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幼馴染の恋
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そわそわ
そわそわ
もう、ずっとそわそわしてるんですけど。
俺の幼馴染の龍斗さん。
昨日はあの店がお休みで桜庭さんと会えなかったから、ずっとご機嫌斜めで。
今日は朝からずっとあの調子。
まったくわかりやすいというか、おめでたいというか・・・・。
ま、正直者ってことなんでしょうけど。
小さなころから近所で親同士も仲がよくて、明るい龍斗さんは人気者で。
ゲームばっかりやって引きこもりがちだった俺にもなぜか優しくて
1こ上の龍斗さんと遊ぶのは俺にとって唯一外に出る理由になっていた。
そんな龍斗さんは女子にも人気があって中学生のころから何人もの彼女と付き合っていたけど、あまり長続きはしなかった。
それはたぶん、彼の優し過ぎる性格が原因なんだと思う。
彼女がいても、他の女の子に頼られたら優しくしてしまう。
それで彼女を怒らせてしまって、振られて終わり。
そのたびに俺の部屋に来て泣いてた龍斗さんを慰めるのは俺の役目だった。
その龍斗さんが大学を出て、親父さんが細々とやっていた中華料理の店をたたみ、なんとペットショップを開くと言い出した時にはさすがの俺も驚いた。
だけど龍斗さんの決心は固く、小さなペットショップが無事オープンできた時には思わず俺も涙してしまったくらいだ。
そして。
ペットショップの経営がようやく軌道に乗り始めたところに、あのバーのオープンだ。
まさか、あの龍斗さんが男に恋をすることがあるなんて、さすがに予想できなかった。
だけどまあ、あの桜庭さんを見てると納得できなくもない。
きれいだし、かわいい、と思う。
なんだろうな、あんなに整った顔をしてるのに、それを思い切り崩して笑った顔とか、ちょっと怖がってる時の表情とか。
黙ってればきっと『すげえイケメンだな』くらいにしか思わなかったかもしれない。
だけど動いて、話してるのを見てしまうと、『可愛い』という形容詞がぴったり合うなんて。
「ねえはっしー、雅くんていつも何時くらいに来てたっけ?もう来るかな?」
「バーの開店が7時だから、6時くらいじゃないの?あと30分くらいあるんだからちょっと落ち着きなさいよ」
「わかってるけど~」
「まったく・・・・あ」
外に視線を向けると、そこには桜庭さんが。
そしてその横には、あのとき俺を『犬』と言った田村仁・・・・。
「・・・最悪」
「え、何言ってんの、はっしー!最高じゃん!雅くん、入って入って!―――てか、あれ、誰?」
桜庭さんを手招きしながら、龍斗さんが首を傾げた。
「おっそ・・・あれだよ、俺を犬って言ったやつ。田村仁とかいう、桜庭さんの幼馴染」
「へえ・・・・いらっしゃい!」
店内に入ってきた桜庭さんを満面の笑顔で迎える龍斗さん。
桜庭さんはちょっと恥ずかしそうにはにかむように微笑んだ。
その隣の田村は、物珍しげに店内を見回している。
「ほら仁見て、この子可愛いでしょ?」
桜庭さんが柴犬を指差すと、田村がケースの中を覗きこむ。
さりげなく、桜庭さんの腰に添えられる木村の手。
龍斗さんの顔が微かに曇る。
「・・・抱っこしてみます?」
龍斗さんの言葉に、田村がきょとんとして振り向く。
「え・・・俺?」
「はい、よかったら。その子、すごく人懐こいんで」
「え~、でも雅は嫌われてるって」
「俺、動物に懐かれないから。でも噛まれたりはしなかったよ?」
「んー、でも、やめとく。懐かれたら、飼いたくなっちゃう」
ふにゃっとした笑顔に、俺は意外な気がして驚いた。
ぼんやりしてそうなやつだとは思ったけど、笑顔は見たことが無かったから。
桜庭さんに向ける笑顔は、ずいぶん優しそうなんだな。
「あ、やっぱりマンションに住まわれてるんですか?」
「んにゃ、実家は普通の一軒家だけど、仕事でいないことが多いし、寂しい思いをさせんのはかわいそうだから」
「あー・・・そうですね」
龍斗さんの顔にも笑顔が浮かぶ。
飼いたくないわけじゃなくて、犬を思いやってのことだとわかり田村に好感を持ったみたいだ。
俺も・・・第一印象とはだいぶ違うような気がしてきた。
あ、そうだ。
「だったら、龍斗さんの家に遊びに行けばいいじゃないですか」
俺の言葉に、3人が驚いて俺を見る。
「え・・・・園原くんの家・・・?」
「ちょ、はっしー!?何言ってんだよ?」
「だって、あんたの家犬がいっぱいいるじゃない」
「え、いっぱいいるの?ほんと?園原くん」
桜庭さんの目が好奇心でキラキラと輝く。
そんな目で見られたら、ほら・・・龍斗さんが真っ赤になっちゃった。
「いっぱいっていうか・・・ほら、うちで売ってる犬たち、大きくなったら売れなくなっちゃうから・・・そうしたらうちで引き取ることにしてるんだ・・・」
「え・・・・それって、大変な数になっちゃうんじゃない?」
「いや、全部ってわけじゃなくて、大体はもともといたブリーダーさんのところに返すことになってて、ブリーダーさんの方で飼い主さんを探したりするんだけど、ときどき引き取りを拒否されるブリーダーさんがいてさ・・・」
「それで、仕方なく・・・?」
「うん。あ、でも俺は基本動物大好きだから、うちの子になったら思いっきり可愛がるけどね」
そう言ってちょっと照れくさそうに笑った龍斗さんを、桜庭さんがその大きな目を瞬かせて見つめた。
「園原くんて・・・・優しいんだ」
「え、いや、そんなこと・・・・」
照れる龍斗さんをキラキラした瞳で見つめる桜庭さん。
あれ?
