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第52話 ホルダー
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突然の出来事に、『所有者』達はその攻撃を放ったザ・クロに警戒はしながらも、視線を釘付けにされたようだった。
——なんでわざわざ枷を外したんだ⁉︎
心の中のクリアの思考に、相変わらず反応を返さないザ・クロは楽しそうに——恐らく笑みを浮かべながら——『所有者』達に声をかける。
「クリアはまァ、色々あってそんな小細工をしたんだろうがこの俺にはそんなハンデ必要ねェからなァ」
「だからレッドの枷を破壊したと? 事情は知らんが、俺達の優勢であることに変わりはないぞ」
グリーンの返す言葉に、ザ・クロは「クックック」と頭に掌を当てて笑って返した。
それがどういう意図で笑ったのか、あの四人にはわかっているだろう。
要するにザ・クロは、「あの程度の術式ですら無い攻撃に反応できなかったお前らが何を言っているんだァ?」そう言いたいのだ。
実際、光のエレメントの作用が阻害されていないこの外に建設された闘技場内で〈金属性〉で生成された枷を〈闇属性〉で破壊したということも、ザ・クロの力を証明するには充分すぎる魅せ方だったかもしれない。
その証明を確固たるものにするかのように、先ほどの攻撃の軌跡を描いた傷が石壁に深く刻み込まれている。
「まァ、このバカがまんまとそこの王様の術中にハマったのか、それとも単に事情を知らないてめェらがクリア相手なら戦って問題ないと思ったのか知らねェが。結局反対していた火のと雷のも結構ノリノリで戦ってくれてるよなァ」
——ザ・クロ、キミはいつからボクの中から事情を把握していたんだ。
「「…………」」
ザ・クロの言葉に、レッドとゴールドは何も言い返せないのか、少しだけ目を逸らしてみせた。
そんな二人に代わって答えたのは、王国側の者だった。
「二人にはあたしから説得させてもらったのよ。そもそも彼らの目的は我々と一致しているのだし、今更とやかく言われる筋合いはなのではなくて? それに、クリアは結局自分の意思でこの場に立ったのだし」
そもそも二人が反対気味だったのは、不意打ちの様にこの戦いに持ち込まれたからだ。
クリアも期待はしたが、向こう側の戦う理由が戦わない理由を上回らなかった。
……ただそれだけだ。
「まァ、それを聞いて安心したぜェ。……それなら、クリアにも『所有者』にも遺恨は残らないだろうしなァ!」
言い終わったぐらいに、ザ・クロが指を鳴らせば、彼を中心に小さな黒い塊が空中に次々と現れ闘技場の空間を満たしていく。
徐々にザ・クロ側の空間が闇に閉ざされていく中、その意図に気付いたのか。
レッドとグリーンはそれぞれ武器を構えてザ・クロの方へと飛び出した。
距離を詰めていく二人を援護するようにゴールドが身体強化をするために雷を追うように放つと、二人は更に加速してザ・クロへと迫り来る。
「……遅ェよ。それでもあいつらに選ばれた『所有者』かァ?」
ザ・クロがぽつりと溢した言葉は、クリア以外には届かなかっただろう。
「【フレア・ブレード】!」
「【旋風刃】!」
再び炎を纏った大剣と触れるだけで切り裂かれそうな風を渦を巻くように刀身に纏わせた二人の斬撃がザ・クロに振るわれる。
しかし、それはザ・クロの言葉通り、既に遅かった。
ザ・クロが空間を侵食するよう展開した闇のエレメントの塊は、既にザ・クロの周りを覆い尽くし。
光のエレメントの作用を遮った闇のエレメントの塊が他の塊に作用を与え急速に分子の増殖を繰り返すことで、もはやグリーンの【烈風刃】はおろか、
光源属性である火属性の術式であるレッドの【フレア・ブレード】すら簡単に止めてしまった。
「こんなのも破れねェのか。ほんと、てめェらは『所有者』とは名ばかりだなァ。……まァ、そもそもホルダーとか言う言葉自体が誤用されているんだがなァ」
最後の方はレッド達に聞こえないよう、まるでクリアに聞かせるように小声で口にしたザ・クロは何故か不機嫌そうで。
——誤用?
