恋人が乗り移った君に恋をした

まつも☆きらら

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第8話

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「それ・・・・・どういう・・・・・」

俺は、咲也の顔を見た。

「あんたに、感謝はしてる。あんたを好きになったなっちゃんの気持ち、なんとなくわかる気もするし。でも、もうなっちゃんはいないし・・・・・俺は大丈夫だから、あんたはあんたの人生を生きればいいよ」

「でも、夏美は心配してたよ。咲也を1人で置いて行けないって」

「だから、俺だってもう20歳だしそんな子供じゃないよ。―――あんたがいると、俺はいつまでもなっちゃんを忘れられない」

咲也が、俺を見つめた。

その瞳は、切なげに揺れていて・・・・・

俺は、何も言えなかった。

「だから・・・・・もうこれで終わりに―――っ!?」

その時、突然咲也の体が大きく震えた。

「うっ」

自分の体を抱きしめるようにして、うずくまる咲也。

俺は慌てて咲也の肩をつかんだ。

「咲也くん!?どうした!?」


『・・・・・柊真』

ゆっくりと、顔を上げる咲也。

俺を見上げるその瞳は穏やかで・・・・・

「夏美・・・・・?」

俺の言葉に、にっこりと笑った。

『柊真・・・ありがとう。指輪、咲也に渡してくれて』

夏美は、テーブルの上に置いてあった指輪を手に取った。

『よかった。ちゃんと咲也に渡せて・・・・・』

「夏美・・・・・咲也くんは、もう俺に会いたくないみたいだけど・・・・・」

俺を見ていると夏美を忘れられない。

そう言った咲也の気持ちが、切ないほど俺に伝わってきた。

『うん・・・・でもね、やっぱり心配なの』

「何が心配なの?何か具体的に心配なことがあるの?」

『柊真・・・・咲也を見て、どう思う?』

「え・・・・・どうって・・・・・・?」

目の前にいる夏美―――咲也を、まじまじと見つめる。

彫刻のようにきれいな顔は、いやでも目を引く。

その容姿だけじゃなくて、咲也には人を惹きつける何かがあるような気がした。

気がつけば、視線が咲也に向いてしまう。

『―――昔から、咲也は人の注目を集める子だった。本人はすごくシャイで、人前に出るのを嫌がる子だったけど・・・・・学校の先生とか、近所の人、お店の人―――いろんなところで大人にかわいがってもらってて・・・・・それが贔屓されてるように見えて、同級生にいじめられることもあった。もちろん今はいじめられることはなくなったけど・・・・・特別扱いされることは、今でもよくあるの』

「なんとなく、わかる気はするけど・・・・・すごく目立つからね。でも、そんなことなら―――」

『さっき、あの叔父さんがどうして引き下がったか、わかる?』

「え・・・・・俺が、警察呼ぶって言ったから・・・・・?」

それでも、あの叔母は粘ろうとしていたけれど。

だが、夏美は首を横に振った。

『それだけじゃない・・・・・あの人は・・・・叔父さんは、咲也に負い目があるのよ』

「負い目・・・・?」

夏美は頷き、俯いた。

何か辛いことを思い出したように、下唇を噛んでいる。

「夏美・・・・・話したくないなら・・・・・」

無理に話さなくてもいい。

そう思って、俺は夏美の手を握った。

夏美の体がピクリと震え、涙を浮かべた瞳が俺を見上げる。

「夏美・・・・・」

その体を抱きしめると、夏美も俺の背中に腕をまわした。

『柊真・・・・お願い・・・・・咲也を、守って・・・・・。咲也は、自分のことをわかってないから・・・・・周りが、どんなふうに咲也を見てるか・・・・・』

「・・・・・わかった。守るから・・・・・」

『明日・・・・・咲也が行くって言ってた店って、たぶん以前アルバイトしていたカフェだと思うの』

「そうなんだ?」

『うん。店長さんも同じアルバイトの子もすごくいい人なの。ただ・・・・・』

「ただ・・・・・?」

『今もいるのかわからないけど・・・・・お客さんで、とても咲也を気に入っている人がいたの。その人はずっと、咲也にモデルをやらないかって誘ってて。咲也は断ってたんだけど、かなりしつこいって言ってた』

あの容姿だもんな。

わからなくもないけど・・・・・

『普通の人じゃ、ない気がするの。なんだか、心配で・・・・・』

「・・・・わかった。俺が行って、様子見てみるから」

『・・・・・ありがとう』

そう言って、俺を見上げてふわりと微笑み・・・・・・


次の瞬間。


夏美の顔つきが、がらりと変わる。

「!!!っうわあ!!!?」

咲也が真っ赤になって叫びながら、ソファーから落ちた・・・・・・。


―――またか。

―――夏美・・・・・頼むから、もう少し距離を取ってから咲也くんに変わってくれよ・・・・・。

俺は、乾いた笑いを浮かべ、大きな目をさらに見開いて固まる咲也を見つめたのだった・・・・・。

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