CHU!

まつも☆きらら

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青天の霹靂

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「あ!園原くん!いらっしゃい!」

店を閉め、俺ははっしーと一緒に雅くんのお兄さんのバーへと足を踏み入れた。

カウンターにいた雅くんが、俺を見て嬉しそうに笑った。

「今晩は。さっそく来ちゃったけど・・・」
「んふふ、ありがとう。橋本くんも来てくれたんだ」
「すいません、ついてきちゃって」
「全然!来てくれて嬉しい。ね、2人ともなに飲む?飲めないものとかある?」
「あ、何でも大丈夫!」
「ほんと?じゃ、旭くん、2人に何か作ってあげて」

雅くんに言われ、隣にいた兄の旭さんがちらりと俺たちを見る。

その冷たい視線に、思わずどきりとする。

「・・・じゃ、ジントニックにでもする?雅、何か食うもん作ってあげれば。メシ、まだなんじゃないの」
「あ、うん。何が良い?」
「え・・・雅くんが作ってくれるの?」
「ん。たいしたものじゃないけど・・・」
「そんなこと!雅くんが作ってくれるなら何でもいいよ!」

思わず興奮気味に身を乗り出すように言ってしまってから、はっとする。

隣のはっしーが小声で『バカ』と言っているのが聞こえ、旭さんの眉が微かに顰められのが見えた。

「じゃあ、今作ってくるから、待ってて」
「う、うん」

雅くんがカウンターの奥へと姿を消してしまうと、旭さんと俺たちの間に微妙な空気が流れる。

「・・・・2人は、友達?」

旭さんが、出来たカクテルを俺たちの前に置きながら、静かに聞いた。

「幼馴染なんです。小学校のころから一緒で」

そう答えたのははっしーだ。

「へえ、それで今は一緒に仕事してるの?すげえ仲良いんだね」
「まあ、腐れ縁みたいなものですけどね」
「喧嘩とかしないの?」

旭さんの言葉に、俺たちは顔を見合わせた。

「そういえば、したことないね、喧嘩」
「確かに。ちょっとした言い合いくらいならあるけど、険悪になるほどの喧嘩ってしたことないですね」
「彼女は?2人ともいる?」
「俺は、いないです」
「俺もいませんよ。旭さんは、もてそうですよね」

はっしーの言葉に、旭さんは苦笑した。

「そんなこと、ないよ。それに今は忙しくて」
「旭くんは、面倒くさがってるだけでしょ?」

料理の乗った皿を手に、雅くんが奥から出て来て俺たちの前に立った。

「はい、どうぞ」

にっこりと微笑み目の前に料理を置いてくれる雅くん。

「うわ、おいしそう!これ何?」
「ペンネアラビアータにシーザーサラダに、ビシソワーズ」
「え?ビ・・・・って、なに?」
「ビシソワーズ。ジャガイモのポタージュのこと、そう言うんだ」
「へ~え・・・・あ、おいしい!」
「ほんと、おいしいよ」

俺とはっしーが感嘆の声を上げると、雅くんは恥ずかしそうにはにかんだ。

「よかった。2人の好み、わかんなかったから・・・それ、新しいメニューにしようと思って考えてたやつなんだ。さっき、仁にも食べてもらったんだけど、仁は俺が作った物全部おいしいって言うから」
「あー・・・そうなんだ?」
「うん、参考にならない。おいしいって言ってくれるのはすごくうれしいんだけどね」
「仁くんはお前が作ってくれるってだけで嬉しいんだよ。お前のこと、甘やかすのが好きな人だから」

苦笑する旭さんに、雅くんは納得いかないように頬をふくらます。

「だって、ちゃんと感想言ってって言ってるのに。旭くんも、おいしいしか言ってくれないし」
「おいしいんだから仕方ないだろ?この2人だって、おいしいしか言ってねえぞ」
「あ」

雅くんが今気付いたように俺たちを見る。

―――ゲッ、そこで俺たちに振る?

「いや、本当においしいよ?このシーザーサラダも、レストランで食べたのよりおいしいし!」
「・・・どこのレストラン?」
「えっと、ファミレス?」

雅くんの眉間にしわが寄る。

―――うわわ、どうしよう?

