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第54話 目覚め
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『自動修復プログラム起動……実行可能。コレヨリ身体ヘノダメージヲ取リ除ク修復フェーズヘト移行シマス。……終了予定時間ハオヨソ十時間後デス』
——いったい何を……言っているんだ?
何も感じられない、意識もはっきりしない中で唐突に直接頭の中で響くように聞こえた、まるで機械的に作られた音声のよくわからない言葉の羅列に、クリアは当然のように疑問を浮かべた。
しかし、先ほどの言葉を最後に、それ以上音声は聞こえる事は無かった。
——今は、どんな状態に……っ⁉︎
一切の感覚の無い中、何故か意識だけは徐々に取り戻したクリアは、最後に自分が意識を手放した時の記憶を蘇らせ、焦燥感に駆られる。
——ボスは……ミヤは、ヒカリは無事なのか⁉︎
一応、クリアが最後に行使した【次元移動の引き金】——術式使用者と、その者を中心に任意の存在をあらかじめ指定しておいた地点まで強制的に移動する空間移動術式である——で『ディールーツ』組織本部内、空間学部門研究室……要するに「どこへでもドア」の部屋まで移動してきたところまでは辛うじてクリアの記憶内に残っていた。
それからの記憶は一切無く。
自分の体も、他の情勢がどうなったのかもわからない。
——……ボクは、死んだのか?
一切の感覚が無いこの状況が、俗に言う「魂」だけの状態なのだとしたら。
——いや、そんなものは、無い。……無いはずだ。
クリアは今まで吸収しては放出してきた人というモノを再構築していたことを思い出し、にわかには信じがたい魂という概念を否定した。
この世界は全てエレメントで構成されている。
だからこそ、【無属性】の【力】で人を吸収できるし、放出して再構築する形で出すことができるのだ。
クリアが再構築する際に一種類だけ未知のエレメントが人を構築する中に存在していることは知っているが、それが魂などと言うものではないという確信がクリアの中にはあった。
——そもそも、魂という概念があるなら、ボクの使命はとっくに……。
そこまで考えて、クリアは自分の思考を濁すように考える事をやめた。
確かにこの世界には、無数の種類のエレメントが存在する。
中には発見、または明確に正体が明かされていないエレメントもまだあるかも知れない。
その中に、魂と呼ばれる存在に関与しているエレメントがあるとすれば。
心のどこかでそうであればいいなとは思うことがあれど、クリアがそれに固執した事は無かった。
——あれ……また意識が……。
先程まである程度はっきりとしていた意識が、再びまどろむ時のように遠のいていくのをクリアは認識する。
『修復フェーズ終了マデ残り……』
先程聞こえた音声が聞こえた時には、既に最後まで聞くことは叶わず。
クリアはその音声が最後まで発する音声を聞き取る前に、再び意識を手放した——。
先程まで感覚のなかったクリアの左側から、ガラス越しに女性二人が話しているのが聞こえてくる。
「……ですので、何度も言っていますがクリア様が目覚めるのはいつになるかわからないのです。ヒカリさん、あなたもいつまでもここにいる訳には行かないでしょう?」
「でも、それでも! クリアが目が覚めるまでそばについていてあげたいんです!」
「しかし……」
一人は、組織の医療部門の主任の声だ。
そして、もう一人の声はいつも聞いてきたあの子の声で。
