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第50話 An Error Has Occurred
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あの時、後で出所を調べるために多めに持ち出したのが功を成した。
しかし、枷の効果はエレメンタルアームズには作用しないのか、レッドの火のルーツは大剣の形を保ったままだ。
どうやら、エレメンタルアームズという姿を構成しているのはルーツの意志であり、『所有者』のキャスティング能力は関係ないらしい。
——さあ、ひっくり返すなら今しかない!
枷はグリーンが体制を立て直し次第破壊されてしまうだろう。
あくまで、直接触れている者のキャスティング能力を狂わすだけであり、外部からの術式や武器による破壊自体は容易な物だ。
それ故、今まで保持してきた彼らからもらったエレメントを【放出】するなら今しか無い。
オリジナルの複合術式を命名できないなら、元からあるものを使えばいい。
火・風・水・雷のエレメントで繰り出せる術式は、無数にあるのだ。
「【炎雷の風渦】!」
火・雷・風属性のエレメントによる〈三重複合術式〉。
燃え盛る火炎と高出力で放出した豪雷を巻き込んだ竜巻が、まるで生物の如くこの闘技場内を縦横無尽に暴れ回る。
「バカな、三重複合術式だと⁉︎」
本来なら幾つもの属性のエレメントを重ね合わせ少しでもタイミングやキャスティングする量を誤れば成立しない複合術式。
当然、かけ合わせるエレメントの属性とキャスティングする人数が増えれば成功難易度が跳ね上がる性質上、三重以上の複合術式などそう易々と見る事など叶わない。
そんな大掛かりな術式をその名一つで、さらに言えばその身一つで行使するクリアに、グリーンが驚きを隠せず叫んだのも当然と言える。
——前に思い付いたこの術式をライズさん達に実行してもらって術式命名してもらっておいて良かった。
……その時クリアが死にかけたのは内緒の話だが。
この術式は一度放てば後はエレメントの作用が弱まるまでコントロールする必要すらないのが利点だ。
裏を返せば目標に当たるかは行使した本人すらわからないのだが、このような移動範囲が限られる闘技場であれば、その威力を存分に発揮できると言える。
さらに言えば、基となった風属性の術式である【貪る嵐】が組み込まれているため、半端な術式では【炎雷の風渦】を止めるどころか取り込まれてその勢いを増長する事になる。
つまり、この三重複合術式だけで、既にレッド、グリーン、ゴールドの攻撃を封じたようなものだった。
ブルーが【炎雷の風渦】の火炎の部分だけでも取り除くために水の術式を行使すれば、術式内の火炎は取り除けるだろう。
しかし、火炎を作り出す火のエレメントと丁度よく相殺できる量の水のエレメントをキャスティングできなければ、残りの水のエレメントを取り込み今度は水・雷・風属性の三重複合術式として『所有者』を襲うことになる。
——やっぱり、複合術式を使うには風属性が性質上便利だな。
一応、この術式は人ほどの直径で全長十メートルほどの竜巻がそこらを不規則に這いずるような動きで移動しているため、回避に集中すれば受けること無くやり過ごすことも可能ではある。
だが、その選択肢を取らせることこそクリアの狙いだった。
レッドにはめた枷を外す時間を与えず、更には反撃する時間も与えなければ、クリアは先程まで保持させられたエレメントをキャスティングして多数の術式を展開し反撃できる。
……そう、その選択肢を取らせることができたなら、だが。
【炎雷の風渦】が『所有者』側へ侵攻しているため、クリアからも彼らの姿ははっきりと捉えることができなかった。
その上、この三重複合術式がそう簡単に破られることは無いと過信していたことが、一番の誤算だった。
「っ、そんなのありですか!」
どうやら、グリーンという人物はルーツの力も相まって規格外のキャスティング能力を有しているらしい。
目の前で暴れ回る術式が立てる音で聞き取ることはできなかったが、クリアがそう叫んだ時には既にグリーンの行使したであろう新たな風属性の術式が、【炎雷の風渦】を取り込みながらクリアへ向かってくる。
——一属性の術式が三重複合術式を丸ごと取り込んでくるなんて有り得ないでしょう⁉︎
それがルーツありきで成せることなのかもはやわからないが、はっきりとわかるのはクリアが再び攻め手の主導権を奪われたという事だった。
名もわからない術式《竜巻》は、【炎雷の風渦】を取り込んだ上で明確にコントロールできるらしく。
クリアが回避しようと横に逸れて見せれば、クリアを追尾してくる。
——っ! 受けるしか無い!
ザ・クロの攻撃を彷彿とさせるが如く追尾してくる竜巻に対してクリアはありったけの【力】を左手に集約してその名を叫ぶようにして口にする。
「【消滅の左手】ォ‼︎」
【力】に触れた箇所から、グリーンの術式は少しずつ吸収されていく。
——よし、これならちゃんと吸収できる!
クリアの【無属性】の【力】は【分析】し【分解】し【吸収】する。
……それは、つまり。
「……そんな、ことって」
裏を返せば、【分析】できないものや【分解】が間に合わないエレメントは……【吸収】できない。
……それは、突然のことだった。
クリア吸収できると確信した術式は、まるでクリアを嘲笑うようにエレメントの構成を変化させ、【消滅の左手】を打ち砕きながらクリアに迫り。
派手な音を立ててクリアを飲み込んだ——。
しかし、枷の効果はエレメンタルアームズには作用しないのか、レッドの火のルーツは大剣の形を保ったままだ。
どうやら、エレメンタルアームズという姿を構成しているのはルーツの意志であり、『所有者』のキャスティング能力は関係ないらしい。
——さあ、ひっくり返すなら今しかない!
