ある日、森の中で彼女に出会った

レイちゃん

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プロローグ

”ざまぁ”する予定だったので

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「見たか?見たな?理解したな?
 …この大バカ者!」

学院の会議室、主任教授の大声が響く。
その”神の怒り”を受けているのは、この春に昇格試験をパスして天使から女神見習いになったばかりの新米だ。

「この記録結晶が撮影されたのが10日前。
 裁定書にサインを行える資格は審問部の者しか有しないので、どうしても転生処理には限界があります。
 今なお正常化の目途は立っていないそうです。」

審問部の惨状が記録された結晶を片付けながら、神々が続ける。

「とりあえず状況を整理しよう。
 まずはお前の実験を検証しようではないか。
 さて…どういう実験だったのだ?」

「はい。
 ある魂を聖女として、とある王国に転生させました。
 その聖女は王子と婚約しますが、浮気性の王子に婚約を破棄され、結果として隣国の王子と結ばれます。」

「…続けたまえ。」

「王子に婚約破棄され、聖女は王都を追放されます。
 そして国境で隣国の王子と出会うはずでした。
 ところがミスがあり、ではなくが現れたのです。」

「”おう”しか合っていないが…まぁいい、それで?」

「オーガに襲われ死を覚悟した聖女は神に、つまり、私に祈りました。
 その祈りは無視できません。
 なので、終焉の神龍をつかわせました。」


「何でだよ!」


会議室にいた全員が突っ込む。

「他にも神の御業みわざはいくらでもあるだろう!
 何で終焉の神龍なんか送り込むんだよ!」

「いやぁ、ラストで婚約破棄した王子に”ざまぁ”する予定だったので…
 さすがにプラズマブレスは凄いですね。
 王宮ごと一瞬で吹き飛びましたよ。」

「だろうな!」

「12時間も暴れさせたのは過剰でしたね。
 国が2つ滅びて、近隣諸国でも社会不安から政情不安や治安悪化が起きており…」

「分かってるんなら止めろよ!
 世界まるごと時間凍結させるまでに死亡転生してきた魂が60億だぞ!?」

ゲッソリした表情で神の1柱が書類を取り出す。

「その国で、魂が転生しての実験が別に行われていたようですね。
 遠方に魔王が生誕し、勇者が仲間と共に立ち向かうという内容だったそうです。
 ただ、旅立つ前に勇者も魔王も吹き飛びましたが。」

「…苦情が?」

「こちらが抗議文と、再実験の優先実施願いと、所要経費の請求書です。
 同様のものが別の研究室からも届いております。」

「対応にどれだけの労力がかかるのだ…
 もう至高神様に時間の巻き戻しをお願いした方が、いっそ早いかもしれん…」

その至高神様が戻るのは100日後の予定だ。
完全に破綻している審問部は育児休暇中の者まで呼び出しているらしい。
まぁ天界なので子供をあやす託児担当の天使には事欠かないが。


「主任教授様…
 つまり、私の実験も本件を原因として凍結、という理解でよろしいでしょうか?」


その言葉に、部屋の温度が下がったような気がした。
会議室の一角、その女神が立ち上がる。
もしオーラを視覚化できるのなら、魔族や獄卒すら腰を抜かすほど。

「新米女神さん。
 先日の発表会でAマイナスという高評価の実験を凍結させるのだもの。
 私には、その代償を受け取る権利があると思わない?」

ツカツカと歩み寄ると、懐から紙包みを取り出す。

「媚薬を改良したのだけれど、神クラスの臨床試験が出来ていないのよ。
 見習いとはいえ神格は天使より高いわよね。
 第9薬学部の皆様が、首を長ぁくして待ってるわよ。」

「待て待て待て!」

周囲の神々が立ち上がる。
第9薬学部といえば、学問のためなら良心も魂も悪魔に売ると言われる神々の吹き溜まりだ。
魔界との共同研究会で悪魔に『こんな魂、俺たちも買い取れねぇよ!?』と言わしめた逸話も、天界では有名だ。
この新米女神の口に媚薬を突っ込んで、悶える姿を見ながら調合の議論くらい平気でやる。
下心が一切無いので余計始末に悪い。

「とりあえず、ちょっと身を隠せ。
 至高神様や関係各所へは、私たちでお詫びしておくから。
 そうだ、転生など面白いかもしれん。
 な?」

主任教授の背後には笑顔の先輩女神。
悪名が天界どころか魔界や地獄にまで響き渡っている神々の相手など、絶対にしたくない。
新米女神もコクコクと頷き。

「この者が転生できる世界を探せ!
 第9薬学部の連中に見つかったら誘拐されかねんぞ!
 というか、そんな媚薬は自分たちで飲めよ!」

「いえ主任教授様。
 第9薬学部の神々は高齢ですので、媚薬ではなく劇薬になりかねません。」

「他の奴にも飲ませるなよ、そんなもの!」
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