なんかいい雰囲気かも・・・・
なんて思ってたら、田村が桜庭さんの腰をぐっと引き寄せた。
「雅、そろそろいこ」
「ん?うん。―――じゃ、また」
「あ、うん・・・・」
ちょっと寂しげな龍斗さんを残し、2人は店を出ようとして―――
寸前で、桜庭さんがこちらを振り返った。
「あの、よかったら・・・うちの店にも遊びに来て。何か、ご馳走するから」
そう言って桜庭さんはひらひらと手を振り、田村と一緒に出て行った。
「よかったじゃん。今日あたり、店閉めたら行ってみれば?」
俺が龍斗さんの背中を叩くと、龍斗さんが微妙な顔で俺を見た。
「うん。でも・・・・あの、田村さんもいるんでしょ?」
「まぁ、いるでしょうね。でも悪いやつじゃなさそうだし、場合によっちゃあ味方になるかもよ?」
「え~、そうかなあ。もうなんか、雅くんにずっとくっついてたよ?」
「まぁ、兄弟みたいな感じなんじゃない?あのお兄さんもすげえ弟可愛がってるって感じだし。でもだからこそ、味方にしたらすげえ心強いんじゃないの?」
「・・・じゃあ、はっしーも一緒に来てよ」
心細げに俺を見る龍斗さん。
まぁ、気持ちはわかるけど。
あのお兄さんも怖そうだしね。
「しょうがないなあ。協力してあげる代わりに、今度新しいゲーム買ってよ」
「う・・・・了解」
取引成立。
大丈夫。
約束したからにはちゃんと協力するし。
あのバーに行けるのも、ちょっと楽しみだしね。
そんなワクワク感と、不安も入り混じったドキドキ感を抱えながら。
俺たちは今日もペットショップで働いている。
そわそわ
もう、ずっとそわそわしてるんですけど。
俺の幼馴染の龍斗さん。
昨日はあの店がお休みで桜庭さんと会えなかったから、ずっとご機嫌斜めで。
今日は朝からずっとあの調子。
まったくわかりやすいというか、おめでたいというか・・・・。
ま、正直者ってことなんでしょうけど。
小さなころから近所で親同士も仲がよくて、明るい龍斗さんは人気者で。
ゲームばっかりやって引きこもりがちだった俺にもなぜか優しくて
1こ上の龍斗さんと遊ぶのは俺にとって唯一外に出る理由になっていた。
そんな龍斗さんは女子にも人気があって中学生のころから何人もの彼女と付き合っていたけど、あまり長続きはしなかった。
それはたぶん、彼の優し過ぎる性格が原因なんだと思う。
彼女がいても、他の女の子に頼られたら優しくしてしまう。
それで彼女を怒らせてしまって、振られて終わり。
そのたびに俺の部屋に来て泣いてた龍斗さんを慰めるのは俺の役目だった。
その龍斗さんが大学を出て、親父さんが細々とやっていた中華料理の店をたたみ、なんとペットショップを開くと言い出した時にはさすがの俺も驚いた。
だけど龍斗さんの決心は固く、小さなペットショップが無事オープンできた時には思わず俺も涙してしまったくらいだ。
そして。
ペットショップの経営がようやく軌道に乗り始めたところに、あのバーのオープンだ。
まさか、あの龍斗さんが男に恋をすることがあるなんて、さすがに予想できなかった。
だけどまあ、あの桜庭さんを見てると納得できなくもない。
きれいだし、かわいい、と思う。
なんだろうな、あんなに整った顔をしてるのに、それを思い切り崩して笑った顔とか、ちょっと怖がってる時の表情とか。
黙ってればきっと『すげえイケメンだな』くらいにしか思わなかったかもしれない。
だけど動いて、話してるのを見てしまうと、『可愛い』という形容詞がぴったり合うなんて。
「ねえはっしー、雅くんていつも何時くらいに来てたっけ?もう来るかな?」
「バーの開店が7時だから、6時くらいじゃないの?あと30分くらいあるんだからちょっと落ち着きなさいよ」
「わかってるけど~」
「まったく・・・・あ」
外に視線を向けると、そこには桜庭さんが。
そしてその横には、あのとき俺を『犬』と言った田村仁・・・・。
「・・・最悪」
「え、何言ってんの、はっしー!最高じゃん!雅くん、入って入って!―――てか、あれ、誰?」
桜庭さんを手招きしながら、龍斗さんが首を傾げた。
「おっそ・・・あれだよ、俺を犬って言ったやつ。田村仁とかいう、桜庭さんの幼馴染」
「へえ・・・・いらっしゃい!」
