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第89話 模擬訓練2 叱責とすれ違う思い
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「【炎雷の風渦光】!」
——いきなり四重術式か!
以前クリアが見せた【炎雷の風渦】に更に光属性の光線を加えることで風の渦から先に標的を怯ませつつダメージを与えてより確実に炎雷の風の渦を叩き込むヒカリが考案したらしい術式だった。
『おォ、やっぱあの女マジモンの天才だなァ』
感心するようにザ・クロが言う。
ルーツから見てもヒカリのキャスティング能力は目を見張るものらしい。
そう、わざわざクリアの視野を通して感想を伝えに来る程には。
しかしクリアも感心しているだけではいられない。
本気で来るように言った手前、言葉通りヒカリが放った四重術式のこの術式がこのまま直撃すればいくらクリアとはいえど当然死は免れない。
しかし、これはあくまでヒカリの戦闘訓練であり、クリアの【無属性】で捌くのでは実戦を想定した訓練にはならない。
故に。
「【闇の盾】!」
既に多少光線は受けているが本命の【炎雷の風渦】の部分さえ直撃しなければいいという基本に忠実な対応をクリアは試みた。
結果は……ヒカリの【炎雷の風渦光】に軍配が上がった。
元々四重術式かつ、闇のエレメントを弱体化する光源の特性を持つエレメントである光・火・雷の属性を含む【炎雷の風渦光】に闇のエレメントを固めただけの壁が敵う通りがあるはずもなく。
元に光線が小さな穴を空け、続くようにぶつかった炎と雷を纏う渦は闇の壁にぶつかるなり即瓦解させた。
粉々に砕けた【闇の盾】のエレメントを更に取り込み、まるで五重術式に進化したやうに進行方向上の全てを破壊するがのようにヒカリの術式は進み続ける。
流石にやり過ぎたと思ったのか、ヒカリは途中で【炎雷の風渦光】の術式を解除
——本来術式はその属性作用の命令を完遂するか途中で作用が起こせない程何らかの要因により分子が不足するまで止まらないが、
実は故意に自分で術式内のエレメントに別の作用をキャスティングすることで術式を止める事はできたりする。
……できるキャスティング能力が備わっている人物でしかできないが——した。
ヒカリは慌てた様子で術式で多少荒れてしまったこの部屋内をキョロキョロと見渡している。
恐らくクリアの身を案じてその姿探しているのだろう。
そんな探されているクリアはと言えば。
何事も無かったように術式抉られた、要するに【炎雷の風渦光】の進行した筈の床の上に立っていた。
ただし、その姿はヒカリの目に映っていないが。
それ故ヒカリは慌てた……いや、あまりにも見つけられない事で段々曇っていく顔でクリアを探し続けているのだ。
間属性の術式【空間移行】は、その場から一切動けない代わりに一時的に体を別の次元空間に退避させる術式だ。
ただし、初めに設定した術式行使の時間が過ぎるまで術式を行使された存在も他の人達もお互いを認識できない。
間属性の術式は他のエレメントに比べて繊細な特性であり、無理にヒカリがやったように術式を止めようとすれば何が起こるかわからない危険がはらんでいる。
今回クリアがこの術式を行使する際に設定した時間はヒカリの【炎雷の風渦光】が効力を失う時間を見積もって少し長めに設定した。
故にこのようなすれ違いが発生しているのだが、クリアがヒカリが死ぬほど心配していたことを知るのは元の次元に戻った時だった。
後一歩で泣きじゃくりそうになっていたヒカリを落ち着かせるまで訓練は中断されたのだった。
「酷いよぉ! 私、本当にクリアのこと死なせちゃったと思って……ぐすっ」
「ごめんごめん。でも——」
クリアは若干泣き声になっているヒカリの額に人差し指の腹を当てて続ける。
