4 / 12
第4話
しおりを挟む
「・・・・あったまいてぇ・・・・」
俺はずきずきと痛む頭を抑え、起きあがった。
「・・・どこだ?ここ・・・・」
そこは、見たことのない部屋だった。
薄暗くて、部屋の様子はよくわからないけど・・・・
なんでこんなとこに?
そう思った時、どこからか話声が聞こえて来てぎょっとする。
「・・・・・か?」
「あ・・・・・・・よ、おれ・・・・」
2人の男の、話し声。
大樹くんと・・・・凜・・・・?
目が慣れてくると、そこはリビングのような部屋で、2人掛けのソファーとガラスのテーブルがあり、その隙間に挟まるようにしてひろくんがいびきをかいて寝ていた。
―――あぁ、そっか・・・・。
昨日4人でごはんを食べて、そのままお酒飲んで盛り上がって・・・・
べろべろになったひろくんと凜を俺と大樹くんがタクシーで送って来て、そのまま4人でこの家に上がったんだ。
すぐに帰ろうと思ったのに、凜が俺を離さなくて・・・・
「いやぁだ!俺もっと優斗と飲みたい!優斗、今日泊まってってよぉ」
「え・・・・・」
泊まってく?
泊まってくってここに・・・・?
思わずごくりと唾を飲み込んだ俺に、大樹くんがちらりと冷めた視線を投げたのだった・・・・。
結局俺と大樹くんはここに泊まることになり、さらにひろくんが持ってきたビールを飲み、そのまま気付いたら寝てしまっていた・・・・らしい。
微かに扉の開いた部屋から、2人の声が漏れ聞こえていた。
たしか、あそこは凜の部屋だと言っていた。
俺はそっと立ち上がると、その部屋の傍まで行った。
立ち聞きしようと思ったわけじゃない。
ただ、ちょっと2人の様子を見たかっただけ・・・・
扉の影からそっと中を覗くと、凜はベッドの上に、大樹くんは床の上に座って話していた。
「浩也と一緒に暮らすのは、大変じゃねえの?」
「そんなことないよ。浩也は結構気ぃ使ってくれるから、俺が遅くなる時はご飯作ってくれたり、逆に自分が遅くなる時はちゃんと電話くれるし、誘ってくれたりするし」
「へぇ・・・・あいつ、昔からお前には甘かったもんなぁ」
「そぉ?」
「うん。お前が不良に目ぇつけられた時もさ、いっつもお前の傍についてて、ボディーガードみたいだった」
「んふふ、昔から優しかったからね、浩也は」
「・・・・優斗に言ってたのは、ほんと?」
「ん?」
「浩也と、付き合ってないって・・・・」
気まずそうにそう言う大樹くんに、凜はぷっと吹き出した。
「あたりまえじゃん!なんで大樹くんまでそんなこと・・・・」
楽しそうに笑う凜は、無邪気な笑顔とは裏腹に、酔ってほてった頬と潤んだ瞳が色っぽくて・・・
「・・・・お前さ、もうちょっと自覚したほうがいいぞ」
「ん?何が?」
きょとんとする凜に、大樹くんは無言で腰を浮かせ、ベッドに近づき―――
「大樹くん」
俺の声に、大樹くんの体がびくっと震えた。
「あ・・・・優斗・・・・起きたんだ?」
「うん。・・・・あのさ、水、もらっていいかな」
俺の言葉に、凜がベッドから降りた。
「あ、いいよ。待って、冷蔵庫からミネラルウォーター出してくるから」
そう言って部屋を出る凜の後を俺はついて行こうとして―――
ちらりと、大樹くんを振り返った。
じっと凜の後ろ姿を見つめていた大樹くんが、俺の視線に気づき、ふっと視線を外した・・・・。
「はい、どうぞ」
ミネラルウォーターをペットボトルのまま渡してくれる凜からそれを受け取り、一気に半分ほど飲み干す。
