったのだろう。
クリアがレッドの相手しかできず、グリーンを相手にしなければならなくなったライズが目に見えて苛ついていくのがわかる。
それは、思ったよりもグリーンがライズを手球に取る様に余裕を見せながら戦っているからだろうか。
ライズは、強者と戦うことは好きなはずだ。
しかし、レッド同様エレメンタルアームズに頼るだけじゃなく、いったいどんな修行をしてきたのか。
クリアの働いていない頭でもわかるぐらいにグリーン本人が以前より遥かに強くなっている。
ライズも数手交わして、グリーンと自分の実力差に気が付いたのだろう。
彼は、グリーン一人相手でも分が悪いと判断したらしい。
「おいクリアぁ!」
さっさとレッドを倒してこっちに参戦しろ、と言いたげにライズは苛立ちを隠さない声色でクリアの名を呼んだ。
どうやら、ライズはもはや自分だけでグリーンの相手をするのが面倒だからやりたくない……らしい。
そんな性格だからこそ、それなりに人と仲良くなれる自信があるクリアですらライズのことをはっきりと嫌っているわけだが。
苛立ちをもはや隠そうともしないライズは、グリーンと交戦しながらもクリアに向けて叫んだ。
「クリアぁ! いつまでふぬけてんだよ! とっとと自分の任務を遂行しやがれ!」
一体誰のせいでこうなったのか、全く自覚がないらしいライズにクリアは力無く一瞬だけ視線をむけた。
——いや、人のせいにしてはだめだ……。
あくまで『ディールーツ』の目的を遂行するだけなら——彼の趣向が入り込んでいるとはいえ——ライズが正しいのかもしれないともクリアには思える。
結局、人の命を奪わない・奪えないという決まり事を持っているのはクリア自身の問題なのだから。
そんなライズとは対照的に、レッドはクリアと交戦しつつも困惑の表情を浮かべながら話しかけてきた。
「クリア、もうやめにしようぜ。そんな辛そうな顔をして戦うお前を、俺は例え敵だとしても見てられない」
レッドは相変わらず引き込まれるような綺麗な真っ直ぐな赤い瞳でクリアの目を見てくる。
しかし、クリアはその言葉に乗ることはできなかった。
——乗れたら、どれだけ楽なことか。
しかし、乗ることをするということは、ボスを裏切り、使命から逃げる事を意味するわけで。
「……無理です。ボクは、ボクの使命はボスの指令の通り任務をこなす事。ルーツを回収するまで、ライズさんの元でサポートをしないと」
レッドの言葉に多少心が揺さぶられるが、クリアはそう否定する。
……否定しなければならないのだ。
自分は、『ディールーツ』のクリアなのだから。
そう自分に言い聞かせる様にクリアは再びレッドに拳を振るう。
しかし、変わらず掠りすらしなかった。
そんなクリアの振るった拳に合わせてレッドがカウンターで剣を振るおうとした時——。
「な⁉︎ うあああ!」
突然、ゴールドの叫びが響き渡った。
いつまでもレッドを倒せないどころか苦戦して見えるクリアに痺れを切らしたのか、ライズが戦いに参加していないゴールドに向けて急にその大鎌を向けたのだ。
突然ゴールドに向けて振るわれた大鎌を、咄嗟に庇う様に前に出たグリーンが風の長刀で受けた。
しかし、あまりの卑怯な一撃を、グリーンは体制も悪く受け切れず焼け崩れた家の中まで大きく飛ばされてしまった。
「グリーン!」
レッドの咄嗟の呼びかけに、グリーンの返事はない。
「な、ライズさん⁉︎ なんてことをするんですか!」
続いてクリアもあまりにも目に余るライズの行為に思わず批判的な叫びをあげる。
しかし、ライズはクリアに悪びれもなく、むしろ当然のことをしたと言わんばかりの態度で返してきたのだった。
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