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王都の日常
王都の画廊 3
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「デューイさん、いらっしゃるかしら。
あと、この店の責任者もお願いします。」
昨日来た客が、次の日にこんなことを言ってきた。
おそらくクレームだ。
デューイが何かやらかした、彼はそう思った。
「昨日ご案内させて頂いたお客様ですね。
恐れ入ります、こちらの応接室へどうぞ。」
少女と、同行の女性を案内する。
おそらく母親だろう。
「申し訳ございません。
店主と統括番頭は不在ですので、番頭が参ります。
あとデューイは所用にて外出中ですが、しばらくすると戻る予定です。」
彼が案内し、番頭が応接室へ駆けつけた。
番頭もデューイに対する苦情と思い内容を尋ねたが。
「ご本人のいない所で話すのも失礼でしょう。
もうそろそろ戻るのでしたら、お待ちします。」
少女が頑として聞き入れなければ、待つしかなかった。
幸いにもデューイはすぐに戻ったらしく、5分もしないうちに応接室へ駆けつけてきた。
「これは、お客様。
昨日はありがとうございました。」
「ごきげんよう、デューイ。
今日は少し、あなたに用があって来ました。」
どうやらクレームではないらしい。
誰しもが内心ホッとする。
「デューイ、あなたって奴隷階級ね。」
「はい、そうですが。」
「絵画の技能奴隷?」
「いえ、一般の労働奴隷です。
技能奴隷は、それこそ一級の作家に匹敵する腕の持ち主ですよ。」
「そう、良かった。
技能奴隷だったら、少々面倒なのよ。
組合に煩雑な書類を出さないといけないし、費用も格段に高くなるし…」
少女は番頭に顔を向け。
「すみませんが、デューイを売って頂けませんか。」
「はぁっ!?」
さすがの番頭も、素っ頓狂な声を上げる。
娼館でお気に入りの性奴を求めるのならともかく。
画廊で、倉庫番の労働奴隷を買い求めるなど聞いたことが無い。
「ちょ、ちょっと待ってください。」
デューイ本人も驚きの声を上げる。
「すみません、理由をお聞かせください。」
「昨日お話をして思ったのだけれど。
あなた、かなり絵画のセンスもいいし、勉強も努力もしている。
数字にも強い。
だから買うのだけれど。」
何か疑問でも、と言わんばかりに。
「いやいやいや…お客様、いくら労働奴隷だからと言って。
相場の値段を払えば、絵画みたいに買えるわけじゃないですよ!」
「でも、技能奴隷として組合の庇護を受けていないのでしょう。」
番頭に平然と答える少女。
金次第で自由に奴隷を買われては、その能力を必要とする者が困ってしまう。
嫌がらせでの妨害工作を含め、そういった無理を規制するための法律がある。
技能奴隷として登録する方法だ。
工芸や美術などの分野や、経理や税務といった分野、果ては一級の美貌を持つ娼婦など。
その所有者にとって失っては困る奴隷を、技能奴隷として組合に登録してしまう。
例えば、その登録時に「100万ゴールドの価値がある」と書けば、希望者はその額を積まないと交渉できないのだ。
一般に相場の4倍も積めば組合に売買調停を申し出られる奴隷制度の、例外を定める法律だ。
ただし乱用を防ぐため、煩雑な書類作成や年間登録料、最低賃金保障といった奴隷主の負担も大きい。
倉庫番のデューイに、店主がそんな負担をかけているわけがなかった。
(この小娘…からかいに来ているのか…?)
