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第19話
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・・・・・着けられてる・・・・・?
駅を降りてから、ずっと気になっていた。
少し距離を置いて、同じテンポで聞こえてくる足音。
―――誰が・・・・・?
だけど、体がだるくて、追及する余裕もない。
俺は途中コンビニに立ち寄り、少し時間をつぶすことにした。
雑誌を立ち読むふりをして、ガラス越しに外の様子をうかがう。
―――怪しいやつはいないように見えた。
気のせいだったのかな・・・・・
体調が悪いから、そんな被害妄想をしてしまうのかもしれない。
俺はペットボトルの炭酸飲料を1本買うと、コンビニを出た。
今度はつけてくる足音は聞こえず、やっぱり気のせいだったんだと少し安心して、俺は家へとたどり着いた。
『ピンポ―――ン』
家について靴を脱ぐと、すぐにインターホンが鳴った。
え・・・・・やっぱり、誰かに着けられてた・・・・・?
俺は不安に襲われながらも、扉の覗き窓から外を覗いた。
そこにいたのは―――
俺は、戸惑いながらもチェーンを掛け、そっと扉を開けた。
「―――中崎さん、どうしてここに?」
そこに立っていたのは、カフェの常連、中崎だった。
「よぉ、電車の中で見かけたんだけど、隣の車両だったから声かけられなくてな。降りてからずっとついて来てたんだよ」
「なんで・・・・声かけなかったんですか?」
「かけようと思ったんだけどな、おまえちょっと具合悪そうだったし、立ち話なんかさせたら悪いかと思ってよ。どうせなら、家でゆっくり話を聞いてもらおうかと思ってなぁ」
「うちで・・・・・?」
「ああ。ちょっと上げてくれよ。なに、そんなに長くはかからねえよ。モデルの件だ。近く、オーディションがあるから、その話だよ。もちろん、受ける受けないはお前の自由だが、とりあえず話を聞くだけ聞いてもらえねえかと思ったんだよ」
にやにやと笑いながら、俺の体を上から下まで舐めるように眺める中崎。
その視線はただただ気持ち悪いだけだったけれど・・・・・
いい加減、この人にも諦めて欲しかった。
カフェに来るだけならいい客と言えなくもないから黙っていたけれど、家まで来るとなると―――
オーディションとやらの話を聞けば、とりあえず帰ってくれるだろう。
その時の俺は、この人がまともじゃないということを考える余裕もなかった。
モヤのかかっているような頭では、正確な判断もできなかったのだ。
「―――どうぞ」
チェーンを外し、扉を開けて中崎を家の中に入れた。
リビングのソファーに腰を下ろした中崎は、俺の入れたコーヒーをぐびぐびと飲み込んだ。
「で・・・・オーディションて?」
「ん?ああ、これなんだけどな・・・・・」
そう言って、中崎は着ていたジャケットのポケットから、がさがさと1枚のくしゃくしゃになった紙を取り出した。
「このオーディションに出てみねえか?」
俺は、中崎の手からその紙を受け取り、くしゃくしゃのそれを広げた。
「イケメンコンテスト・・・・・?え・・・・・でもこれ、もう締め切りが―――」
その時、突然俺はすごい力で床に押し倒された。
「な――――!?」
「ふ・・・・・お前は、本当にきれいだなあ」
中崎が、至近距離で俺の顔を見つめにやりと笑った。
ぞっとするような笑み。
「―――どけよ」
「それはできない。ようやく、お前を俺のモノにできる日がやってきたんだ。俺は―――この日を待ってたんだ」
中崎の黒く太い腕が、俺の肩を床に抑えつけた。
すごい力で、とてもじゃないが体力の落ちてる今の俺には、抗うことができない。
「この体を・・・・・俺のものにするんだ・・・・・」
「やめ・・・・・やめろ・・・・!」
時間を遡ること少し前。
俺は、咲也が店から出た30分後にカフェに着いた。
「いらっしゃ―――あ!」
幹雄くんが、俺を見て目を見開く。
「幹雄くん、咲也は―――」
「おっそいよ!もう帰っちゃったよ!」
幹雄くんが頬を膨らませる。
「え・・・帰った?こんなに早く・・・・?」
まだ7時前なのに。
「咲ちゃん、具合悪そうだから、帰らせたんだよ。真田さん、どうして最近来なくなったの?」
「え・・・・・」
「真田さん来なくなってからなんだよ。咲ちゃん、ずっと元気なくて・・・・顔色もどんどん悪くなるし、痩せてくし・・・・今日なんかもうふらっふらだったんだよ。なのに今日に限ってタクもいないしさ・・・・」
「え・・・・タクもいないの?」
「そうだよ。親せきの法事だとかで、閉店までには来るって言ってたんだけど・・・・・あんまり具合悪そうだったから、さっき帰しちゃったんだよ。だからさ、真田さんもし時間あるなら今から咲ちゃんの様子見に―――」
「わかった!ありがとう、幹雄くん!」
そう言うと、俺は店を飛び出したのだった・・・・・・。
―――具合悪そうって、ふらふらだって、なんだってそんな時に無理して働いたりするんだろう。
真面目で、周りの人にとても気を使う咲也。
タクや幹雄くんや圭くん、もちろん俺にも、夏美にも―――
そんな風に気を使って無理をして―――
自滅してたんじゃ意味ねえじゃん!
俺は、ひたすら咲也への家へと急いだ。
電車から降りて駅を出てからも、ほぼずっと走っていた。
その時の俺の頭には、咲也のことしかなかった。
熱を出しやすい咲也。
家で、倒れているかもしれない。
1人で、苦しんでいるかもしれない。
早く、咲也の元へ―――
駅を降りてから、ずっと気になっていた。
少し距離を置いて、同じテンポで聞こえてくる足音。
―――誰が・・・・・?
