エレメント・ルーツ〜世界の全ては属性(エレメント)でできていますが【無属性】のボクは何者ですか?〜

星野 大介

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第24話 ゴールドの真意

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「はっ、テメェがあんまりに使えねえから俺なりに対処しただけだろうが。なぁにがボスの右腕だ、笑わせんなよなぁ」

 そう言いながら大鎌の刃先をゴールドに向け、ライズは続ける。

「そっちの大剣野郎もわかったか? こいつの命が惜しけりゃ大人しくしやがれ。ったくクリアと言い、この小僧といいこぞって使えねえ。小僧がルーツの場所を知ってるか持ってきてればとっとと終わってたのによ」

 やれやれと首に手を当ててコキコキと鳴らすライズの言葉に、レッドは素直に武器を下ろして構えを解いた。

「ライズさん!」

 もはや、クリアの言葉に聞く耳を持たないライズにこの叫びは意味をなさず。
 ライズはレッドを仕留めるべく、大技の術式の構えを取る。

 それは、大鎌に雷でできた巨大な刃を纏わせ振るうライズが編み出した必殺級の術式を使う為の溜めの構えだ。

 溜めた雷のエレメントの量で威力を調整できる、ライズを幹部一の攻撃力と言わしめる術式。

 即座に振るうこともできる故、溜めている今もゴールドはその場から逃げる事はできない。

 更に、先程吸収していたゴールドのエレメントも上乗せされて、今まで見た中で最大級の威力で術式それが振るわれるであろう事をクリアは察した。

 ——これで、終わりだ。

 もう、それでいいじゃないかとクリアは思った。

 レッドとグリーンをライズが仕留め、ルーツを三つ回収する事ができる。

 ボスは喜ぶし、着実にクリアの使命と『ディールーツ』の目的達成に近付くのだ。

 クリアがそう諦めかんがえた時だった——。

「来いよ、ライズ。どんな卑怯な手を使われたって、俺はそう簡単にはくたばらないぜ」

 両手を広げたレッドが、にっと笑いながら言いのけたのだ。

 ——この人は、本当に。

 そんなレッドの姿が目に入った時、クリアは胸に何かが込み上げてくる感覚を覚えた。

 対して、ライズはレッドの態度が気に入らなかったのか。

「ならとっととくたばれや『所有者ホルダー』ども! 【雷撃の大鎌ボルテック・デスサイズ】‼︎」

 この場全てを薙ぎ払う様に、一撃を放った——。
 
 それは、一撃で森の木々ごと全てを薙ぎ払い地形を変える程の威力だった。

 ……振り切るはなつ事が、できていれば。

 ——そう、【雷撃の大鎌ボルテック・デスサイズ】がレッドの元に届くことは無かった。

「…………はぁ⁉︎」

 ワンテンポ遅れて反応したライズが見たのは、術式で纏った雷の刃を片手で受け止めていたゴールドの姿だった。

 ……いったい、その場の誰が予想できただろうか。

 先程まで全くライズに歯が立たなかった彼が、この窮地を救うなどと。

「勝った、と思ったか? バーカ」

 ライズにべーっと舌を出して笑みを向けるゴールドは、先程までの恐怖に怯えて無力感を出していた雰囲気を微塵も感じられなかった。

「まずはレッドさんとグリーンさん、まじで悪かったっス! 弱いフリして言うこと聞いときゃとりあえず村の皆の場所ぐらいは聞き出せるかなと思ってたんスけど、こいつ全然口を割らなくって。そのせいでアンタ達を無駄に傷付ける事になっちまったっス。まあ、グリーンさんも一芝居打ったみたいっスけど」

 レッドの方に視線を送りながらも余裕そうにライズの一撃を受け止め続けるゴールドの言葉にグリーンが飛ばされた場所にクリアが目を向ければ、グリーンは笑みを浮かべながら立ち上がった。

「ふっ、流石に俺達を出し抜いただけの事はあるな。バレていたか」

 どうやら、グリーンも期を伺うために吹き飛ばされたフリをして身を隠してたらしい。

「レッドさんは、わかってたんですか……?」

 クリアが思わず聞けば、レッドは爽やかな笑顔で頷いて返してきた。

「あの程度じゃ、もう俺らはやられないぜ。何か考えがあると思って名前を叫んだんだ」

 この三人はどこからそこまで考えてたんだろうか、とクリアは呆気に取られた。

 もちろん、ゴールドがライズの一撃を止めるとは誰も思って無かっただろうが。

「というか小僧テメェ、それって——」
「ああ、これっスか? アンタらが必死こいて探してた雷のルーツっスよ。いや、この状態だとエレメンタルアームズって言うんだったっけか?」

 ライズの攻撃を防いでいるのは、よく見れば五重に重なっている雷を纏った黄金のリングだった。

「つまり、最初からオレを騙してたって事かよ……クソがぁ!」

 ライズは怒りを露わにしながら大鎌を振り抜こうとするが、エレメンタルアームズに阻まれた雷の刃はびくともしない。

 それどころか、徐々に小さくなっていってる様に見える。

「忘れたんスか? 雷属性同士の戦いはキャスティング能力が高い方が勝つ。常識っスよね」

 言い終わるかどうかでついにライズの大鎌に纏っていた雷は全てゴールドに吸われたようで、失われていた。

 それは、完全にライズよりもゴールドの方が雷属性の使い手として格上である事を表していた。

「馬鹿な……『ディールーツ』の幹部の一人であるこのオレがこんな小僧に完全に劣っているだと……!」

 ライズが激しく動揺しているのは見て分かるほどだった。

「ありえねぇ……ありえねぇ!」

 しかし、動揺しながらもライズはゴールドに向かって大鎌を振るう。

 大鎌を振るう速度からして、雷のエレメントで身体強化バフをしているのだろう。

 まさに閃光と呼べる速度で幾度となく大鎌を振り回す。

 が、ゴールドは全て読み切っているかの如く躱してみせた。

 もはや、ここまでの攻防を見れば、どちらが勝つかなど火を見るより明らかだった。

「くそっ、くそがぁ! テメェ村の奴らがどうなってもいいのかよ⁉︎」

 敗戦が濃厚になったライズは、最後の切札なのであろう村人達の存在を盾にしてゴールドに揺さぶりをかけようとした。

 しかし、その一言は逆にゴールドの心に火をつけたようで。

「どうせ無事に帰す気なんて更々ねえ癖に……ざっけんなぁ‼︎」

 ——瞬間。

 ゴールドは目で追えない速さでライズと距離を取り。

 五つのリングエレメンタルアームズをライズに向けて等間隔で空中に浮遊させ、叫んだ。

「喰らえよ! 【黄金雷電砲撃ゴールデン・サンダー・キャノン】‼︎」

 ゴールドが殺意いかりを込めて放った雷撃は次々と五つの黄金のリングエレメンタルアームズを通過する度にその威力を増幅し、凄まじい威力となってライズへと向かっていった——。
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