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第29話 セインテッド王国と生誕祭
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本日、晴天なり。
ただでさえ王女の成人の年である生誕祭への期待が募った人々を雲一つない一面の青空が後押ししたのか、ここ『セインテッド王国』の城下街はまだ祭りが始まって間もないにも関わらず、大勢の観光客によって賑わいを見せていた。
例年より確実に盛り上がる事を見越したであろう、今日の為に準備を進めてきた様々な種類の露店が所狭しと並んでおり、クリアが聞いた話では国中の城下街の表通りで店が出されていない場所は無いのだとか。
『セインテッド王国』は建物や舗装された街道が石造りの都市国家であり、普段最先端技術で建造された『ディールーツ』の建物で生活しているクリアからして見れば、——毎年何度か訪れてはいるが——趣のある雰囲気がいい国だと感じていた。
この国は城を中心として広がるように城下街があり、さらに外部から無許可での侵入を防ぐために十メートルはあろう堅固な分厚い石壁が国を囲うように建造されている。
更には、他の国々や領土との貿易や協定を結ぶことに積極的なことでも有名で、協定や貿易関係にある国々や領土までの道のりの整備もかなり行き届いており、交通の便もいい為、催し物が無くても人々出入りが激しいこの国は世界でトップクラスに栄えている国と言ってもいいだろう。
それ程この国が豊かで栄えてるのは、やはり歴代の国王が常に『賢王』と評される人物であることが大きい。
この国はなんでも今のところ世界中でこの国の王族のみが扱えるといわれている『とある属性』のエレメントを巧みに操って民を導きこの辺り地域を開拓して国を作ったのだという。
そんな普段から様々な国から人の出入りが多いこの国に入国するには、壁の各方角に設置されている関所を通り入国許可を得る必要があり、入国者の数に対してかなり治安が良いと評判の国でもある。
今日の祭りも、そこら中に交通誘導や治安維持の為に王国の騎士達——一目でわかるこの国特有の鎧を身に纏っている——が多数配備されており、人の流れは人数に対して——人数が人数の為、満足に全ての出店を見て回れるかは別として——かなりスムーズだと言える状況だった。
もちろんそんな栄えている国で、『ディールーツ』が取引しないはずも無く。
『ディールーツ』はその最新鋭の技術で生み出した商品をこの国の王族や貴族、そして数々の店に卸していたりする。
そして毎年この国で行われる催し物は、『ディールーツ』の新商品のお披露目の機会としているのだった。
普段から人気商品を出している『ディールーツ』も今年は他の店同様例に漏れず、例年以上に祭りに出す商品の開発に力を入れていたのをクリアは知っている。
『ディールーツ』は様々な種類の商品を取り扱っている為、いつからかこの国の催し物の際に『ディールーツ』の区画と呼ばれる組織の出店がまとまった販売スペースを出すようになっていた。
そんな区画の中の丁度中心辺りにある出店の一つで、クリアは今年の祭りの流れの様子を見る為少しだけ店に留まっていた。
「それにしても、今年は本当に例年以上に人が多いですね」
そんなクリアに、店員の一人が現在の街の様子の感想を述べるかのように話しかけた。
「ふふ、そうですね。もしかしたら今回の用意した在庫、一瞬で無くなってしまうかもしれませんね」
クリアは冗談めかして話しかけてきた店員に返した。
しかし、あながち例年の売上と今年の出している商品の質、そして祭りに参加している人々の数あたりをを考慮すると、本当に冗談抜きで短時間で全て捌き切る可能性もあるのだった。
一応、出店に置いてある商品の在庫以外にも、別途その半分ぐらいの在庫が倉庫にある。
出店の在庫が尽きた時それを持ってくるのがこの祭りでのクリアの仕事なのだった。