クリアは自分の口元を覆う何かの感触と、身体中を後ろから優しく支えられている感覚、そして体の前面を覆うように柔らかい物が乗せられている感覚を得て、今の自分が組織内にある医療施設で寝かされているということに気付く。
——とりあえず、ボクはまだ生きていたらしい。
ふぅ、と心の中で安堵のため息を吐いた。
何故心の中で吐いたかといえば、意識も感覚もあるがまだ自分の言う事を体が聞かないためだ。
意識は取り戻せたわけだが、肝心の身体へのダメージはまだ完全に取り除けた訳では無いらしい。
というのも、ベットなどの感触と同時にダメージからくる痛みという感覚までそれこそ体中から襲いかかってきたからだ。
それでも、『セインテッド』で術式を受けた時よりは幾分かましな痛みになったとクリアには思えた。
——どうやら、体は順調に回復に向かっているらしい。
しかし、そうなるとクリアには気になることが沸々と浮かんでくる。
自分がどれほどの間眠っていたのか。
クリアが記憶している中では未だ意識を取り戻していなかったミヤは無事なのか。
そして、『セインテッド王国』の一方的な協定決裂によって発生した『ディールーツ』の今の立ち位置はどうなっているのか。
答えを知ろうにも、目を開けることすらできない今の体ではどうすることもできない。
痛みの程度的には、目を開けるぐらいはできそうなものだが、何か外部的な要因があるのだろうとクリアは思うことにした。
そんな中、クリアは一つ思い出したかのように心の中で語りかける。
——ザ・クロ。もし聞こえてたら、応えて欲しい。
そう、クリアの中にいるはずのザ・クロへの交信だ。
もしかしたらザ・クロなら、クリアが眠っている間にも外の状況が把握できているかもしれないと思ったのだ。
そんなクリアの呼びかけに、少しだけ間を置いて反応が返ってくる。
『……よォ、やっとお目覚めかァ』
どうやら、うんともすんとも言わなかった以前と違い、まだザ・クロと言葉? を交わすことはできたことに、クリアは安心した。
——おはよう。まだ体は動かないけど、何とか生きていられたみたい。
『まァ、俺もお前には生きててもらわないと貸しを返してもらえなくて困るところだったしなァ』
——そうだね。あの時は力を貸してくれてありがとう。
『……ケッ』
素直なクリアの感謝の言葉に、ザ・クロは正反対の反応で返した。
——ところで、ザ・クロはボクが眠っている間ずっと意識はあったの?
『まァな。だが、お前が考えているような情報は持ってねェぞォ。
体を奪っても今のお前のように動かすこともままならねェ状況だったからなァ。
わかってるのはお前が寝ている間に聞こえてきた話の内容とあの娘がずっとそこにいたらしいことだけだァ』
——いったい何を……言っているんだ?
何も感じられない、意識もはっきりしない中で唐突に直接頭の中で響くように聞こえた、まるで機械的に作られた音声のよくわからない言葉の羅列に、クリアは当然のように疑問を浮かべた。
しかし、先ほどの言葉を最後に、それ以上音声は聞こえる事は無かった。
——今は、どんな状態に……っ⁉︎
一切の感覚の無い中、何故か意識だけは徐々に取り戻したクリアは、最後に自分が意識を手放した時の記憶を蘇らせ、焦燥感に駆られる。
——ボスは……ミヤは、ヒカリは無事なのか⁉︎
一応、クリアが最後に行使した【次元移動の引き金】——術式使用者と、その者を中心に任意の存在をあらかじめ指定しておいた地点まで強制的に移動する空間移動術式である——で『ディールーツ』組織本部内、空間学部門研究室……要するに「どこへでもドア」の部屋まで移動してきたところまでは辛うじてクリアの記憶内に残っていた。
それからの記憶は一切無く。
自分の体も、他の情勢がどうなったのかもわからない。
——……ボクは、死んだのか?
