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王都の日常
貧民街の絵描き 4
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「ちょ、ちょっと待ってください。」
慌てる私の反応も、また想像済みというように。
「私は言ったはずですよね、マダム。
あなたのことを知っている、と。
もちろん、あなたの一部分に過ぎないと思うけれど。」
「そうではなく。
何で私たちが…」
「ベガドリアって聞いたことあります?
帝国との戦争続きで荒れ放題なのだけれど。
私の領地は、そこ。
この国の、北の果てよ。」
そう言いながら男爵様は紅茶をお勧めになる。
けれど、こんな高そうなカップに、高そうな茶葉。
とてもじゃないけど、飲めない。
もし粗相でもしたら、それこそお詫びのしようも無い。
「すみません。
そもそも、何で私たちはここへ呼ばれたのですか?
しかも、こんな立派なお屋敷があって、貸し馬車で…」
「家の馬車は、使えなかったのよ。
ただそれは貴族の問題であって、マダムとは関係のないことよ。
そして呼んだのは、私が話をしたかったから。
あなたの絵を見た私が、あなたの画風を気に入って、あなたに興味がわいたから。」
「あの…私たちは…」
「奴隷階級?」
もちろんご存じだろう。
購入時に、画廊の店員から説明があるはずだ。
ましてや住所まで調べたということは、奴隷の身分だということくらい…
「それは、私にとっては些末な問題でしかないの。
それを言い始めると、私の領館で働くほぼ全てが奴隷階級よ。
奴隷じゃないのは…私と家令、後は近隣の村々からの日雇いね。」
信じられない。
そんな貴族いるのだろうか。
でも、男爵様は平然と続ける。
「あなたは技能奴隷じゃないわよね。」
「は、はい…
雑用侍女として、掛け持ちいくつかのお屋敷で奉公しています。
絵は、以前に地方の画家にお仕えした時に、雑務の一環で覚えさせられました。」
「その画家、なかなかいい先生だったようね。
それともマダムのセンスが花開いただけかしら。」
「さぁ…その画家先生も既にお亡くなりですので…」
何かの詐欺なのだろうか。
けれど、仮に詐欺だとして、私たちから何を奪えるのだろう。
もし殺したり娘を誘拐するのなら、自宅ですればいいだけだ。
ただ少なくとも、何かのお咎めや殺されたり、ということは無いようだ。
「お金で私が買えば、あなたは私の領内に来るしかなくなる。
失礼な言い方だけど、あなたを買うことくらい造作もないわ。」
「それは、分かります…」
「けれど、私はそうしていない。
わざわざ時間を取って、あなたをここへお招きして、こうしてお話をしている。
なぜだと思います、マダム?」
分かるわけがない。
「すみません、分かりません…」
「自発的に、望んできてほしいからよ、マダム。」
慌てる私の反応も、また想像済みというように。
「私は言ったはずですよね、マダム。
あなたのことを知っている、と。
もちろん、あなたの一部分に過ぎないと思うけれど。」
「そうではなく。
何で私たちが…」
「ベガドリアって聞いたことあります?
帝国との戦争続きで荒れ放題なのだけれど。
私の領地は、そこ。
この国の、北の果てよ。」
そう言いながら男爵様は紅茶をお勧めになる。
けれど、こんな高そうなカップに、高そうな茶葉。
とてもじゃないけど、飲めない。
もし粗相でもしたら、それこそお詫びのしようも無い。
「すみません。
そもそも、何で私たちはここへ呼ばれたのですか?
しかも、こんな立派なお屋敷があって、貸し馬車で…」
「家の馬車は、使えなかったのよ。
ただそれは貴族の問題であって、マダムとは関係のないことよ。
そして呼んだのは、私が話をしたかったから。
あなたの絵を見た私が、あなたの画風を気に入って、あなたに興味がわいたから。」
「あの…私たちは…」
「奴隷階級?」
もちろんご存じだろう。
購入時に、画廊の店員から説明があるはずだ。
ましてや住所まで調べたということは、奴隷の身分だということくらい…
「それは、私にとっては些末な問題でしかないの。
それを言い始めると、私の領館で働くほぼ全てが奴隷階級よ。
奴隷じゃないのは…私と家令、後は近隣の村々からの日雇いね。」
信じられない。
そんな貴族いるのだろうか。
でも、男爵様は平然と続ける。
「あなたは技能奴隷じゃないわよね。」
「は、はい…
雑用侍女として、掛け持ちいくつかのお屋敷で奉公しています。
絵は、以前に地方の画家にお仕えした時に、雑務の一環で覚えさせられました。」
「その画家、なかなかいい先生だったようね。
それともマダムのセンスが花開いただけかしら。」
「さぁ…その画家先生も既にお亡くなりですので…」
何かの詐欺なのだろうか。
けれど、仮に詐欺だとして、私たちから何を奪えるのだろう。
もし殺したり娘を誘拐するのなら、自宅ですればいいだけだ。
ただ少なくとも、何かのお咎めや殺されたり、ということは無いようだ。
「お金で私が買えば、あなたは私の領内に来るしかなくなる。
失礼な言い方だけど、あなたを買うことくらい造作もないわ。」
「それは、分かります…」
「けれど、私はそうしていない。
わざわざ時間を取って、あなたをここへお招きして、こうしてお話をしている。
なぜだと思います、マダム?」
分かるわけがない。
「すみません、分かりません…」
「自発的に、望んできてほしいからよ、マダム。」
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