だけど、体がだるくて、追及する余裕もない。
俺は途中コンビニに立ち寄り、少し時間をつぶすことにした。
雑誌を立ち読むふりをして、ガラス越しに外の様子をうかがう。
―――怪しいやつはいないように見えた。
気のせいだったのかな・・・・・
体調が悪いから、そんな被害妄想をしてしまうのかもしれない。
俺はペットボトルの炭酸飲料を1本買うと、コンビニを出た。
今度はつけてくる足音は聞こえず、やっぱり気のせいだったんだと少し安心して、俺は家へとたどり着いた。
『ピンポ―――ン』
家について靴を脱ぐと、すぐにインターホンが鳴った。
え・・・・・やっぱり、誰かに着けられてた・・・・・?
俺は不安に襲われながらも、扉の覗き窓から外を覗いた。
そこにいたのは―――
俺は、戸惑いながらもチェーンを掛け、そっと扉を開けた。
「―――中崎さん、どうしてここに?」
そこに立っていたのは、カフェの常連、中崎だった。
「よぉ、電車の中で見かけたんだけど、隣の車両だったから声かけられなくてな。降りてからずっとついて来てたんだよ」
「なんで・・・・声かけなかったんですか?」
「かけようと思ったんだけどな、おまえちょっと具合悪そうだったし、立ち話なんかさせたら悪いかと思ってよ。どうせなら、家でゆっくり話を聞いてもらおうかと思ってなぁ」
「うちで・・・・・?」
「ああ。ちょっと上げてくれよ。なに、そんなに長くはかからねえよ。モデルの件だ。近く、オーディションがあるから、その話だよ。もちろん、受ける受けないはお前の自由だが、とりあえず話を聞くだけ聞いてもらえねえかと思ったんだよ」
にやにやと笑いながら、俺の体を上から下まで舐めるように眺める中崎。
その視線はただただ気持ち悪いだけだったけれど・・・・・
いい加減、この人にも諦めて欲しかった。
カフェに来るだけならいい客と言えなくもないから黙っていたけれど、家まで来るとなると―――
オーディションとやらの話を聞けば、とりあえず帰ってくれるだろう。
その時の俺は、この人がまともじゃないということを考える余裕もなかった。
モヤのかかっているような頭では、正確な判断もできなかったのだ。
「―――どうぞ」
チェーンを外し、扉を開けて中崎を家の中に入れた。
リビングのソファーに腰を下ろした中崎は、俺の入れたコーヒーをぐびぐびと飲み込んだ。
「で・・・・オーディションて?」
「ん?ああ、これなんだけどな・・・・・」
そう言って、中崎は着ていたジャケットのポケットから、がさがさと1枚のくしゃくしゃになった紙を取り出した。
「このオーディションに出てみねえか?」
俺は、中崎の手からその紙を受け取り、くしゃくしゃのそれを広げた。
「イケメンコンテスト・・・・・?え・・・・・でもこれ、もう締め切りが―――」
その時、突然俺はすごい力で床に押し倒された。
「な――――!?」
「ふ・・・・・お前は、本当にきれいだなあ」
中崎が、至近距離で俺の顔を見つめにやりと笑った。
ぞっとするような笑み。
「―――どけよ」
「それはできない。ようやく、お前を俺のモノにできる日がやってきたんだ。俺は―――この日を待ってたんだ」
中崎の黒く太い腕が、俺の肩を床に抑えつけた。
すごい力で、とてもじゃないが体力の落ちてる今の俺には、抗うことができない。
「この体を・・・・・俺のものにするんだ・・・・・」
「やめ・・・・・やめろ・・・・!」
時間を遡ること少し前。
俺は、咲也が店から出た30分後にカフェに着いた。
「いらっしゃ―――あ!」
幹雄くんが、俺を見て目を見開く。
「幹雄くん、咲也は―――」
「おっそいよ!もう帰っちゃったよ!」
幹雄くんが頬を膨らませる。
「え・・・帰った?こんなに早く・・・・?」
まだ7時前なのに。
「咲ちゃん、具合悪そうだから、帰らせたんだよ。真田さん、どうして最近来なくなったの?」
「え・・・・・」
「真田さん来なくなってからなんだよ。咲ちゃん、ずっと元気なくて・・・・顔色もどんどん悪くなるし、痩せてくし・・・・今日なんかもうふらっふらだったんだよ。なのに今日に限ってタクもいないしさ・・・・」
「え・・・・タクもいないの?」
「そうだよ。親せきの法事だとかで、閉店までには来るって言ってたんだけど・・・・・あんまり具合悪そうだったから、さっき帰しちゃったんだよ。だからさ、真田さんもし時間あるなら今から咲ちゃんの様子見に―――」
「わかった!ありがとう、幹雄くん!」
そう言うと、俺は店を飛び出したのだった・・・・・・。
―――具合悪そうって、ふらふらだって、なんだってそんな時に無理して働いたりするんだろう。
真面目で、周りの人にとても気を使う咲也。
タクや幹雄くんや圭くん、もちろん俺にも、夏美にも―――
そんな風に気を使って無理をして―――
自滅してたんじゃ意味ねえじゃん!
俺は、ひたすら咲也への家へと急いだ。
電車から降りて駅を出てからも、ほぼずっと走っていた。
その時の俺の頭には、咲也のことしかなかった。
熱を出しやすい咲也。
家で、倒れているかもしれない。
1人で、苦しんでいるかもしれない。
早く、咲也の元へ―――
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