恋人が乗り移った君に恋をした

まつも☆きらら

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第30話

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「俺のことを絶対に嫌いにならないって・・・・どうして言えるの?俺、さっくんにひどいことしたんだよ?」

そう言ってなっちゃんを見ると、なっちゃんは微笑みながら俺を優しく見つめた。

『だって、咲也にとってタクはとっても大事な存在だもの。タクがずっと咲也の傍で咲也を守ってくれたことも、ちゃんと咲也はわかってるわ。タクが咲也を大切に思ってくれるのと同じように、咲也にとってもタクは大切なのよ』

「―――同じじゃないよ。さっくんが好きなのは真田さんなんだから。さっくんにとって、俺は友達以上にはならないんだよ」

『・・・・・友達と、恋人ってそんなに違うもの?』

「え?」

なっちゃんの言葉に、俺は顔を上げた。

『あのね・・・・咲也がスペインに留学することが決まった時、あの子、最初嫌がったのよ。なんでだと思う?』

「え・・・嫌がった?なんで?」

海外に行きたいってずっと言ってたから、てっきり最初からノリノリだったと思ってたけど・・・・・。

『タクと、離れたくなかったからよ』

「―――ええ!?うそ!!」

そんなバカな!

『ほんとよ。あの子、ずっとタクのこと心配してたもの。タクは、俺がいないとずっと家でゲームばっかりやってるから、俺が外に連れ出してやらなきゃって』

「え?そんな理由?」

『うふふ、そうよ。自分が傍にいなかったら、一歩も外に出なくなっちゃうんじゃないかって、本気で心配して―――だから、留学したくないって最初は嫌がってたの』

「・・・・知らなかった・・・・」

確かに、さっくんは留学してからも2日に一度は必ず電話かメールをくれていた。

―――タク、何してるの?

―――今日は外に出た?

―――たまには新しい服でも買いに行ったら?

他愛のない会話でも、さっくんの声を聞けるのが嬉しくて―――

だから、さっくんの留学中、寂しくても我慢できた。

そんな風に、さっくんが心配してくれてたなんて・・・・・。

『―――さっきもね、わたし、咲也を助けようと思ってすぐに咲也と代わろうと思ったの。でも、咲也はそれを拒否してた』

「拒否?」

『そうよ。わたしを守ろうっていう気持ちもあったんだろうけど―――咲也は、タクを傷つけたくなかったのよ』

「俺を・・・・・?」

『・・・タクの気持ちに気付いてあげられなかったことに、咲也はショックを受けてた。ずっとそばにいたのに、どうして気付かなかったんだろうって・・・・・。タクを傷つけてしまったことで、自分を責めてた。だから、自分でどうにかしたかったのよ。自分で、タクを説得したかった。だけど、それが無理なら―――咲也は、タクのモノになろうって、思ってた』

「え・・・・・・?」

―――俺の・・・・モノに・・・・・?

『自分が柊真を好きになったことでタクを傷つけて―――それでタクを失うくらいなら、柊真を諦めてもいいって、そう思ったのよ』

「まさか・・・・」

俺の言葉に、なっちゃんは首を振った。

『本当よ。わたしには、咲也の考えてることがわかる。小さいころからずっと一緒だったタクは、咲也にとってかけがえのない存在なの。本当に、失いたくない存在なのよ。それが、恋愛感情じゃなくても・・・・大切な存在には変わりないわ。だから、あなたのためなら・・・・柊真のことを諦めようって、思ってるのよ』