「それは少し自信のつけ過ぎかな。確かにヒカリはすごい速度で成長しているけど、ボクや幹部の皆さんはヒカリよりも幾つもの修羅場をくぐってきたんだよ。
特にボクは『所有者』数人を同時に相手してきたんだ。
それで生きてるんだからヒカリはそんな心配はしなくていいんだよ」
心の中では心配してくれて嬉しいことを認めながらも、クリアはヒカリを叱責した。
今ヒカリが術式を解いたのは、彼女の優しさもあるがそれは甘さでもある。
ルーツを持たないヒカリはいくらガウスから受け取った指輪があるとはいえ、単純なエレメントをキャスティング出来る量は圧倒的にアークや『所有者』に劣っている。
ヒカリが本気で命を奪うつもりで放つ術式で通用するかどうかのレベルだろう。
それに、今の四重術式の行使とそれを強引に止めたことでかなり疲弊している筈だ。
一発強力な術式を行使してその後戦闘を継続できないなら、辛辣になるがアーク達との戦闘で戦力として数えるのは難しいとクリアは思う。
あげく、ヒカリを集中的に狙われた場合、クリアは彼女を守る以外に選択肢が無くなる。
——むず痒い。
やはりヒカリはアークとの決戦に投入すべきではないのではとクリアは思ってしまう。
『お前が過保護すぎるだけなんじゃねえのかァ?
ガウスの奴も幹部の連中も行けると思ってるからあいつの実戦投入を認めて訓練には付き合ってるんだろォが』
——それは、そうだけども。
突然のザ・クロからの進言を、クリアは素直に認めた。
そんなクリアの返しに言葉にはしてこなかったが、ザ・クロから「わかってるのなら」と言いたげな気持ちをクリアは感じ取った。
結局、ああは言ったがクリアもヒカリと同じなのだ。
彼女を失うのが怖い。
だから戦場に出したくない。
クリアの中に渦巻く自分勝手。
理解はしているがクリアはそれをヒカリが戦うと決めた時からずっと引きずっていた。
決して他の人には悟られないようにはしているが、決戦と時までそう長くはない。
クリアに、決断すべき時が迫る。
——いきなり四重術式か!
以前クリアが見せた【炎雷の風渦】に更に光属性の光線を加えることで風の渦から先に標的を怯ませつつダメージを与えてより確実に炎雷の風の渦を叩き込むヒカリが考案したらしい術式だった。
『おォ、やっぱあの女マジモンの天才だなァ』
感心するようにザ・クロが言う。
ルーツから見てもヒカリのキャスティング能力は目を見張るものらしい。
そう、わざわざクリアの視野を通して感想を伝えに来る程には。
しかしクリアも感心しているだけではいられない。
本気で来るように言った手前、言葉通りヒカリが放った四重術式のこの術式がこのまま直撃すればいくらクリアとはいえど当然死は免れない。
しかし、これはあくまでヒカリの戦闘訓練であり、クリアの【無属性】で捌くのでは実戦を想定した訓練にはならない。
故に。
「【闇の盾】!」
既に多少光線は受けているが本命の【炎雷の風渦】の部分さえ直撃しなければいいという基本に忠実な対応をクリアは試みた。
結果は……ヒカリの【炎雷の風渦光】に軍配が上がった。
元々四重術式かつ、闇のエレメントを弱体化する光源の特性を持つエレメントである光・火・雷の属性を含む【炎雷の風渦光】に闇のエレメントを固めただけの壁が敵う通りがあるはずもなく。
元に光線が小さな穴を空け、続くようにぶつかった炎と雷を纏う渦は闇の壁にぶつかるなり即瓦解させた。
粉々に砕けた【闇の盾】のエレメントを更に取り込み、まるで五重術式に進化したやうに進行方向上の全てを破壊するがのようにヒカリの術式は進み続ける。
流石にやり過ぎたと思ったのか、ヒカリは途中で【炎雷の風渦光】の術式を解除
——本来術式はその属性作用の命令を完遂するか途中で作用が起こせない程何らかの要因により分子が不足するまで止まらないが、