枷はグリーンが体制を立て直し次第破壊されてしまうだろう。
あくまで、直接触れている者のキャスティング能力を狂わすだけであり、外部からの術式や武器による破壊自体は容易な物だ。
それ故、今まで保持してきた彼らからもらったエレメントを【放出】するなら今しか無い。
オリジナルの複合術式を命名できないなら、元からあるものを使えばいい。
火・風・水・雷のエレメントで繰り出せる術式は、無数にあるのだ。
「【炎雷の風渦】!」
火・雷・風属性のエレメントによる〈三重複合術式〉。
燃え盛る火炎と高出力で放出した豪雷を巻き込んだ竜巻が、まるで生物の如くこの闘技場内を縦横無尽に暴れ回る。
「バカな、三重複合術式だと⁉︎」
本来なら幾つもの属性のエレメントを重ね合わせ少しでもタイミングやキャスティングする量を誤れば成立しない複合術式。
当然、かけ合わせるエレメントの属性とキャスティングする人数が増えれば成功難易度が跳ね上がる性質上、三重以上の複合術式などそう易々と見る事など叶わない。
そんな大掛かりな術式をその名一つで、さらに言えばその身一つで行使するクリアに、グリーンが驚きを隠せず叫んだのも当然と言える。
——前に思い付いたこの術式をライズさん達に実行してもらって術式命名してもらっておいて良かった。
……その時クリアが死にかけたのは内緒の話だが。
この術式は一度放てば後はエレメントの作用が弱まるまでコントロールする必要すらないのが利点だ。
裏を返せば目標に当たるかは行使した本人すらわからないのだが、このような移動範囲が限られる闘技場であれば、その威力を存分に発揮できると言える。
さらに言えば、基となった風属性の術式である【貪る嵐】が組み込まれているため、半端な術式では【炎雷の風渦】を止めるどころか取り込まれてその勢いを増長する事になる。
つまり、この三重複合術式だけで、既にレッド、グリーン、ゴールドの攻撃を封じたようなものだった。
ブルーが【炎雷の風渦】の火炎の部分だけでも取り除くために水の術式を行使すれば、術式内の火炎は取り除けるだろう。
しかし、火炎を作り出す火のエレメントと丁度よく相殺できる量の水のエレメントをキャスティングできなければ、残りの水のエレメントを取り込み今度は水・雷・風属性の三重複合術式として『所有者』を襲うことになる。
——やっぱり、複合術式を使うには風属性が性質上便利だな。
一応、この術式は人ほどの直径で全長十メートルほどの竜巻がそこらを不規則に這いずるような動きで移動しているため、回避に集中すれば受けること無くやり過ごすことも可能ではある。
だが、その選択肢を取らせることこそクリアの狙いだった。
レッドにはめた枷を外す時間を与えず、更には反撃する時間も与えなければ、クリアは先程まで保持させられたエレメントをキャスティングして多数の術式を展開し反撃できる。
……そう、その選択肢を取らせることができたなら、だが。
【炎雷の風渦】が『所有者』側へ侵攻しているため、クリアからも彼らの姿ははっきりと捉えることができなかった。
その上、この三重複合術式がそう簡単に破られることは無いと過信していたことが、一番の誤算だった。
「っ、そんなのありですか!」
どうやら、グリーンという人物はルーツの力も相まって規格外のキャスティング能力を有しているらしい。
目の前で暴れ回る術式が立てる音で聞き取ることはできなかったが、クリアがそう叫んだ時には既にグリーンの行使したであろう新たな風属性の術式が、【炎雷の風渦】を取り込みながらクリアへ向かってくる。
——一属性の術式が三重複合術式を丸ごと取り込んでくるなんて有り得ないでしょう⁉︎
それがルーツありきで成せることなのかもはやわからないが、はっきりとわかるのはクリアが再び攻め手の主導権を奪われたという事だった。
名もわからない術式《竜巻》は、【炎雷の風渦】を取り込んだ上で明確にコントロールできるらしく。
クリアが回避しようと横に逸れて見せれば、クリアを追尾してくる。
——っ! 受けるしか無い!
ザ・クロの攻撃を彷彿とさせるが如く追尾してくる竜巻に対してクリアはありったけの【力】を左手に集約してその名を叫ぶようにして口にする。
「【消滅の左手】ォ‼︎」
【力】に触れた箇所から、グリーンの術式は少しずつ吸収されていく。
——よし、これならちゃんと吸収できる!
クリアの【無属性】の【力】は【分析】し【分解】し【吸収】する。
……それは、つまり。
「……そんな、ことって」
裏を返せば、【分析】できないものや【分解】が間に合わないエレメントは……【吸収】できない。
……それは、突然のことだった。
クリア吸収できると確信した術式は、まるでクリアを嘲笑うようにエレメントの構成を変化させ、【消滅の左手】を打ち砕きながらクリアに迫り。
派手な音を立ててクリアを飲み込んだ——。
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