そこからは、もはや『所有者』達には絶望的と言わざるを得ない状況だった。
レッドとグリーンの斬撃系の術式、ゴールドとブルーも合わせた四人の放出系の術式をいくら放っても強固たる要塞と化した闇の領域は侵攻を許すことは無く。
そして——。
「だから人間なんぞこの程度だと言っただろォがよォ。まァ、体の方もそろそろタイムリミットみてェだし、さっさと終わらせるかァ」
クリアには、ザ・クロの独り言の意味がよく理解できなかった。
そもそも、何故急にザ・クロは現れたのか。
もはやクリアの疑問に答える気はないザ・クロにこれ以上聞くことはしなかったが、後で応対してくれるのならば、彼に聞いてみようとクリアは思った。
……ただし、この戦いの後、自分が生きていればの話だが。
「くそっ! オレらの攻撃がことごとく通用しないなんてありかよ! しかも相手は戦闘に適してない闇属性っスよ⁉︎」
ゴールドがまるで愚痴をこぼすかのように言う。
——正直、ボクも信じられませんよゴールドさん。
ルーツを持つ者同士の戦いで、四つのルーツ、それも全員がエレメンタルアームズに変化させるまで力を引き出しているにも関わらず、ザ・クロはエレメンタルアームズすら出していない。
それなのに、この戦力差だ。
「じャあな、偽物共ォ」
ザ・クロが両手を体の前に構えると、展開されていた闇のエレメントが掌の前に収束する様集まり始める。
「っ! デカいのが来るぞ! みんな、自分の持てる最大威力の術式で迎えうつんだ!」
ザ・クロの攻撃に反応したレッドが、大声で叫ぶ。
——ちょっと待ってくれ! その威力だとレッドさん達どころか観客席の人達まで死んでしまう!
「……知ったことかよォ」
ニヤリと笑ったザ・クロが答えるように言ったことで、クリアは今までの心の声が聞こえていたことに気付いたが、それはもう今は関係ない。
「あばよ。【漆黒に染まる暴君の路】ォ!」
ザ・クロが術式名を口にした瞬間。
正面に存在する全てを消し去るような多量の闇分子が、まるで「逃がさない」と言わんばかりに闘技場全てを覆うように広がりながら『所有者』達に向けて放たれた——。
——なんでわざわざ枷を外したんだ⁉︎
心の中のクリアの思考に、相変わらず反応を返さないザ・クロは楽しそうに——恐らく笑みを浮かべながら——『所有者』達に声をかける。
「クリアはまァ、色々あってそんな小細工をしたんだろうがこの俺にはそんなハンデ必要ねェからなァ」
「だからレッドの枷を破壊したと? 事情は知らんが、俺達の優勢であることに変わりはないぞ」
グリーンの返す言葉に、ザ・クロは「クックック」と頭に掌を当てて笑って返した。
それがどういう意図で笑ったのか、あの四人にはわかっているだろう。
要するにザ・クロは、「あの程度の術式ですら無い攻撃に反応できなかったお前らが何を言っているんだァ?」そう言いたいのだ。
実際、光のエレメントの作用が阻害されていないこの外に建設された闘技場内で〈金属性〉で生成された枷を〈闇属性〉で破壊したということも、ザ・クロの力を証明するには充分すぎる魅せ方だったかもしれない。
その証明を確固たるものにするかのように、先ほどの攻撃の軌跡を描いた傷が石壁に深く刻み込まれている。
「まァ、このバカがまんまとそこの王様の術中にハマったのか、それとも単に事情を知らないてめェらがクリア相手なら戦って問題ないと思ったのか知らねェが。結局反対していた火のと雷のも結構ノリノリで戦ってくれてるよなァ」
——ザ・クロ、キミはいつからボクの中から事情を把握していたんだ。
「「…………」」
ザ・クロの言葉に、レッドとゴールドは何も言い返せないのか、少しだけ目を逸らしてみせた。
そんな二人に代わって答えたのは、王国側の者だった。
「二人にはあたしから説得させてもらったのよ。そもそも彼らの目的は我々と一致しているのだし、今更とやかく言われる筋合いはなのではなくて? それに、クリアは結局自分の意思でこの場に立ったのだし」
そもそも二人が反対気味だったのは、不意打ちの様にこの戦いに持ち込まれたからだ。