一切の感覚が無いこの状況が、俗に言う「魂」だけの状態なのだとしたら。
——いや、そんなものは、無い。……無いはずだ。
クリアは今まで吸収しては放出してきた人というモノを再構築していたことを思い出し、にわかには信じがたい魂という概念を否定した。
この世界は全てエレメントで構成されている。
だからこそ、【無属性】の【力】で人を吸収できるし、放出して再構築する形で出すことができるのだ。
クリアが再構築する際に一種類だけ未知のエレメントが人を構築する中に存在していることは知っているが、それが魂などと言うものではないという確信がクリアの中にはあった。
——そもそも、魂という概念があるなら、ボクの使命はとっくに……。
そこまで考えて、クリアは自分の思考を濁すように考える事をやめた。
確かにこの世界には、無数の種類のエレメントが存在する。
中には発見、または明確に正体が明かされていないエレメントもまだあるかも知れない。
その中に、魂と呼ばれる存在に関与しているエレメントがあるとすれば。
心のどこかでそうであればいいなとは思うことがあれど、クリアがそれに固執した事は無かった。
——あれ……また意識が……。
先程まである程度はっきりとしていた意識が、再びまどろむ時のように遠のいていくのをクリアは認識する。
『修復フェーズ終了マデ残り……』
先程聞こえた音声が聞こえた時には、既に最後まで聞くことは叶わず。
クリアはその音声が最後まで発する音声を聞き取る前に、再び意識を手放した——。
先程まで感覚のなかったクリアの左側から、ガラス越しに女性二人が話しているのが聞こえてくる。
「……ですので、何度も言っていますがクリア様が目覚めるのはいつになるかわからないのです。ヒカリさん、あなたもいつまでもここにいる訳には行かないでしょう?」
「でも、それでも! クリアが目が覚めるまでそばについていてあげたいんです!」
「しかし……」
一人は、組織の医療部門の主任の声だ。
そして、もう一人の声はいつも聞いてきたあの子の声で。
クリアは自分の口元を覆う何かの感触と、身体中を後ろから優しく支えられている感覚、そして体の前面を覆うように柔らかい物が乗せられている感覚を得て、今の自分が組織内にある医療施設で寝かされているということに気付く。
——とりあえず、ボクはまだ生きていたらしい。
ふぅ、と心の中で安堵のため息を吐いた。
何故心の中で吐いたかといえば、意識も感覚もあるがまだ自分の言う事を体が聞かないためだ。
意識は取り戻せたわけだが、肝心の身体へのダメージはまだ完全に取り除けた訳では無いらしい。
というのも、ベットなどの感触と同時にダメージからくる痛みという感覚までそれこそ体中から襲いかかってきたからだ。
それでも、『セインテッド』で術式を受けた時よりは幾分かましな痛みになったとクリアには思えた。
——どうやら、体は順調に回復に向かっているらしい。
しかし、そうなるとクリアには気になることが沸々と浮かんでくる。
自分がどれほどの間眠っていたのか。
クリアが記憶している中では未だ意識を取り戻していなかったミヤは無事なのか。
そして、『セインテッド王国』の一方的な協定決裂によって発生した『ディールーツ』の今の立ち位置はどうなっているのか。
答えを知ろうにも、目を開けることすらできない今の体ではどうすることもできない。
痛みの程度的には、目を開けるぐらいはできそうなものだが、何か外部的な要因があるのだろうとクリアは思うことにした。
そんな中、クリアは一つ思い出したかのように心の中で語りかける。
——ザ・クロ。もし聞こえてたら、応えて欲しい。
そう、クリアの中にいるはずのザ・クロへの交信だ。
もしかしたらザ・クロなら、クリアが眠っている間にも外の状況が把握できているかもしれないと思ったのだ。
そんなクリアの呼びかけに、少しだけ間を置いて反応が返ってくる。
『……よォ、やっとお目覚めかァ』
どうやら、うんともすんとも言わなかった以前と違い、まだザ・クロと言葉? を交わすことはできたことに、クリアは安心した。
——おはよう。まだ体は動かないけど、何とか生きていられたみたい。
『まァ、俺もお前には生きててもらわないと貸しを返してもらえなくて困るところだったしなァ』
——そうだね。あの時は力を貸してくれてありがとう。
『……ケッ』
素直なクリアの感謝の言葉に、ザ・クロは正反対の反応で返した。
——ところで、ザ・クロはボクが眠っている間ずっと意識はあったの?
『まァな。だが、お前が考えているような情報は持ってねェぞォ。
体を奪っても今のお前のように動かすこともままならねェ状況だったからなァ。
わかってるのはお前が寝ている間に聞こえてきた話の内容とあの娘がずっとそこにいたらしいことだけだァ』
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