俺の目から、涙が零れ落ちた。

「俺・・・・さっくんのことを、傷つけようとしたのに・・・・・」

そんな俺の髪を優しく撫で、なっちゃんが微笑んだ。

『咲也は、ちゃんとわかってるわ。タクにはそんなひどいことできないって。もしひどいことをしたとしても―――それは、自分のせいだって』

「違う!さっくんのせいじゃない!さっくんは、悪くないんだ・・・・!」

『タク・・・・いつも咲也を守ってくれてありがとう・・・・。あなたが傍にいてくれるから、わたしはいつも安心して咲也を送り出すことができたの』

なっちゃんの声が、俺のささくれ立っていた心を優しくなだめていくみたいだった。

『ずっと、咲也を見守って欲しい。あなたがいてくれたら、わたしも安心していくことができるわ』

「なっちゃん・・・・俺・・・・」

『お願いがあるの。咲也は今、わたしがいるせいでとても体が弱ってるの。少しでも無理をすれば、またすぐに熱を出して倒れてしまうくらい・・・・。柊真も個展の準備で忙しいみたいだし、やっぱり咲也にはあなたが必要だと思う』

「俺・・・・そばにいていいの?」

さっくんの傍に―――

『もちろん。でも、タクが辛いなら無理にとは言わない。だけど、もし傍にいてくれるなら・・・・咲也のことを、お願いね』

「・・・・・わかった」

『あなたと話ができて良かった・・・・・』

そう言って微笑むと、なっちゃんはゆっくり目を閉じた―――



しばらくすると、その目がまたゆっくりと開く。

「あ・・・・タク・・・・?」

「さっくん・・・・?」

「俺、今・・・・・」

「・・・・・なっちゃんと、話したよ」

俺の言葉に、さっくんは目を大きく見開いた。

「なっちゃんと?話したの?タク」

「うん。びっくりした。なんかすげー普通にしゃべってて」

そう言って笑うと、さっくんが目を瞬かせた。

「って・・・・・タク、怖くないの?そういう・・・・幽霊とか」

「普通の幽霊なら怖いけどさ、なっちゃんだし、しかも姿はさっくんだし。不思議な感じはしたけど怖くはなかったよ」

「そ・・・・か」

ほっと息をつくさっくん。

俺は、さっくんの手をそっと握った。

さっくんの手がピクリと震え、俺を見つめた。

「さっくん・・・・ごめんね」

その言葉に、首を振るさっくん。

「俺の方が、ごめん。タクの気持ちに、全然気付かなくて―――」

「いいんだ。それは、俺が気付かれないようにしてたんだし・・・・。なのに、真田さんに嫉妬して、さっくんを傷つけようとして―――ホントごめん」

さっくんは下唇をきゅっと噛みしめ、首を横に振った。

「俺ね・・・・さっくんの恋人にはなれないけど、一番の親友だっていう自信はあるんだ。でしょ?」

さっくんが、こくこくと頷く。

涙を堪えながら、潤んだ瞳で俺を見上げている姿が可愛かった。

「だからね、俺、ずっとさっくんの傍にいるよ。それで、ずっとさっくんを見守る。俺は、真田さんの知らないさっくんをたくさん知ってるから、真田さんとは違う方法でさっくんを守ることができると思うんだ」

「タク・・・・」

「だからさっくん、泣きたい時には俺を呼んで。どこにいたって、何してたって絶対に駆けつけるから」

「ん・・・・タク、大好き・・・・だよ」

そう言ったかと思うと、さっくんの体が揺れ、俺の肩に額を押しつけるような格好で寄りかかってきた。

「さっくん、熱が―――」

「だいじょぶ・・・・ちょっと休めば、すぐ下がるから・・・・」

そう言って俺に体を預けたまま、寝息を立て始めたさっくん。

―――安心したのかな・・・・?

『タク、大好き』

その言葉だけで、充分だった。

俺はさっくんの額にそっとキスをすると、その肩を抱いて後ろのソファーに寄りかかった。

―――ずっと親友。

恋人にはなれないけど・・・・・

でも俺は、真田さんよりも、他の誰よりもさっくんの傍にいられると思う。

だから、辛くても俺はさっくんの傍にいるよ。

ずっとずっと、見守っていくから―――

俺は強くさっくんを抱きしめて・・・・

いつしか、一緒に眠りに落ちていた・・・・・
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