あまりにも理解しがたい言動に、番頭は一つの考えを思いつく。
「分かりました。
では、デューイをお売りしましょう。
30ゴールドです。」
店主に相談することは出来ないが、今この場での責任者は番頭である。
相場の10倍以上だが、この少女を追い払うには十分だろう。
「30ゴールドですか…
さすがに、そんな現金は用意していませんね…」
それはそうだろう。
奴隷にそんな額を出せるのなら、昨日あんなに高額な絵を渋らなかったはずだ。
彼はそう思った。
「ねぇ、小切手って持ってる?」
あと、この店の責任者もお願いします。」
昨日来た客が、次の日にこんなことを言ってきた。
おそらくクレームだ。
デューイが何かやらかした、彼はそう思った。
「昨日ご案内させて頂いたお客様ですね。
恐れ入ります、こちらの応接室へどうぞ。」
少女と、同行の女性を案内する。
おそらく母親だろう。
「申し訳ございません。
店主と統括番頭は不在ですので、番頭が参ります。
あとデューイは所用にて外出中ですが、しばらくすると戻る予定です。」
彼が案内し、番頭が応接室へ駆けつけた。
番頭もデューイに対する苦情と思い内容を尋ねたが。
「ご本人のいない所で話すのも失礼でしょう。
もうそろそろ戻るのでしたら、お待ちします。」
少女が頑として聞き入れなければ、待つしかなかった。
幸いにもデューイはすぐに戻ったらしく、5分もしないうちに応接室へ駆けつけてきた。
「これは、お客様。
昨日はありがとうございました。」
「ごきげんよう、デューイ。
今日は少し、あなたに用があって来ました。」
どうやらクレームではないらしい。
誰しもが内心ホッとする。
「デューイ、あなたって奴隷階級ね。」
「はい、そうですが。」
「絵画の技能奴隷?」
「いえ、一般の労働奴隷です。
技能奴隷は、それこそ一級の作家に匹敵する腕の持ち主ですよ。」
「そう、良かった。
技能奴隷だったら、少々面倒なのよ。
組合に煩雑な書類を出さないといけないし、費用も格段に高くなるし…」
少女は番頭に顔を向け。
「すみませんが、デューイを売って頂けませんか。」
「はぁっ!?」
さすがの番頭も、素っ頓狂な声を上げる。
娼館でお気に入りの性奴を求めるのならともかく。
画廊で、倉庫番の労働奴隷を買い求めるなど聞いたことが無い。
「ちょ、ちょっと待ってください。」
デューイ本人も驚きの声を上げる。
「すみません、理由をお聞かせください。」
「昨日お話をして思ったのだけれど。
あなた、かなり絵画のセンスもいいし、勉強も努力もしている。
数字にも強い。
だから買うのだけれど。」
何か疑問でも、と言わんばかりに。
「いやいやいや…お客様、いくら労働奴隷だからと言って。
相場の値段を払えば、絵画みたいに買えるわけじゃないですよ!」
「でも、技能奴隷として組合の庇護を受けていないのでしょう。」
番頭に平然と答える少女。
金次第で自由に奴隷を買われては、その能力を必要とする者が困ってしまう。
嫌がらせでの妨害工作を含め、そういった無理を規制するための法律がある。
技能奴隷として登録する方法だ。
工芸や美術などの分野や、経理や税務といった分野、果ては一級の美貌を持つ娼婦など。
その所有者にとって失っては困る奴隷を、技能奴隷として組合に登録してしまう。
例えば、その登録時に「100万ゴールドの価値がある」と書けば、希望者はその額を積まないと交渉できないのだ。
一般に相場の4倍も積めば組合に売買調停を申し出られる奴隷制度の、例外を定める法律だ。
ただし乱用を防ぐため、煩雑な書類作成や年間登録料、最低賃金保障といった奴隷主の負担も大きい。
倉庫番のデューイに、店主がそんな負担をかけているわけがなかった。
(この小娘…からかいに来ているのか…?)
あまりにも理解しがたい言動に、番頭は一つの考えを思いつく。
「分かりました。
では、デューイをお売りしましょう。
30ゴールドです。」
店主に相談することは出来ないが、今この場での責任者は番頭である。
相場の10倍以上だが、この少女を追い払うには十分だろう。
「30ゴールドですか…
さすがに、そんな現金は用意していませんね…」
それはそうだろう。
奴隷にそんな額を出せるのなら、昨日あんなに高額な絵を渋らなかったはずだ。
彼はそう思った。
「ねぇ、小切手って持ってる?」
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追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
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