——それ以外の仕事は事前に全て片付けてある。
故に、その時が来るまでヒカリと祭りを回る事が許される、というわけだった。
クリア的にはさっさと全て捌き切って仕事を終わらせたいので、先程の冗談めかして言ったことはもしかしたらクリアの本心が漏れたのかもしれない……。
もちろん、シフト制を設けているので他の店員達が祭りを回れないわけでは無いが。
「ところで。クリアさん、今日はなんだが一段と服装に気合い入ってますね。よく似合ってますよ。それに妙にソワソワしているし。……もしかして、この後誰かと祭りを回る待ち合わせでもしてるんですか?」
「えっ⁉︎」
いきなりの店員の言葉に、ついクリアは動揺を隠し切れずビクっと肩を震わせてしまった。
……どうも的確に言い当てられるぐらいには無意識に態度に出してしまっていたらしい、と今更クリアは自覚させられることになった。
そんなクリアの反応に、店員はがっつり食い付いてくる。
「え、マジですか! 相手は誰なんです⁉︎」
詰め寄ってくる店員に対して恥ずかしさ半分、バレたらヒカリに迷惑をかけてしまうかもという思い半分でクリアは強引に話題を逸らす。
「ほ、ほら! そんなことより、次々とお客さんが来てますよ! あなたも対応の応援に行ってください!」
クリアの指示に「ちぇ~」とつまらなそうな顔を一瞬した店員は、すぐに接客用の笑顔に切り替えると既に客に対応している店員の中へと混ざっていった。
ヒカリとの約束の時間まで、後二十分程——。
ヒカリの提案で、組織の区画に入る手前にある休憩所として解放されている広場があり、その噴水の前で待ち合わせする事になっていた。
——そろそろ行かないと。
「それじゃ、後の対応よろしくお願いしますね!」
この人混みの中を進むとなると、交通誘導がしっかりされてるとはいえそれなりに時間を要するだろう。
次第に今クリアがいる出店も客への対応が忙しくなってきた為、店員達の返事は待たずにクリアは少し早めに出店から人混みの流れの中に飛び込んで行くのだった——。
ただでさえ王女の成人の年である生誕祭への期待が募った人々を雲一つない一面の青空が後押ししたのか、ここ『セインテッド王国』の城下街はまだ祭りが始まって間もないにも関わらず、大勢の観光客によって賑わいを見せていた。
例年より確実に盛り上がる事を見越したであろう、今日の為に準備を進めてきた様々な種類の露店が所狭しと並んでおり、クリアが聞いた話では国中の城下街の表通りで店が出されていない場所は無いのだとか。
『セインテッド王国』は建物や舗装された街道が石造りの都市国家であり、普段最先端技術で建造された『ディールーツ』の建物で生活しているクリアからして見れば、——毎年何度か訪れてはいるが——趣のある雰囲気がいい国だと感じていた。
この国は城を中心として広がるように城下街があり、さらに外部から無許可での侵入を防ぐために十メートルはあろう堅固な分厚い石壁が国を囲うように建造されている。
更には、他の国々や領土との貿易や協定を結ぶことに積極的なことでも有名で、協定や貿易関係にある国々や領土までの道のりの整備もかなり行き届いており、交通の便もいい為、催し物が無くても人々出入りが激しいこの国は世界でトップクラスに栄えている国と言ってもいいだろう。
それ程この国が豊かで栄えてるのは、やはり歴代の国王が常に『賢王』と評される人物であることが大きい。
この国はなんでも今のところ世界中でこの国の王族のみが扱えるといわれている『とある属性』のエレメントを巧みに操って民を導きこの辺り地域を開拓して国を作ったのだという。
そんな普段から様々な国から人の出入りが多いこの国に入国するには、壁の各方角に設置されている関所を通り入国許可を得る必要があり、入国者の数に対してかなり治安が良いと評判の国でもある。