実は故意に自分で術式内のエレメントに別の作用をキャスティングすることで術式を止める事はできたりする。
……できるキャスティング能力が備わっている人物でしかできないが——した。
ヒカリは慌てた様子で術式で多少荒れてしまったこの部屋内をキョロキョロと見渡している。
恐らくクリアの身を案じてその姿探しているのだろう。
そんな探されているクリアはと言えば。
何事も無かったように術式抉られた、要するに【炎雷の風渦光】の進行した筈の床の上に立っていた。
ただし、その姿はヒカリの目に映っていないが。
それ故ヒカリは慌てた……いや、あまりにも見つけられない事で段々曇っていく顔でクリアを探し続けているのだ。
間属性の術式【空間移行】は、その場から一切動けない代わりに一時的に体を別の次元空間に退避させる術式だ。
ただし、初めに設定した術式行使の時間が過ぎるまで術式を行使された存在も他の人達もお互いを認識できない。
間属性の術式は他のエレメントに比べて繊細な特性であり、無理にヒカリがやったように術式を止めようとすれば何が起こるかわからない危険がはらんでいる。
今回クリアがこの術式を行使する際に設定した時間はヒカリの【炎雷の風渦光】が効力を失う時間を見積もって少し長めに設定した。
故にこのようなすれ違いが発生しているのだが、クリアがヒカリが死ぬほど心配していたことを知るのは元の次元に戻った時だった。
後一歩で泣きじゃくりそうになっていたヒカリを落ち着かせるまで訓練は中断されたのだった。
「酷いよぉ! 私、本当にクリアのこと死なせちゃったと思って……ぐすっ」
「ごめんごめん。でも——」
クリアは若干泣き声になっているヒカリの額に人差し指の腹を当てて続ける。
「それは少し自信のつけ過ぎかな。確かにヒカリはすごい速度で成長しているけど、ボクや幹部の皆さんはヒカリよりも幾つもの修羅場をくぐってきたんだよ。
特にボクは『所有者』数人を同時に相手してきたんだ。
それで生きてるんだからヒカリはそんな心配はしなくていいんだよ」
心の中では心配してくれて嬉しいことを認めながらも、クリアはヒカリを叱責した。
今ヒカリが術式を解いたのは、彼女の優しさもあるがそれは甘さでもある。
ルーツを持たないヒカリはいくらガウスから受け取った指輪があるとはいえ、単純なエレメントをキャスティング出来る量は圧倒的にアークや『所有者』に劣っている。
ヒカリが本気で命を奪うつもりで放つ術式で通用するかどうかのレベルだろう。
それに、今の四重術式の行使とそれを強引に止めたことでかなり疲弊している筈だ。
一発強力な術式を行使してその後戦闘を継続できないなら、辛辣になるがアーク達との戦闘で戦力として数えるのは難しいとクリアは思う。
あげく、ヒカリを集中的に狙われた場合、クリアは彼女を守る以外に選択肢が無くなる。
——むず痒い。
やはりヒカリはアークとの決戦に投入すべきではないのではとクリアは思ってしまう。
『お前が過保護すぎるだけなんじゃねえのかァ?
ガウスの奴も幹部の連中も行けると思ってるからあいつの実戦投入を認めて訓練には付き合ってるんだろォが』
——それは、そうだけども。
突然のザ・クロからの進言を、クリアは素直に認めた。
そんなクリアの返しに言葉にはしてこなかったが、ザ・クロから「わかってるのなら」と言いたげな気持ちをクリアは感じ取った。
結局、ああは言ったがクリアもヒカリと同じなのだ。
彼女を失うのが怖い。
だから戦場に出したくない。
クリアの中に渦巻く自分勝手。
理解はしているがクリアはそれをヒカリが戦うと決めた時からずっと引きずっていた。
決して他の人には悟られないようにはしているが、決戦と時までそう長くはない。
クリアに、決断すべき時が迫る。
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