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王都の日常
貧民街の絵描き 3
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「ごめんなさい、驚かせてしまって。
狭い場所で申し訳ないのだけれど、どうぞおかけください。」
娘を抱いたまま怯えて立ち尽くす私に、その少女は席を勧めてきた。
「外套を、お預かり致します。」
侍女が私たちに着せられた外套を受け取ると、別の侍女が椅子を引いた。
恐る恐る、私にしがみついた娘と共に座る。
「さて。
私はあなたのことを知っているけれど、あなたは私のことを知らない。
初めまして、マダム。
私の名前はアラスタ、男爵位を拝領しております。」
「あ…はぁ…」
混乱しっぱなしの思考が纏まらない。
アラスタなどという男爵に記憶は無い。
それに、男爵とは貴族の中でも最下のはずだ。
時々、功績のあった騎士や商人が男爵位を得ることもある。
だから、そんな男爵がこんな広大な屋敷を持てるはずがなかった。
豪華な鎧を着た兵士が貸し馬車で着たことも、本当におかしいことだらけだ。
「いい景色でしょ。」
男爵様は背後を振り返る。
一面ガラス張りになった壁からは、手前の池と、広大な庭が眺められた。
遠くでは放牧された馬が草を食んでいる。
「幼いころから、この風景が好きなの。
狭いけれど、晴れの日も雨の日も、よく来たわ。」
「あ、あの男爵様!」
私の声に男爵様が振り返る。
「何か粗相をしたのかもしれませんが!
どうか…どうか…
如何様にもお詫び申し上げますが、償いのしようは…」
男爵様は、私の背後の騎士に視線を送り。
「ねぇ、マダムに何か言った?」
「いえ何も。
そもそも我々がお嬢様から頂いた命令は”丁重にお連れせよ”のみです。
詳細を知らない我らが何を説明できましょうか。」
「そうよね。
あなたたちは推測で物事を言うような、そんな浅はかな真似をしないわよね。
ご苦労様、下がっていいわ。」
「はっ!
では入り口の外で待機しております、御用の際にはお申しつけください。」
騎士たちが恭しく礼をし、去っていく。
「紅茶でいいかしら。
田舎で採れる名産なのよ。」
砂糖も入れていないのに、甘い香りを立てる紅茶が出される。
「あ、あの…」
「一つ質問。
今日、何か急用はありましたか?
もし仕事などが入っていたのなら、責任をもって当家から先方へお詫びを行います。」
「い、いえ…買い物程度です…
それよりも!」
「ここに来てもらった理由、ですね。
…絵を。」
男爵様の言葉に、侍女の一人がテーブルに一枚の絵を置く。
「これは、あなたが描いた絵で間違いないですね。」
「は…はい…
少し前に、画廊に納めたものです…」
「あなたの絵は、私が全て頂きました。」
「それは…恐れ入ります…」
話が見えない。
そんな私の困惑を見透かしたかのように、男爵様は。
「あなたの絵が気に入りました。
単刀直入に言います。
私の領内に来てください。」
狭い場所で申し訳ないのだけれど、どうぞおかけください。」
娘を抱いたまま怯えて立ち尽くす私に、その少女は席を勧めてきた。
「外套を、お預かり致します。」
侍女が私たちに着せられた外套を受け取ると、別の侍女が椅子を引いた。
恐る恐る、私にしがみついた娘と共に座る。
「さて。
私はあなたのことを知っているけれど、あなたは私のことを知らない。
初めまして、マダム。
私の名前はアラスタ、男爵位を拝領しております。」
「あ…はぁ…」
混乱しっぱなしの思考が纏まらない。
アラスタなどという男爵に記憶は無い。
それに、男爵とは貴族の中でも最下のはずだ。
時々、功績のあった騎士や商人が男爵位を得ることもある。
だから、そんな男爵がこんな広大な屋敷を持てるはずがなかった。
豪華な鎧を着た兵士が貸し馬車で着たことも、本当におかしいことだらけだ。
「いい景色でしょ。」
男爵様は背後を振り返る。
一面ガラス張りになった壁からは、手前の池と、広大な庭が眺められた。
遠くでは放牧された馬が草を食んでいる。
「幼いころから、この風景が好きなの。
狭いけれど、晴れの日も雨の日も、よく来たわ。」
「あ、あの男爵様!」
私の声に男爵様が振り返る。
「何か粗相をしたのかもしれませんが!
どうか…どうか…
如何様にもお詫び申し上げますが、償いのしようは…」
男爵様は、私の背後の騎士に視線を送り。
「ねぇ、マダムに何か言った?」
「いえ何も。
そもそも我々がお嬢様から頂いた命令は”丁重にお連れせよ”のみです。
詳細を知らない我らが何を説明できましょうか。」
「そうよね。
あなたたちは推測で物事を言うような、そんな浅はかな真似をしないわよね。
ご苦労様、下がっていいわ。」
「はっ!
では入り口の外で待機しております、御用の際にはお申しつけください。」
騎士たちが恭しく礼をし、去っていく。
「紅茶でいいかしら。
田舎で採れる名産なのよ。」
砂糖も入れていないのに、甘い香りを立てる紅茶が出される。
「あ、あの…」
「一つ質問。
今日、何か急用はありましたか?
もし仕事などが入っていたのなら、責任をもって当家から先方へお詫びを行います。」
「い、いえ…買い物程度です…
それよりも!」
「ここに来てもらった理由、ですね。
…絵を。」
男爵様の言葉に、侍女の一人がテーブルに一枚の絵を置く。
「これは、あなたが描いた絵で間違いないですね。」
「は…はい…
少し前に、画廊に納めたものです…」
「あなたの絵は、私が全て頂きました。」
「それは…恐れ入ります…」
話が見えない。
そんな私の困惑を見透かしたかのように、男爵様は。
「あなたの絵が気に入りました。
単刀直入に言います。
私の領内に来てください。」
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追記2:ひとまず完結しました!
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