店内に入ってきた桜庭さんを満面の笑顔で迎える龍斗さん。
桜庭さんはちょっと恥ずかしそうにはにかむように微笑んだ。
その隣の田村は、物珍しげに店内を見回している。
「ほら仁見て、この子可愛いでしょ?」
桜庭さんが柴犬を指差すと、田村がケースの中を覗きこむ。
さりげなく、桜庭さんの腰に添えられる木村の手。
龍斗さんの顔が微かに曇る。
「・・・抱っこしてみます?」
龍斗さんの言葉に、田村がきょとんとして振り向く。
「え・・・俺?」
「はい、よかったら。その子、すごく人懐こいんで」
「え~、でも雅は嫌われてるって」
「俺、動物に懐かれないから。でも噛まれたりはしなかったよ?」
「んー、でも、やめとく。懐かれたら、飼いたくなっちゃう」
ふにゃっとした笑顔に、俺は意外な気がして驚いた。
ぼんやりしてそうなやつだとは思ったけど、笑顔は見たことが無かったから。
桜庭さんに向ける笑顔は、ずいぶん優しそうなんだな。
「あ、やっぱりマンションに住まわれてるんですか?」
「んにゃ、実家は普通の一軒家だけど、仕事でいないことが多いし、寂しい思いをさせんのはかわいそうだから」
「あー・・・そうですね」
龍斗さんの顔にも笑顔が浮かぶ。
飼いたくないわけじゃなくて、犬を思いやってのことだとわかり田村に好感を持ったみたいだ。
俺も・・・第一印象とはだいぶ違うような気がしてきた。
あ、そうだ。
「だったら、龍斗さんの家に遊びに行けばいいじゃないですか」
俺の言葉に、3人が驚いて俺を見る。
「え・・・・園原くんの家・・・?」
「ちょ、はっしー!?何言ってんだよ?」
「だって、あんたの家犬がいっぱいいるじゃない」
「え、いっぱいいるの?ほんと?園原くん」
桜庭さんの目が好奇心でキラキラと輝く。
そんな目で見られたら、ほら・・・龍斗さんが真っ赤になっちゃった。
「いっぱいっていうか・・・ほら、うちで売ってる犬たち、大きくなったら売れなくなっちゃうから・・・そうしたらうちで引き取ることにしてるんだ・・・」
「え・・・・それって、大変な数になっちゃうんじゃない?」
「いや、全部ってわけじゃなくて、大体はもともといたブリーダーさんのところに返すことになってて、ブリーダーさんの方で飼い主さんを探したりするんだけど、ときどき引き取りを拒否されるブリーダーさんがいてさ・・・」
「それで、仕方なく・・・?」
「うん。あ、でも俺は基本動物大好きだから、うちの子になったら思いっきり可愛がるけどね」
そう言ってちょっと照れくさそうに笑った龍斗さんを、桜庭さんがその大きな目を瞬かせて見つめた。
「園原くんて・・・・優しいんだ」
「え、いや、そんなこと・・・・」
照れる龍斗さんをキラキラした瞳で見つめる桜庭さん。
あれ?
なんかいい雰囲気かも・・・・
なんて思ってたら、田村が桜庭さんの腰をぐっと引き寄せた。
「雅、そろそろいこ」
「ん?うん。―――じゃ、また」
「あ、うん・・・・」
ちょっと寂しげな龍斗さんを残し、2人は店を出ようとして―――
寸前で、桜庭さんがこちらを振り返った。
「あの、よかったら・・・うちの店にも遊びに来て。何か、ご馳走するから」
そう言って桜庭さんはひらひらと手を振り、田村と一緒に出て行った。
「よかったじゃん。今日あたり、店閉めたら行ってみれば?」
俺が龍斗さんの背中を叩くと、龍斗さんが微妙な顔で俺を見た。
「うん。でも・・・・あの、田村さんもいるんでしょ?」
「まぁ、いるでしょうね。でも悪いやつじゃなさそうだし、場合によっちゃあ味方になるかもよ?」
「え~、そうかなあ。もうなんか、雅くんにずっとくっついてたよ?」
「まぁ、兄弟みたいな感じなんじゃない?あのお兄さんもすげえ弟可愛がってるって感じだし。でもだからこそ、味方にしたらすげえ心強いんじゃないの?」
「・・・じゃあ、はっしーも一緒に来てよ」
心細げに俺を見る龍斗さん。
まぁ、気持ちはわかるけど。
あのお兄さんも怖そうだしね。
「しょうがないなあ。協力してあげる代わりに、今度新しいゲーム買ってよ」
「う・・・・了解」
取引成立。
大丈夫。
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