エレメント・ルーツ〜世界の全ては属性(エレメント)でできていますが【無属性】のボクは何者ですか?〜

星野 大介

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第64話 知るべきこと6

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「うん、これでよし」
 
 イエナに案内され城の医療室に来たクリアは、一人、また一人と治療をし全員の体に残っていた〈負属性〉をあらかた取り除くと、手を叩き合わせる。
 
『……ルーツを奪うチャンスをみすみす逃してんじゃねェぞ』
 
 途中、ザ・クロからそんな忠告の声が聞こえたが、クリアは聞く耳持たずレッド達を治療するだけに専念した。
 
 なんてことはない。
 
 ただ、クリアがこんな相手の弱みにつけ込むというそういった手段でルーツを奪うのが嫌だっただけだ。
 
 クリアには何故に組織がルーツの回収を手段を選ばず行いはじめたのかはわからないが。
 
 クリアはクリアのやり方で『所有者かれら』からルーツを回収すると決めた。
 
 それに、今レッド達からルーツを奪い、イエナと取り引きを違えられても困る。
 
 あくまで今のクリアの優先事項はミヤが目を覚まさないことに対する原因究明だ。
 
「さて、手は施しましたがレッドさん達が目を覚ますのはもう少し先でしょう。……今目を覚まされても面倒なので」
「わかりました」
 
 そうは答えるも、イエナは言葉とは裏腹に少し曇った表情でクリアに返した。
 
 恐らく本当に目を覚ました姿を見るまでその心配する気持ちが消えないのだろう。
 
 そんなイエナの気持ちは、流石にクリアも見透かしている。
 
 ……故に。
 
「ただし、交渉をしなければならないので、彼女・・だけは目が覚める程度には治療しておきましたよ」
 
 クリアが言うと同じくして、病室のベッドに横たわっていたブルーが起き上がる。
 
 ブルーは目覚めたばかりで頭が回らない中でも今の状況を確認する為辺りを見回し、そしてすぐに驚愕の表情を浮かべる。
 
「クリア……⁉︎ 何故ここに⁉︎ それにイエナから離れなさい!」
 
 クリアの存在を確認したブルーはすぐさま自分のエレメンタルアームズを出して術式を行使しようとする。
 
 しかし、それより早く【不可視疑の一部パート・オブ・インスペリアス】でクリアがブルーの体を拘束し、空中に持ち上げ締め付ける。
 
 それなりに強く締め上げているせいか、ブルーは集中力を削がれ術式名無しで行使しようとしていた術式は形を失い消滅した。
 
 もっとも、クリアは術式名を口にしようものならすぐさまそれを止めるため口も封じるつもりだったが。
 
「いきなりご挨拶ですね……」
「くぅ……! イエナ、何故そいつと一緒にいるの⁉︎ 早く離れて!」
 
 珍しく冷静さを失っているようで、ブルーはそもそもイエナとクリアが隣り合って立っていた理由を考えることもしなかったらしい。
 
 それは、クリアをあの一戦から完全に危険人物として見ているのだろうと考えられる。
 
「落ち着いてください。まずは無駄な抵抗をやめてボクの話を聞いて欲しいんです。それ以上抵抗するなら……わかりますよね?」
 
 クリアがちらりとイエナを見て言えば、ブルーは抜け出そうともがいていた体の力を抜きクリアに身を任せる。
 
 抵抗の意志を無くしたブルーを元のベッドの上に戻すと、クリアは要件を口にする。
 
「ブルーさん、ボクは必要な情報を得る為にここに来ました。あなたを治療したのも、必要だったからに過ぎません」
 
 隣にいるイエナが何か言いたげにこちらを見てくるが、クリアは気にせず続ける。
 
「こうしてこちらはイエナ王女の身柄を確保することに成功しました。無事に王女を返して欲しければ、ボクが提示する情報を提供して頂きたい。そうですね……期限は明日までに」
 
 あくまで一方的に話すクリアに、ブルーはなにも答えない。
 
「ちなみに期限を過ぎても何も報告が無い場合、一日過ぎるごとにあなた方のルーツを一つずつ回収させてもらいます。
ボクは今すぐにでも治療で取り除いたあなた方のダメージをお返しすることもできる。
そして最終的に五つ・・のルーツ分の日数を過ぎても何も無いなら……この国は役に立たないモノとして全てを消し去ります。賢明なあなたならわかりますよね?」
 
 ブルーがこくりと頷いて返したことを確認すると、クリアは要求する情報を彼女に伝え、イエナと共に城内そのばから姿を消した——。
 
 
「何故あんな言い方を?」

 組織につくと藪から棒にクリアにイエナは聞いてくる。
 
 レッド達を治療したことについて言っているのだろう。
 
「……嘘は言ってないでしょう?」
 
 それに、王女自ら敵対関係者クリアに懇願したと知られれば彼女の立場そのものが危うい。
 
 いくら優しさに溢れることであっても、それが許される立場であるかはまた別だ。
 
 クリア的にもルーツを回収してこなかった言い訳りゆうにできる上、後々弁明する面倒を考えれば自分が悪人になった方が楽だと考えた結果だ。
 
 それに、しつこいようだがイエナにとって人生で一度しかない日に散々な目にあったのだ。
 
 イエナを庇うそれくらいのことは、してあげてもいいとクリアは思ったのだ。
 
 そんなクリアの気持ちを読み取ったのか汲んだのか。
 
 イエナはそれ以上なにも言わずにクリアについてくるだけだった。
 
 ——さて、ここに連れてきた以上、イエナ王女の部屋を用意等やることは沢山ある。
 
 可能であれば早めにブルーが情報を掴んで提供してくれるとありがたいとクリアは思いながら、今は連れてきた王女の為にすべきことをひとつひとつこなしていくのだった。
 
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