今日の祭りも、そこら中に交通誘導や治安維持の為に王国の騎士達——一目でわかるこの国特有の鎧を身に纏っている——が多数配備されており、人の流れは人数に対して——人数が人数の為、満足に全ての出店を見て回れるかは別として——かなりスムーズだと言える状況だった。
もちろんそんな栄えている国で、『ディールーツ』が取引しないはずも無く。
『ディールーツ』はその最新鋭の技術で生み出した商品をこの国の王族や貴族、そして数々の店に卸していたりする。
そして毎年この国で行われる催し物は、『ディールーツ』の新商品のお披露目の機会としているのだった。
普段から人気商品を出している『ディールーツ』も今年は他の店同様例に漏れず、例年以上に祭りに出す商品の開発に力を入れていたのをクリアは知っている。
『ディールーツ』は様々な種類の商品を取り扱っている為、いつからかこの国の催し物の際に『ディールーツ』の区画と呼ばれる組織の出店がまとまった販売スペースを出すようになっていた。
そんな区画の中の丁度中心辺りにある出店の一つで、クリアは今年の祭りの流れの様子を見る為少しだけ店に留まっていた。
「それにしても、今年は本当に例年以上に人が多いですね」
そんなクリアに、店員の一人が現在の街の様子の感想を述べるかのように話しかけた。
「ふふ、そうですね。もしかしたら今回の用意した在庫、一瞬で無くなってしまうかもしれませんね」
クリアは冗談めかして話しかけてきた店員に返した。
しかし、あながち例年の売上と今年の出している商品の質、そして祭りに参加している人々の数あたりをを考慮すると、本当に冗談抜きで短時間で全て捌き切る可能性もあるのだった。
一応、出店に置いてある商品の在庫以外にも、別途その半分ぐらいの在庫が倉庫にある。
出店の在庫が尽きた時それを持ってくるのがこの祭りでのクリアの仕事なのだった。
——それ以外の仕事は事前に全て片付けてある。
故に、その時が来るまでヒカリと祭りを回る事が許される、というわけだった。
クリア的にはさっさと全て捌き切って仕事を終わらせたいので、先程の冗談めかして言ったことはもしかしたらクリアの本心が漏れたのかもしれない……。
もちろん、シフト制を設けているので他の店員達が祭りを回れないわけでは無いが。
「ところで。クリアさん、今日はなんだが一段と服装に気合い入ってますね。よく似合ってますよ。それに妙にソワソワしているし。……もしかして、この後誰かと祭りを回る待ち合わせでもしてるんですか?」
「えっ⁉︎」
いきなりの店員の言葉に、ついクリアは動揺を隠し切れずビクっと肩を震わせてしまった。
……どうも的確に言い当てられるぐらいには無意識に態度に出してしまっていたらしい、と今更クリアは自覚させられることになった。
そんなクリアの反応に、店員はがっつり食い付いてくる。
「え、マジですか! 相手は誰なんです⁉︎」
詰め寄ってくる店員に対して恥ずかしさ半分、バレたらヒカリに迷惑をかけてしまうかもという思い半分でクリアは強引に話題を逸らす。
「ほ、ほら! そんなことより、次々とお客さんが来てますよ! あなたも対応の応援に行ってください!」
クリアの指示に「ちぇ~」とつまらなそうな顔を一瞬した店員は、すぐに接客用の笑顔に切り替えると既に客に対応している店員の中へと混ざっていった。
ヒカリとの約束の時間まで、後二十分程——。
ヒカリの提案で、組織の区画に入る手前にある休憩所として解放されている広場があり、その噴水の前で待ち合わせする事になっていた。
——そろそろ行かないと。
「それじゃ、後の対応よろしくお願いしますね!」
この人混みの中を進むとなると、交通誘導がしっかりされてるとはいえそれなりに時間を要するだろう。
次第に今クリアがいる出店も客への対応が忙しくなってきた為、店員達の返事は待たずにクリアは少し早めに出店から人混みの流れの中に飛び込んで行くのだった——。
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