クリアも期待はしたが、向こう側の戦う理由が戦わない理由を上回らなかった。
……ただそれだけだ。
「まァ、それを聞いて安心したぜェ。……それなら、クリアにも『所有者』にも遺恨は残らないだろうしなァ!」
言い終わったぐらいに、ザ・クロが指を鳴らせば、彼を中心に小さな黒い塊が空中に次々と現れ闘技場の空間を満たしていく。
徐々にザ・クロ側の空間が闇に閉ざされていく中、その意図に気付いたのか。
レッドとグリーンはそれぞれ武器を構えてザ・クロの方へと飛び出した。
距離を詰めていく二人を援護するようにゴールドが身体強化をするために雷を追うように放つと、二人は更に加速してザ・クロへと迫り来る。
「……遅ェよ。それでもあいつらに選ばれた『所有者』かァ?」
ザ・クロがぽつりと溢した言葉は、クリア以外には届かなかっただろう。
「【フレア・ブレード】!」
「【旋風刃】!」
再び炎を纏った大剣と触れるだけで切り裂かれそうな風を渦を巻くように刀身に纏わせた二人の斬撃がザ・クロに振るわれる。
しかし、それはザ・クロの言葉通り、既に遅かった。
ザ・クロが空間を侵食するよう展開した闇のエレメントの塊は、既にザ・クロの周りを覆い尽くし。
光のエレメントの作用を遮った闇のエレメントの塊が他の塊に作用を与え急速に分子の増殖を繰り返すことで、もはやグリーンの【烈風刃】はおろか、
光源属性である火属性の術式であるレッドの【フレア・ブレード】すら簡単に止めてしまった。
「こんなのも破れねェのか。ほんと、てめェらは『所有者』とは名ばかりだなァ。……まァ、そもそもホルダーとか言う言葉自体が誤用されているんだがなァ」
最後の方はレッド達に聞こえないよう、まるでクリアに聞かせるように小声で口にしたザ・クロは何故か不機嫌そうで。
——誤用?
そこからは、もはや『所有者』達には絶望的と言わざるを得ない状況だった。
レッドとグリーンの斬撃系の術式、ゴールドとブルーも合わせた四人の放出系の術式をいくら放っても強固たる要塞と化した闇の領域は侵攻を許すことは無く。
そして——。
「だから人間なんぞこの程度だと言っただろォがよォ。まァ、体の方もそろそろタイムリミットみてェだし、さっさと終わらせるかァ」
クリアには、ザ・クロの独り言の意味がよく理解できなかった。
そもそも、何故急にザ・クロは現れたのか。
もはやクリアの疑問に答える気はないザ・クロにこれ以上聞くことはしなかったが、後で応対してくれるのならば、彼に聞いてみようとクリアは思った。
……ただし、この戦いの後、自分が生きていればの話だが。
「くそっ! オレらの攻撃がことごとく通用しないなんてありかよ! しかも相手は戦闘に適してない闇属性っスよ⁉︎」
ゴールドがまるで愚痴をこぼすかのように言う。
——正直、ボクも信じられませんよゴールドさん。
ルーツを持つ者同士の戦いで、四つのルーツ、それも全員がエレメンタルアームズに変化させるまで力を引き出しているにも関わらず、ザ・クロはエレメンタルアームズすら出していない。
それなのに、この戦力差だ。
「じャあな、偽物共ォ」
ザ・クロが両手を体の前に構えると、展開されていた闇のエレメントが掌の前に収束する様集まり始める。
「っ! デカいのが来るぞ! みんな、自分の持てる最大威力の術式で迎えうつんだ!」
ザ・クロの攻撃に反応したレッドが、大声で叫ぶ。
——ちょっと待ってくれ! その威力だとレッドさん達どころか観客席の人達まで死んでしまう!
「……知ったことかよォ」
ニヤリと笑ったザ・クロが答えるように言ったことで、クリアは今までの心の声が聞こえていたことに気付いたが、それはもう今は関係ない。
「あばよ。【漆黒に染まる暴君の路】ォ!」
ザ・クロが術式名を口にした瞬間。
正面に存在する全てを消し去るような多量の闇分子が、まるで「逃がさない」と言わんばかりに闘技場全てを覆うように広がりながら『所有者』達に向けて放たれた——。
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