「ところで、その田村さんはどうしたんですか?もう帰っちゃったとか?」
「あ、ううん。なんか昨日、作品仕上げるのに徹夜したとかで・・・ここの2階、倉庫にしてるんだけどちょっとした休憩が取れるようにソファーが置いてあるの。そこで寝てるんだ」
「そうだ、雅、そろそろ起こさないと」
「あ、もうそんな時間?じゃ、起こしてくる」

そう言って、雅くんはカウンターから出て店の奥の階段の方へ向かって行った。

「・・・ちゃんと起きてくれるといいけど」

ぼそりと旭さんが呟く。

「え・・・田村さん、寝起き悪いんですか?」
「いや、そうじゃないけど・・・・雅が行くと、すぐ甘えるっていうか、わがまま言うっていうか・・・・」

そう言ってため息をつく旭さんに、俺たちは顔を見合わせる。

「それなら、旭さんが起こしに行けばいいんじゃないですか?」

はっしーが至極もっともなことを言う。

「俺だってそうしたいけど、仁くんが雅が起こしてくれないと起きないっていうから・・・・」
「うわ、わがまま」
「だろ?あの人、雅に懐かれてるからってそんなことばっかり言うんだよ!雅もすぐに甘やかすし!」

旭さん、不満爆発・・・?
なんか、ちょっとクールなイメージになりつつあった旭さんの印象がまた変わってきた。

「・・・で、雅くんが起こしに行くと、甘えるってどういうふうに?」
「ん?あぁ・・・・見に行ってみる?」

そう言って、旭さんは俺を見てにやりと笑った。

「え?」
「あの階段上がってすぐの部屋だから、行ってみなよ。面白いもんが見れるかもよ」
「面白いって・・・・はっしー、行く?」
「俺はいいです。龍斗さん、行ってくれば」
「えー・・・じゃあ、行ってみる」

なんだかよくわからないけど、そう言われたら見たくなる。

俺は席を立つと、雅くんが上がって行った階段へと向かった。



「仁、ほら、時間だから起きてよ」
「ん~~~・・・・」
「今日は、これから家に戻らなきゃいけないんでしょ?お母さんに呼ばれてるって言ってたじゃん」
「ん~~~・・・めんどくせ~~~」
「もう、仁ってば・・・あ、園原くん?」

部屋に入ると、たくさんの食器や食材の山の中におしゃれな紫のソファーが1つ。
そこに、田村さんが毛布をかけて寝ていた。

「あの、旭さんが・・・なんか、見て来いって」
「え、そうなの?ほら、仁!園原くんもいるんだよ。ちゃんと起きてよ」
「ん~~~?・・・・あ~・・・・犬の・・・・」
「仁、寝ぼけてないでちゃんと―――」
「雅~~~、抱っこして~~~」
「もう・・・・」

雅くんに甘えるように手を伸ばす田村さん。
雅くんは呆れながらも、田村さんの体を抱き抱えるようにして起きあがらせる。

「んふふ~、雅、かぁわいい」
「何言ってんの、しっかりしてよ。あ~あ、髪ぼさぼさ・・・・」
「別に、帰るだけだから髪なんてどうでもいいし・・・・み~やび~、一緒にかえろ~~~」
「俺、まだ仕事だよ」
「雅と一緒が良い~~~」
「はいはい、今度ね」
「み~~~~やび~~~~」

・・・・なんか、非常に居づらいんですけど。
田村さんはさっきから雅くんにべたべた触りまくってるし。
雅くんも抵抗ないみたいにずっと田村さんを抱き抱えてるし。

なんかさ。

なんか、やだな。

雅くんに触られるのが

すんごく嫌なんだけど。

早く、離れてくれないかな。

もやもや、イライラ、そんな気持ちで待っていたら。

「みやび~、ちゅーしよ」
「何言ってんだよ、仁。園原くんが見てんのに・・・・」
「・・・だから、したい」
「え?」

ふっと、田村さんが急に素面に戻ったみたいに、低い声を出した。

そして次の瞬間。

―――ちゅ

「―――っ!!」

田村さんが、雅くんの頭を抱えるように引き寄せ、キスをした。

―――え・・・・・?

まるで、頭を何かで思いきり叩かれたような感じだった。

目の前が歪んで見える。

俺は、声を出すのも、動くのも忘れてその場に突っ立っていた。

恥ずかしそうに頬を染める雅くんと、雅くんの腰に抱きつく田村さんを、バカみたいに口開けて見つめて・・・・。




そのあと、どうやって家に帰ったのか、俺は全く覚えていなかった・・・・・。
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