「ふふ、喉乾いてたんだ」
「ん・・・・ちょっと飲み過ぎた。ごめん、泊まっちゃって」
「なんであやまんの?俺が帰らないでって言ったのに」
「ふは、覚えてるんだ」
俺が言うと、凜がちょっと口を尖らせ、その頬を染めた。
「優斗が・・・・困ったような顔してたから・・・なんか、ちょっと冷めたんだよ、一瞬」
「え、そうなの?」
「ん・・・・ごめんね、無理やり引きとめて」
恥ずかしそうに、目を伏せてそう言う姿が可愛くて、口元が緩む。
「・・・今日、すげえ楽しかった」
「ほんと?俺、酔っぱらって、うざくなかった?」
「全然。可愛かった」
「ええ?」
凜が大きな目を瞬かせる。
『お前さ、もうちょっと自覚したほうがいいぞ』
大樹くんの言葉の意味、俺ならわかるけど。
「・・・・でも嬉しい。優斗とこんなふうに仲良くなれて」
「え・・・」
「俺、ファンだったから、優斗の」
「え!?」
「んふふ、言っちゃった」
そう言って恥ずかしそうに手で口を覆う姿が、めちゃくちゃ可愛かった。
すげえ見惚れちゃうくらい可愛くって、なんだか急に恥ずかしくなってきた。
「それ、初めて聞いた」
「はじめて言ったもん。俺ね、あれ見てたの。優斗が変なオタクの大学生役やってたやつ」
「ああ・・・・あれ、俺のデビュー作だよ」
「そうなの?」
「うん。初めてもらった役が、あれ」
「そうなんだ。あれ、超面白くってさ、最初は名前も知らなかったけど、他のドラマに全然違う役で出てる優斗見て・・・・表情も話し方も全然違くって、すげぇな、この人って思ったんだ。それで名前調べて・・・それからずっとファン」
「マジか・・・・何で言ってくんなかったの?」
「だって、始めにそんなこと言ったら優斗辞めちゃうと思ったから」
そりゃあそうだ。
これから通う料理教室の先生が自分のファンだなんて知ったら、きっと通わなかった。
「今度のドラマ、もうすぐ撮影始まるんだよね?俺、絶対見るから」
「んふふ、凜が見てくれるんなら、俺本気でがんばる」
「ほんと?」
「うん、凜が見てくれるの、超嬉しい」
本当に嬉しくて素直にそう言うと、凜がちょっと恥ずかしそうに頬を染めた。
―――可愛い。
酔った勢いもあるかもしれない。
無意識に体が動いてた。
凜の頬に手を伸ばして。
そっとその赤い唇に、キスをしてたんだ・・・・・
俺はずきずきと痛む頭を抑え、起きあがった。
「・・・どこだ?ここ・・・・」
そこは、見たことのない部屋だった。
薄暗くて、部屋の様子はよくわからないけど・・・・
なんでこんなとこに?
そう思った時、どこからか話声が聞こえて来てぎょっとする。
「・・・・・か?」
「あ・・・・・・・よ、おれ・・・・」
2人の男の、話し声。
大樹くんと・・・・凜・・・・?
目が慣れてくると、そこはリビングのような部屋で、2人掛けのソファーとガラスのテーブルがあり、その隙間に挟まるようにしてひろくんがいびきをかいて寝ていた。
―――あぁ、そっか・・・・。
昨日4人でごはんを食べて、そのままお酒飲んで盛り上がって・・・・
べろべろになったひろくんと凜を俺と大樹くんがタクシーで送って来て、そのまま4人でこの家に上がったんだ。
すぐに帰ろうと思ったのに、凜が俺を離さなくて・・・・
「いやぁだ!俺もっと優斗と飲みたい!優斗、今日泊まってってよぉ」
「え・・・・・」
泊まってく?
泊まってくってここに・・・・?
