きみに××××したい

まつも☆きらら

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第4話

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「・・・・あったまいてぇ・・・・」

俺はずきずきと痛む頭を抑え、起きあがった。

「・・・どこだ?ここ・・・・」

そこは、見たことのない部屋だった。
薄暗くて、部屋の様子はよくわからないけど・・・・
なんでこんなとこに?
そう思った時、どこからか話声が聞こえて来てぎょっとする。

「・・・・・か?」
「あ・・・・・・・よ、おれ・・・・」

2人の男の、話し声。
大樹くんと・・・・凜・・・・?
目が慣れてくると、そこはリビングのような部屋で、2人掛けのソファーとガラスのテーブルがあり、その隙間に挟まるようにしてひろくんがいびきをかいて寝ていた。

―――あぁ、そっか・・・・。

昨日4人でごはんを食べて、そのままお酒飲んで盛り上がって・・・・
べろべろになったひろくんと凜を俺と大樹くんがタクシーで送って来て、そのまま4人でこの家に上がったんだ。
すぐに帰ろうと思ったのに、凜が俺を離さなくて・・・・

「いやぁだ!俺もっと優斗と飲みたい!優斗、今日泊まってってよぉ」
「え・・・・・」

泊まってく?
泊まってくってここに・・・・?
思わずごくりと唾を飲み込んだ俺に、大樹くんがちらりと冷めた視線を投げたのだった・・・・。

結局俺と大樹くんはここに泊まることになり、さらにひろくんが持ってきたビールを飲み、そのまま気付いたら寝てしまっていた・・・・らしい。

微かに扉の開いた部屋から、2人の声が漏れ聞こえていた。
たしか、あそこは凜の部屋だと言っていた。
俺はそっと立ち上がると、その部屋の傍まで行った。
立ち聞きしようと思ったわけじゃない。
ただ、ちょっと2人の様子を見たかっただけ・・・・

扉の影からそっと中を覗くと、凜はベッドの上に、大樹くんは床の上に座って話していた。

「浩也と一緒に暮らすのは、大変じゃねえの?」
「そんなことないよ。浩也は結構気ぃ使ってくれるから、俺が遅くなる時はご飯作ってくれたり、逆に自分が遅くなる時はちゃんと電話くれるし、誘ってくれたりするし」
「へぇ・・・・あいつ、昔からお前には甘かったもんなぁ」
「そぉ?」
「うん。お前が不良に目ぇつけられた時もさ、いっつもお前の傍についてて、ボディーガードみたいだった」
「んふふ、昔から優しかったからね、浩也は」
「・・・・優斗に言ってたのは、ほんと?」
「ん?」
「浩也と、付き合ってないって・・・・」

気まずそうにそう言う大樹くんに、凜はぷっと吹き出した。

「あたりまえじゃん!なんで大樹くんまでそんなこと・・・・」

楽しそうに笑う凜は、無邪気な笑顔とは裏腹に、酔ってほてった頬と潤んだ瞳が色っぽくて・・・

「・・・・お前さ、もうちょっと自覚したほうがいいぞ」
「ん?何が?」

きょとんとする凜に、大樹くんは無言で腰を浮かせ、ベッドに近づき―――

「大樹くん」

俺の声に、大樹くんの体がびくっと震えた。

「あ・・・・優斗・・・・起きたんだ?」
「うん。・・・・あのさ、水、もらっていいかな」

俺の言葉に、凜がベッドから降りた。

「あ、いいよ。待って、冷蔵庫からミネラルウォーター出してくるから」

そう言って部屋を出る凜の後を俺はついて行こうとして―――
ちらりと、大樹くんを振り返った。
じっと凜の後ろ姿を見つめていた大樹くんが、俺の視線に気づき、ふっと視線を外した・・・・。



「はい、どうぞ」

ミネラルウォーターをペットボトルのまま渡してくれる凜からそれを受け取り、一気に半分ほど飲み干す。

「ふふ、喉乾いてたんだ」
「ん・・・・ちょっと飲み過ぎた。ごめん、泊まっちゃって」
「なんであやまんの?俺が帰らないでって言ったのに」
「ふは、覚えてるんだ」

俺が言うと、凜がちょっと口を尖らせ、その頬を染めた。

「優斗が・・・・困ったような顔してたから・・・なんか、ちょっと冷めたんだよ、一瞬」
「え、そうなの?」
「ん・・・・ごめんね、無理やり引きとめて」

恥ずかしそうに、目を伏せてそう言う姿が可愛くて、口元が緩む。

「・・・今日、すげえ楽しかった」
「ほんと?俺、酔っぱらって、うざくなかった?」
「全然。可愛かった」
「ええ?」

凜が大きな目を瞬かせる。

『お前さ、もうちょっと自覚したほうがいいぞ』

大樹くんの言葉の意味、俺ならわかるけど。

「・・・・でも嬉しい。優斗とこんなふうに仲良くなれて」
「え・・・」
「俺、ファンだったから、優斗の」
「え!?」
「んふふ、言っちゃった」

そう言って恥ずかしそうに手で口を覆う姿が、めちゃくちゃ可愛かった。
すげえ見惚れちゃうくらい可愛くって、なんだか急に恥ずかしくなってきた。

「それ、初めて聞いた」
「はじめて言ったもん。俺ね、あれ見てたの。優斗が変なオタクの大学生役やってたやつ」
「ああ・・・・あれ、俺のデビュー作だよ」
「そうなの?」
「うん。初めてもらった役が、あれ」
「そうなんだ。あれ、超面白くってさ、最初は名前も知らなかったけど、他のドラマに全然違う役で出てる優斗見て・・・・表情も話し方も全然違くって、すげぇな、この人って思ったんだ。それで名前調べて・・・それからずっとファン」
「マジか・・・・何で言ってくんなかったの?」
「だって、始めにそんなこと言ったら優斗辞めちゃうと思ったから」

そりゃあそうだ。
これから通う料理教室の先生が自分のファンだなんて知ったら、きっと通わなかった。

「今度のドラマ、もうすぐ撮影始まるんだよね?俺、絶対見るから」
「んふふ、凜が見てくれるんなら、俺本気でがんばる」
「ほんと?」
「うん、凜が見てくれるの、超嬉しい」

本当に嬉しくて素直にそう言うと、凜がちょっと恥ずかしそうに頬を染めた。

―――可愛い。

酔った勢いもあるかもしれない。
無意識に体が動いてた。
凜の頬に手を伸ばして。

そっとその赤い唇に、キスをしてたんだ・・・・・
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