思わずごくりと唾を飲み込んだ俺に、大樹くんがちらりと冷めた視線を投げたのだった・・・・。
結局俺と大樹くんはここに泊まることになり、さらにひろくんが持ってきたビールを飲み、そのまま気付いたら寝てしまっていた・・・・らしい。
微かに扉の開いた部屋から、2人の声が漏れ聞こえていた。
たしか、あそこは凜の部屋だと言っていた。
俺はそっと立ち上がると、その部屋の傍まで行った。
立ち聞きしようと思ったわけじゃない。
ただ、ちょっと2人の様子を見たかっただけ・・・・
扉の影からそっと中を覗くと、凜はベッドの上に、大樹くんは床の上に座って話していた。
「浩也と一緒に暮らすのは、大変じゃねえの?」
「そんなことないよ。浩也は結構気ぃ使ってくれるから、俺が遅くなる時はご飯作ってくれたり、逆に自分が遅くなる時はちゃんと電話くれるし、誘ってくれたりするし」
「へぇ・・・・あいつ、昔からお前には甘かったもんなぁ」
「そぉ?」
「うん。お前が不良に目ぇつけられた時もさ、いっつもお前の傍についてて、ボディーガードみたいだった」
「んふふ、昔から優しかったからね、浩也は」
「・・・・優斗に言ってたのは、ほんと?」
「ん?」
「浩也と、付き合ってないって・・・・」
気まずそうにそう言う大樹くんに、凜はぷっと吹き出した。
「あたりまえじゃん!なんで大樹くんまでそんなこと・・・・」
楽しそうに笑う凜は、無邪気な笑顔とは裏腹に、酔ってほてった頬と潤んだ瞳が色っぽくて・・・
「・・・・お前さ、もうちょっと自覚したほうがいいぞ」
「ん?何が?」
きょとんとする凜に、大樹くんは無言で腰を浮かせ、ベッドに近づき―――
「大樹くん」
俺の声に、大樹くんの体がびくっと震えた。
「あ・・・・優斗・・・・起きたんだ?」
「うん。・・・・あのさ、水、もらっていいかな」
俺の言葉に、凜がベッドから降りた。
「あ、いいよ。待って、冷蔵庫からミネラルウォーター出してくるから」
そう言って部屋を出る凜の後を俺はついて行こうとして―――
ちらりと、大樹くんを振り返った。
じっと凜の後ろ姿を見つめていた大樹くんが、俺の視線に気づき、ふっと視線を外した・・・・。
「はい、どうぞ」
ミネラルウォーターをペットボトルのまま渡してくれる凜からそれを受け取り、一気に半分ほど飲み干す。
「ふふ、喉乾いてたんだ」
「ん・・・・ちょっと飲み過ぎた。ごめん、泊まっちゃって」
「なんであやまんの?俺が帰らないでって言ったのに」
「ふは、覚えてるんだ」
俺が言うと、凜がちょっと口を尖らせ、その頬を染めた。
「優斗が・・・・困ったような顔してたから・・・なんか、ちょっと冷めたんだよ、一瞬」
「え、そうなの?」
「ん・・・・ごめんね、無理やり引きとめて」
恥ずかしそうに、目を伏せてそう言う姿が可愛くて、口元が緩む。
「・・・今日、すげえ楽しかった」
「ほんと?俺、酔っぱらって、うざくなかった?」
「全然。可愛かった」
「ええ?」
凜が大きな目を瞬かせる。
『お前さ、もうちょっと自覚したほうがいいぞ』
大樹くんの言葉の意味、俺ならわかるけど。
「・・・・でも嬉しい。優斗とこんなふうに仲良くなれて」
「え・・・」
「俺、ファンだったから、優斗の」
「え!?」
「んふふ、言っちゃった」
そう言って恥ずかしそうに手で口を覆う姿が、めちゃくちゃ可愛かった。
すげえ見惚れちゃうくらい可愛くって、なんだか急に恥ずかしくなってきた。
「それ、初めて聞いた」
「はじめて言ったもん。俺ね、あれ見てたの。優斗が変なオタクの大学生役やってたやつ」
「ああ・・・・あれ、俺のデビュー作だよ」
「そうなの?」
「うん。初めてもらった役が、あれ」
「そうなんだ。あれ、超面白くってさ、最初は名前も知らなかったけど、他のドラマに全然違う役で出てる優斗見て・・・・表情も話し方も全然違くって、すげぇな、この人って思ったんだ。それで名前調べて・・・それからずっとファン」
「マジか・・・・何で言ってくんなかったの?」
「だって、始めにそんなこと言ったら優斗辞めちゃうと思ったから」
そりゃあそうだ。
これから通う料理教室の先生が自分のファンだなんて知ったら、きっと通わなかった。
「今度のドラマ、もうすぐ撮影始まるんだよね?俺、絶対見るから」
「んふふ、凜が見てくれるんなら、俺本気でがんばる」
「ほんと?」
「うん、凜が見てくれるの、超嬉しい」
本当に嬉しくて素直にそう言うと、凜がちょっと恥ずかしそうに頬を染めた。
―――可愛い。
酔った勢いもあるかもしれない。
無意識に体が動いてた。
凜の頬に手を伸ばして。
そっとその赤い唇に、キスをしてたんだ・・・・・
0
あなたにおすすめの小説
あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
青龍将軍の新婚生活
蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。
武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。
そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。
「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」
幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。
中華風政略結婚ラブコメ。
※他のサイトにも投稿しています。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる